地域循環共生圏概論⑮

2020年10月23日 | 防災と琵琶湖


作成日:2020.10.23|更新日:
地域循環共生圏概論⑮:事業継続計画(BCP)編



理想的なリサイクルシステムとは
企業のビジネスが、この世界の現状の環境を少しで
もましなものにしてくれるなら、これほどいいこと
はない。現代社会では、個人が出費しなければ環境
に配慮することができないからだ----と、田中優子
法政大学総長・江戸文化研究者は考える(江戸時代
の知恵を活かす、環境小噺--江戸と現代、理想的な
リサイクルシステムとは、環境ビジネス 2020年 秋
季号)。こんなことを書くのは自治会事業にはから
ずも関係したことによる。さて、噺をつづけよう。

⧉ たとえばごみの廃棄にはゴミ袋の購入というか
たちでお金を払う。むろん税金も収集や焼却に使っ
ているだろう。粗大ゴミにもお金を払う。だから不
法投棄する者も出てくる。これが出費するのではな
く、お金を稼げるとしたらどうだろうか? 江戸時代
では、不要になったものが商品となった。その代表
が灰と下肥つまり排泄物である。「花咲爺」という話
がある。灰をまくと花が咲く話で、まるで魔法のよ
うに解釈される。しかし「花咲爺」はおとぎ話ではな
い。木っ端や紙、布など、長屋のかまどで燃やし燃
料として使った後に、灰が残る。その灰を集めてお
く。そこに「灰買い」がやってきて、買い取ってくれ
るのだ。買ったあとは、そのアルカリ分を洗剤とし
て使ったり、染め物に利用したり、肥料として使用
する。植物が育つ上で重要な役割をする灰をまいて
花を咲かせるのは、したがって魔法ではない。



☈もうひとつの下肥は、人間や動物の排泄物のこと
だ。排泄物という言葉はなく「下肥」と呼んだ。「
肥料」の「肥」である。現在では排泄物は「汚水」
として処理される。下水処理施設で有機物がタンク
に貯められ、微生物がそれを餌にして二酸化炭素を
放出する。きれいになった水は海に流される。下水
処理施設は電力を使う。世界の電力消費料の3%が
下水処理に使われているという。さらに微生物が排
泄物を分解する過程で、二酸化炭素を放出する。そ
の炭素排出量も1,6%を占めるらしい。最近は、二
酸化炭素を食べてエタノールに変換する微生物が発
見され、期待がもたれている。実際、様々な環境改
善のためのアイデアは出てくるのだが、すべてに共
通、結局、電力を使う、ということである。微生物
だけに働かせることはできず、働いてもらうために
は巨大な施設を稼働させねばならないのである。こ
れは個々人や個々の家庭で処理し利用するのではな
く、多くの人口の分を集めて処理するからだ。さま
ざまな領域でみられる江戸時代から近現代への大き
な変化として、個々人あるいは個々の家から、巨大
組織・企業への変化がある。社会の仕組みに注目し
たとき、前近代から近代への変化は「集団から個へ」
ではなく、「個から集団へ」なのである。集団化、
巨大化したことで便利になったこともあるが、うま
くいかなくなったこともたくさんある。環境の悪化
はそのうまくいかなくなった方になるだろう。つま
り、自然条件の下での「還元過程」(プロセス)速
度は大変遅いため、電気や生物触媒を消費するとい
うことに他ならない。

◩ 江戸時代の下肥利用方法は、もちろん電力を使わ
ない、
まず都市部で集められた下肥は農村部に運ば
れる。収集と運搬は下肥問屋が担う。問屋は舟や船
頭や人足を雇い、それぞれのテリトリーから下肥を
集めるのだが、集める際にはその排泄場所(つまり
トイレ)の所有者にお金を支払って買い集めるのだ。
長屋では大家に支払われる。集めた排泄物は貯めて
分解処理し、肥料として使えるようにしてから農民
たちに売却する。集めるときにも売る時にもお金が
動く。これは経済活動なのである。農民たちは買っ
た下肥を畑の養分として使う。古代の日本では肥料
と言えば草だった。他の場所で草を集め、耕作する
土地に踏み込んだのだ。次の段階は、草や木を燃や
して灰にし、蒔く方法だった。その後、自分たちの家
の排泄物を肥料にする時代があったわけだが。江戸
時代はそれが産業化した。桶や樽が発明され、遠く
まで運ぶことができるようになったからだ。江戸の
ような大消費都市ができると、下肥を集めるのは容
易になった。同時に、海で大量に獲れる干鰯やニシ
ンなどの魚も、海運と河川の発達によって内陸まで
運ばれるようになり、やはり発酵処理されて肥料と
して使われるようになった。大蔵常永の『農稼肥培
論』(1832?)という肥料の農書には、小便、人糞、
水肥、緑肥、草肥、泥肥、すす肥、塵芥肥、油粕(
あぶらかす)、干鰯、魚肥、きゅう肥、馬糞、ぬか
肥、毛・爪・皮の肥、しょう油肥、干しにしん、ま
す粕、まぐろ粕、豆腐粕、塩かま、酒粕、焼酎粕、
あめ粕、鳥糞、貝類の肥などが肥料として紹介され、
使い方も書かれている。つまりは、この世のありと
あらゆ
るものが肥料になるのだ。廃棄物、という概
念はほ
とんど成り立たないことがわかる



☈しかしながら、しかし、灰や排泄物を肥料に使う
方法は、もう現代では不可能だ。なぜなら私たちの
排泄物には大量の化学物質が混合しており、私たち
がゴミとして出すものを燃やしたとしても、やはり
そこにはプラスチックや化学物質が複雑に入り込ん
でいる。もはや土に戻すのは危険なのである。この
ような「リサイクルの不可能性」を考えるだけで、
現代消費社会の問題が浮かび上がってくる。食べる
ときも排泄してからも安全な食品は作れるはずだが、
大量生産、大量販売でコストを下げ、利益を大きく
することを目標にするから、結局循環できなくなる。
これが、「個から集団へ」と変わった社会の問題な
のである。解決のひとつの方法は、巨大化した産業
を小規模多様性に戻ことだろう。とむすぶ。
📚 江戸の思想3(大蔵永常)


🏭 彦根市のごみの現状と方針
ここで、彦根市のごみ処理の現状と市政方針を確認
してみよう。直近3年間の平均は、3万6千トン/年
で、性状分析調査数値は、このうち、❶燃やせるごみ:
77%、❷燃やせるごみのうち生ごみ;48%、❸
また、生ごみに占める水分:89%である。市は、ごみ
減量化には、生ごみの資源化が有効な対策となると認
識し、生ごみを資源化することで、消費される燃料エ
ネルギーの削減する共に、施設の延命化を図ると考
えている。☈さらに、簡易生ごみ処理普及啓発団体
(6団体)による課題として、①高齢化が顕著、②
後継者不足、③子育て世代の参加がない、④生ごみ
堆肥化に必要な発酵促進剤(通称「ボカシ」)を造る場
所の不足注1)⑤畑を持たない住民がごみ減量化の意
識や興味を示す住民が参加し難いこと等が挙げられ
ている。現状では、❶生ごみの分別のみ参加できる
方、❷生ごみを分別して地域の場所に出すことが出
来る方、❸分別した生ごみを指定場所に持参でき
る方、❹ボカシ作りに参加できる方等住民によって
生ごみ資源化への取組み内容が異なることから、い
くつもの参加ステージの整備を痛感。(市会議員小
川たかし だより 第4号)

注1)現在、ボカシづくりは月1回実施されている。




 スウェーデンの「リサイクル革命」
同国では、家庭ゴミのうち処理場に埋められるゴミ
は、もはや1
%にも満たない。「廃棄物ゼロ」とい
う理想にさらに近づきつつあるだ。平均的なスウェ
ーデン人は、毎年461kgのゴミを出す。これは、ヨー
ロッパの平均値である525kgよりもやや少ない程度だ
が、スウェーデンと他国との違いは別のところにあ
る。同国では年間200万トン以上のゴミを焼却する過
程で、ゴミの半分をエネルギーに変えている。

2012年からは、国内にある32カ所の廃棄物発電所(
WTE:Waste-To-Energy)に「燃料」を供給の、イギ
リス、イタリア、ノルウェー、アイルランドのゴミ
を受け入れているほど。トラックで焼却場へ運ばれ
る前に、ゴミはまず、それぞれの家庭や事業主によ
って分別される。生ゴミなどの有機廃棄物を分け、
ゴミ箱から紙を拾い出し、回収して再利用できそう
なものは、すべて取り除けておく。また、スウェー
デンの法律により、製品の製造者は、自社製品の回
収とリサイクルまたは廃棄に関わる費用をすべて負
担する責任を負っている。たとえば、飲料会社が販
売店を通じてビン入りの炭酸飲料を売った場合、飲
料会社は、ビンの回収費用だけでなく、関連するリ
サイクルや廃棄のコストも支払わなければならない。
スウェーデンのリサイクル会社、リターパック(Re-
turpack)社のデータによると、スウェーデン人は全
体で1年間に15億個のビンや缶を返却している。再
使用またはリサイクルができないものは、通常はWT
Eの焼却場へ送られる。相手国からは処理料が支払わ
れるため、廃棄物は商品だ。単なる廃棄物ではなく、
ビジネスである、



従来のゴミ捨て場について、「廃棄物を処理場に
埋められたゴミが、メタンガスやその他の温室効果
ガスが漏れ出すとすれば、もちろんそれは環境に良
くない。「ゴミの選別と削減」のあと「再利用」「
素材のリサイクル」「エネルギーの再利用」「埋め
立て」となっている。FlickrWTEでは、炉にゴミを投
入して燃やし、その熱で発生させた水蒸気で発電機
のタービンを回して発電する。そうして作られた電
気は、送電線路を経て、送電網から国中に供給され
る。燃焼による熱も、スウェーデンの厳しい冬に各
家庭を温める、充実した地域暖房ネットワークに利
用されている。スウェーデン南部の都市ヘルシンボ
リ(人口13万2989人)では、新たに建設されたファ
ボーナのWTEだけで、同市の熱需要の40%
を満たす
ことができる。スウェーデン全体で見ると、WTEは約
95万世帯に熱を、26万世帯に電力を供給してい
る(2012年のスウェーデン世帯数はおよそ418万 )。
スウェーデンのエステルイェータランド県が制作し
たこの動画は、リサイクルプログラムをわかりやす
く説明している。覚えておくべき数字がある。3ト
ンの廃棄物は、1トンの燃料油に相当するエネルギ
ーを発生するという数字。

廃棄物には、まだ多くのエネルギーが残っている、
同国の大手エネルギー企業、Oresundskraft社の担当
者の話しだが、スウェーデンが年間200万トンの廃棄
物を焼却しているとすれば、それによって約67万ト
ンの燃料油に相当するエネルギーが生み出されてい
ることになる。逆に言うと、前述の地域暖房ネット
ワークをWTEなしで稼働させるには、それだけの燃料
油を購入する必要があるという。 ファボーナのWTE
プラントで、包装されて焼却を待つゴミ。だが、同
国のシステムに批判的な人々もいる。汚染源や毒性
物質を大気中に放出するという理由で、ゴミの焼却
は環境に良くないと主張。ただし、スウェーデンで
は、有害物質排出量の少ない制御された焼却法が採
用されており、野外での焼却とは根本的に異なる(
学術誌「Environmental Science and Technology」
の調査によると、世界ではゴミの40%以上が焼却さ
れているが、その大部分は焼却炉を用いずに野外で
燃やされているという)。



スウェーデン環境保護局によれば、技術的進歩と
排煙浄化装置の導入により、いまや大気中に放出さ
れるダイオキシンの量は「ごく微量」だという。た
だし、新たに焼却炉を建設するのに要する費用は、
まだかなり高価であり、財政の豊かではない地方自
治体には手が届かないかもしれない(これらの価格
は、環境汚染物質のダイオキシンを含む灰と排煙の
浄化技術によっても異なってくる)。環境汚染の懸
念以外にも、焼却による廃棄物処理は、再利用やリ
サイクルの促進を妨げるという問題点が指摘されて
いる。また、タイルや断熱材、アスベスト、その他
の建築資材や解体廃材、あるいはそれらを含むゴミ
は安全に焼却することができず、処理場に埋めるし
かない。しかし、グリプウェル氏はカナダ版ハフポ
ストに対し、スウェーデンの廃棄物処理システムは、
数十年前から始まり、いまや社会にしっかりと根付
いていると説明する。スウェーデンは1970年代から、
廃棄物の取り扱いについて、かなり厳しい規則を導
入。それは一般家庭はもちろん、地方自治体や企業
にもより大きな責任を課すもの。なお、東京都環境
局の調査によれば、都内の再生可能エネルギーのう
ち約半分が廃棄物発電によって作られている。東京
23区の清掃工場20か所すべてに発電設備があり、年
間に約10億kWhを発電している。これは東京電力が
関東全域で販売する電力量の3.5%に相当する規模
で、東京都は売電によって年間に60億円を稼いでい
る。文末スライドショーでは、「ジェット機の翼な
どを再利用した家」や「巨大水タンクを利用したタ
ウンハウス」「海の要塞を利用したリゾート施設」
など、「リサイクル素材による建物」が紹介されて
いる。(スウェーデンでゴミの99%を有効利用する
「リサイクル革命」が起きている(動画 )、 ハフ
ポスト)

⬔ 地球へのやさしさを行動で示せる 5つのアク
ション
REFUSE(ことわる / 拒否する) そもそもいらな
いモノ、大切と思えそうにないモノは、断りましょ
う。 ゴミになってしまうモノを、生み出さないよう
にするのです。
REDUCE(へらす / 削減する) 使い捨てのモノを
使うのは、やめましょう。 モノを買うときには、
出るゴミが少なくなるモノを選びましょう。 どうし
ても出てしまうゴミを、なるべく減らすのです。
REUSE(まだつかう / 再使用する) 一度使い終わ
ってもまだ使えるモノは、くりかえし使いましょう。
カンタンにゴミにしないようにするのです。
REPAIR(なおす / 修理する) 壊れてしまったモ
ノは、修理して使いましょう。 ゴミになってしまう
までの時間を、なるべく長くするのです。
RECYCLE(またつかう / 再利用する) 役目を終え
たモノ、いらなくなったモノは資源として回収して
もらいましょう。 姿かたちを変えて、再び使えるよ
うにするのです。 
以上のことを踏まえ、「誰もが住みたくなる街づく
り」及び「地域循環共生圏」創成事業構想を考えて
いこう。
                この項つづく
 


【エピソード】
国勢調査やコロナ対策設備・備品・消耗品ストック
や、地域都市計画に関する要望懸案事項の進捗の確
認の上、このごみ集積(分別)問題残件の整理/整頓
がおわってやれやりと休息をとり目を覚ますと午前
3時、それから時間つぶしにホームページの更新に
入り驚く。原発推進派の巻き返し起きていた(下関
連情報参照)。休む暇を与えてくれない状況にある
ことを自覚し、言葉を失なう。

  1. 2020年10月24日:宮城知事、女川原発再
    稼働に同意へ 県議会が請願採択
  2. 2020年10月24日:東京、7週連続で「再
    拡大に警戒」
  3. 2020年10月24日:新型コロナウイルスの
    空気伝播に対するマスクの防御効果
  4. 2020年10月24日:水からのトリチウム除
    去が可能に?
  5. 2020年10月23日:自動運転車に"直感"を
    教えることは可能なのか 
  6. 2020年10月23日:定置用蓄電池世界市場、
    26年に19年比8.5倍成長
  7. 2020年10月23日:ソーラーパネルの表面
    模様追加で光の吸収効率2倍超
  8. 2020年10月23日:標準規格へ向けた 9
    ,000 時間超運用追跡 ペロブスカイト太
    陽電池
  9. 2020年10月23日:原子力発電の将来検討
    分科会提言
  10. 2020年10月23日:日本学術会議が北大の
    "学問の自由"を侵害
  11. 2020年10月23日:2兆円あったら高校の
    授業料を 5 年以上無償にできた理由
  12. 2020年10月23日:多核種除去設備など処
    理水の取扱に関する説明・公聴会につい
  13. 2020年10月23日:東電が汚染水を海に流
    してはいけない4つの理由
  14. 2020年10月23日:ALPS処理汚染水、大気・
    海洋放出で本当にいいの?
  15. 2020年10月23日:海洋放出を政府が決定
    へ 福島第一原発の汚染処理水
  16. 2020年10月23日:福島汚染水放流にどう
    してこれほど過敏に反応するか(2)
  17. 2020年10月23日:福島汚染水放流にどう
    してこれほど過敏に反応するか(1)
  18. 2020年10月23日:処理水ポータルサイト、
    東京電力
  19. 2020年10月23日:多核種除去設備等処理
    水の二次処理性能確認試験結果(速報)
  20. 2020年10月23日:女川原発2号機 再稼
    働に向け次のプロセスは市町村長会議追
    加の対策工事は2022年度まで

【脚注及びリンク】
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  1. ESG地域金融』で地域を元気にする 環境ビジ
    ネス
  2. スウェーデンでゴミの99%を有効利用する「
    リサイクル革命」が起きている(動画) ハ
    フポスト
  3. 『環境ビジネス 2020年夏季号』
  4. 滋賀県に根づく『三方よし』の経営を実現,
    環境ビジネス,2020年冬季
    号   
  5. 環境への取り組み CSR(企業の社会的責任)
    佐川急便株式会社
  6. 彦根市一般廃棄物処理基本計画の進捗状況評
    価について(平成30年度) ,
  7. 滋賀県出身の人物一覧Wikipedia

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