滋賀の山々 Ⅰ

2016年02月28日 | 滋賀連坐環

 

作成日:2016.02.29|更新日:2016.03.05

【金勝山】

南部にそびえる金勝山(金勝寺を中心として阿星山・竜
王山・鶏冠山の三座を総称し呼称する)などをはじめと
した湖南アルプス。その中でも竜王山には平安時代の仏
教文化の一翼を担っていた金勝寺(こんしょうじ)や平
安時代に作られたといわれる狛坂磨崖仏(こまさかまが
いぶつ)などがあり、これらの史跡をたどるハイキング
コースが整備されていて。ハイキングコースには、耳岩
や天狗岩など自然にできた珍しい形の岩があり、そこか
らみる眺望は壮大。



金勝山ハイキングコースには、「竜王山(りゅうおうさん
)」「鶏冠山(けいかんざん)」といった干支にちなんだ名
前の山があり、酉年には「酉→鶏」ということで、記念
登山者もある。冬場はコースに積雪や凍結あり、ハイキ
ングは細心要注意。 

 竜王山(りゅうおうさん)

 

● 阿星山(あぼしやま)

長寿寺に近い登山口から約2時間で、標高693
ートルの阿星山の頂上へとたどり着きます。丸太の
階段や標識などがよく整備されたコースで、途中に
は小さいながらも神秘的な雰囲気の「紫雲の滝」も
あり、変化に富んだ景色を楽しみながら快適なトレ
ッキングが楽しめる。
頂上からの景色は琵琶湖や近
江富士を一望する、まさに湖南の特等席。展望広場
やあずまやも設置され、1年を通じ
たくさんの人々
が訪れる。

 

● 鶏冠山(けいかいざん)

 

鶏冠山・竜王山は草津川の上流にあり、風化した花岡岩が
点在し、その景観は見物。この縦走路を金勝アルプスと呼
ばれる。登山道沿の磨崖仏やオランダ堰堤がある。


【エピソード】

 

  

 

 

【脚注及びリンク】
-----------------------:------------------------
   

  1. 金勝山ハイキングコース 公益社団法人びわこビジ
    ターズビューロー
  2. 金勝山ハイキングコース情報 栗東市
  3. 天狗山|白州正子の愛した近江
  4. 竜王山604m(金勝アルプス) 滋賀県 あの山この山
  5. ヤマレコ狗近江湖南アルプス( 落ヶ滝~天狗岩~竜
    王山
  6. 金勝寺/滋賀 │ 仏像ワンダーランド仏像|
  7. 山岳ファイル No.5 竜王山|滋賀県
  8. 道の駅「こんぜ里りっとう」
  9. 「阿星山-観音寺ルート」山聲
  10. 滋賀の山ガイド:トレッキングの魅力と安全「滋賀
    の山を歩こう
     2015.10.09
  11. オランダ堰堤 土木学会

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城郭都市設計史29

2016年02月27日 | 湖と城郭都市

 

 

先回までドイツの都市計画を建築家・水島信の体験を通
してその特徴・差異・課題(問題点)を足早に俯瞰する。
今回はこれまでの都市計画に関する理論と実践過程を高
見沢 実 編『都市計画の理論 系譜と課題』を元に俯瞰し
未来への視座をスケッチする。その後、「まちづくりは
ひとづくり」をめざし 市民主導のまち創る-近世城下
町 彦根市本町地区の2例の場合」と「近世の彦根」の
考察に移る。

【都市計画理論の現況 Ⅱ】

● 声無き民の理論

対話型都市計画理論では対等な形で稗雁財係者が討議す
ることを理念としてもっている。しかし実際には多くの
「声無き民」が存在する。さまざまな技術的方法によっ
てそうした声を吸い上げることも参考になる。しかし、
前項で示したような本質的課題は、住民の意向把握や広
報をきめ細かく行うアウトリーチのような技術的・手法
的な方法だけでは解けないことは明らかである。

ところで、声無き民には便宜的に分けると2種類あると
考えられる。1つは政治的アパシーと呼ばれる「無気力・
無関心」の問題であり、もう1つはさきのパワーの議論
にみられる「無力・社会的排除(sodal exdusion)」の問
題である。ここではより本質的と考えられる後者に議論
を絞って考える。

先のヒリアーの解決策は、こうした無力層を組織化して
力とすることと、政治的鼓動に正当性を与えることであ
る。前者についてはネットワーキングによって力をつけ
るべく支援すること(ソーシャル・キャピタルの確立)
が重要な方策とし、後者では公共の場においで討議に加
わるだけでなく、デキbロッパーと直接交渉することで
利害を調整するような技術を磨くことなどがあげられて
いるに。

● 市場の論理と対話型都市計画理論

市場の利点は、さまざまな利害を市場という場を通しで
効率的に調整できることに。逆に、対話型都市計画理論
の最大の欠点は議論が煮詰まるまで時間がかかることが
大いに予想される点である。これに対しても「都市計画
決定する前に十分討議をしておけば、決定行為やその後
の事業化でコト
が円滑に運ばれ、結果として時間は短縮
される」という主張があるが、
これはいまだ証明された
わけではなく、むしろどちらが良いかという問題でも

いように思われる。

都市計画にプロセスの中である部分は対話を重視し、あ
部分では市場メカニズムを活用し、ある部分ではパワ
ーを行使できるよ
うにしておけばよいではないかと。
えば、先回のヴーグドにおいては、市民が受け身的な状

超で政府が調整的な場蒔は市場による解決が向いている
とされている。市場といつても都市計画の場面ではさま
ざまな意味をもつと考えられる。
少なくとも、①財産
への制限の緩和あるいは撤廃、②制限にかわるインセン

ティブ、③市場機能を活用した仕組みの構築といった直接
的な方法がある一方、
交渉プロセスを円滑にするゲー
ム理論を基にした仕組みなど広い意味の市場
の活用で
ある。

対話型都市計画にかかわるとすれば、これらのうちどこ
までを討議可
能な範囲と考え、どこまでを所与の条件と
し、どの部分を無関係とするかで
議論は分かれる。

とりあえず、①~④はそれぞれ、あるところまでは討議
の範囲と考えてよいだろう。例えば地区レベルで考えれ
ば地区整備構想やその実現方策を定めるうえでこれらの
条件を変えることは可能である。国の政策や制度づくり
にもあてはまる。しかしこのように議論を発散させても
何ら生産的ではない。

むしろそのように対話型都市計画理論の守備範囲を広げ
るのではなく、別途市場の活用に関する理論は精緻に議
論していき、対話の中で使えるツールは使うと割り切っ
た方がよさそうであると以上のように著者は述べる。



● 目標の欠如 

70年代に近代批判の形で都市計画の目標像自体が疑わ
れ批判されて以
降、手続き的な(procedura)議論ばかり
がなされて実体的な(substantive )目
標像についての議
論があまりなされなくなってしまった。人によって好み
違うのだから都市計画家が絶対的な目標を決めるのは
おかしいし困難である
といった「正論」に押されて、都
市計画の専門家が本来果たすべき役割を放
棄してしまっ
たかのようである。

近年流行している対話型都市計画理論によっても、対話
すれば目標は定ま
るのだから「[標に関する規範的な理
論は必要ない、と片づけられてしま
うこの頃であるが、
本当にそれでよいのだろうか? 

もう一度さきの批判をみてみよう。「人によって好みは
違うのだから都市
計画家が絶対的な目標を決めるのはお
かしい」についていえば「人によって
好みは違う」の部
分を以下のように3つのレベルに分けて考えてみるとよ
(ヒリアー2002)。第一は、最も深い部分にあるその
人にとっての規範や存在
にもとづくもの、第二は、その
人が選択する際の基本的考えや方針、第三
は、その人が
さまざまな理由によって妥協しうるニ義的な側面。これ
らの
うち、第三の側面については議論によって受け入れ
られる余地があると考え
られ、第二の部分についてもそ
うした規範や方針に則っていればその都市計
画は支持さ
れる可能性が高い。しかし第一の部分はいかなる都市計
画も尊重
することを原則とすべきだろう

今度は逆に、都市計画の規範の側からとらえてみる。地
球環境の保護やバリアリーフ、都市再生(活性化)などヽ
今日の規裾と考えられる目標は多岐にわたるが、実際の
都市とするためにはそれを具体化し、矛盾を調整しこれ
らが個々人の規範や好みによって判断・選択できる程度
にどれだけ説得力があり説明できちえうかである。特に
さきの第三の二義的な部分だけででなく、第二の部分と
どう矛盾なく提示できるかである。また、提示するのみ
ならずそれを十tけんする場面でさらに第一の部分をい
かに尊重しながら実現できるかによっていると述べる。

● 対話型都市計画理論を超えて

対話型都市計画は、理念として間違っているわけではな
い。前項で考察しような問題
点を踏まえつつ、21世紀
の都市計画ビジョンを描くとしたら何が重要なのか
につ
いて最後に整理する。「新たな公共の創造」「新たな技
術の開発」「新たな
職能の形成」が論点である。

・新たな公共の創造

最初の項で述べたように、理論とは、より相対的で、批
判的に埋め込まれた文脈を扱うものといえる。そうして
相対化された理論を多くの代理人が唱道しているのが現
実の世界である。理論の純度が高いものもあれば(例え
ば経済学者)、さまざまな理論等を混ぜ合わせたものも
多い(例えば都市工学か したがって、理論がどう働く
かだけでなく、なぜ特定の理論が使われるのか、誰が何
のためにそうするのかこそ見つめなければならない。都
市計画とはある意味、そのような雑多な理論の中から、
討議(政治プロセス)を経て取捨選択していくものなの
なのだから。



Center for Theory of Change

だとすると、ステークホルダーそれぞれが自らの存立基
盤をもち、情報や知識や知恵をもって対等な立場で討論
できるための前提条件がしっかりしていることが必要で
知識や知恵をもって対等な立場で討議できるための前提
条件がしっかりしていることが必要である。アドボカシ
ー理論(Theory of advocacy)は住民側に極めで不利な状
況下における過渡的な
理論であり、今日その有効性は失
われていないとしても
より大きなシステムの中のどこが
欠けているかを今日問
わなければならないし、情報の非
対称性をどのように解消すべきか、最終的な計画の良否
を決め
るシステムのどこをどう変えればよいか、いわゆ
る弱者が力をもつためには
どのような方法が有効か等が
具体的検討テーマである。

そうした目でみると、日本ではこれまで官(行政)=公

共でありバランスが悪かった。一方の民も「地主」であ
れ「デ
ィベロッパー」であれ「住民」であれ、自己の利
益しか追求しない傾向にあり、公共性に欠けるきらいが
あったと言わざるを得ないし、今こそ「第三の」セクタ
ーの強化がなされる必要がある。理論的にはアンソニー・
ギデンズのライフボリティクス理論をはじめとするボス
トモダン、ネオ・ブラグマティズムの都市計画理論が重
要である。また、表面的な市民参加の場のみを理論化す
るだけでなく、実態として行われていろ直接行動などを
も含めた理論とすることが求められている。




● 新たな技術の開発

わが国において対話型都市計画理論が理念としてはよさ
そうだが実がつい
てきていないのは、制度を含めた技術
レベルがあまり洗練されておらず、白
か黒かといった二
者択一的な選択肢しか用意されていない場合や理論的に
は確かでもそれが気づかれずにいる場かなどの問題かお
ることも原因と考え
られる。対話型であることはこのよ
うな価値多元社会では必然であると考え
ると、それをよ
り有効に機能させるために新たなより高度で柔軟な技術
を創
造しなければならない。

ここでは経済、政治、社会、人間、環境といったさ
まざ
まな要素を広範に扱いながらバランス良く、常に持続的
な解を得続けら
れるような形でそれを実現することが必
要である。またここで技術といった
場合、単なるツール
やマニュアルだけでなく、有効な結果を導き出すための
理論づけられたものである必要がある。ワークショッブ
はいかなる範囲で、どのような技術的裏づけにより有効
なのか計画を固めていく際、どのような手段で人々のど
のような価値や規範に働きかけどのような形で潮時とす
べきなのか、など残された課題は多い。



● 新たな職能の形成

プランナーという職能があるとすれば、それはこれまで
あげ
てきた新たな公共の場の形成に貢献し、そのような
場を力を
発揮できる存在でなければならない。また、制
度的にもエン
ジニア的にも新たな技術に裏づけられた仕
事ができ、またそ
うした枠組みを創造できる人材である
必要がある。これまで
制度の確立に応じて「土地区画整
理士」や「○○コーディネー
タ一」のような資格が確立
されまた、「技術士」としてのブ
うン」ナーが確立してき
たとはいえ、こうした新たな都市計画
像に向けた明確な
職能の分化が起こっているわけではない。

21世紀は知識社会だといわれる。都市計画という分野
真に社会から信信頼され貢献するためには、それを支
える人
材づくりがなによりも重要である。とりわけ、地
城の課題を
発掘し、計画課題も漠とした段階、そして都
市計画を担う主
体が弱く組織もしっかりしていない段階
において質の高い計
計画を実現していくためには、状況
に応じて柔軟に能力が発
揮できる職能のネットワークの
形成が求められる
。本書で行
おうとしている理論化とい
う作業もまた、そうした実践との
かかわりにおいて、最
も効果的に行いうるものであることを
自覚しているとこ
の章を結んでいる。


                             この項了

 
【エピソード】      

         

まさか、都市計画理論を考えるなんて考えてもみなかっ
たが、限りある時間でどれほどイメージとして切り取れ
(=編集力)たか不安である。そんなときに出会ったの
 下記ホームページが目に入る。目から鱗である。

世界は広い!八畳(インターネット)に広がっている!
たとえば、県鳥の「カイツブリ」を通して都市計画を見
直すと
どうなるだろうか?生態学的側面が浮き上がれば
持続可
能社会、ビオトープ、共生、再生可能エネルギー
もったい
ない、省エネ、地産地消、共生、善導大師、法
然、宗安寺、キャッスルロード夢京橋・・・・・・ エトセトラ。

【脚注及びリンク】
-----------------------:------------------------
 
  

  1. 「地域資源・交通拠点等のネットワーク化による
    国際観光振興方策に関する研究」国土技術政策総
    合研究所 プロジェクト研究報告 2008.05.21
  2. 「歴史まちづくりのてびき(案)」ISSN 1346-73
    28 2013.11.13
  3. 歴史まちづくりの特性の見方・読み方 国土技術
    政策総合研究所 2013.04.11
  4. 「まちづくりはひとづくり」をめざし 市民主導
    のまち創る-近世城下町 彦根市本町地区の2例の
    場合-(これからの都市づくりと都市計画制度 全
    国市長会) 中島一 2005.05.09
  5. 「城と湖のまち彦根」中島一 サンライズ印刷出版
  6. 「続・城と湖のまち彦根」中島一 サンライズ印刷
    出版部 
  7. 中島一・水野金一・田中治是『建築空間における
    都市計画額』コロナ社
  8. 中島一元彦根市長 Wikipedia
  9. ドイツ:ニュルティンゲン市「市民による自治体
    コンテスト1位のまち(1)」 池田憲昭
     内閣
    府経済社会総合研究所
  10. The Neckar river near Heidelberg  Wipipedia
  11. ラウフェン・アム・ネッカー Wipipedia
  12. ボーデン湖 Wikopedia
  13. コモ湖 Wikipedia
  14. ネッカー川 Wikipedia
  15. 『ヘルダーリン詩集』 川村次郎 訳 岩波文庫
  16. 『ヘルダーリン』小磯 仁 著 清水書院
  17. 三島由紀夫 著『絹と明察』
  18. 三島由紀夫の十代の詩を読み解く21:詩論とし
    ての『絹と明察』(4):ヘルダーリンの『帰郷
    』詩文楽
  19. 三島由紀夫の十代の詩を読み解く18:詩論とし
    ての『絹と明察』(1)~(7)詩文楽-Shibun-
    raku
  20. フリードリヒ・ヘルダーリン  Wikipedia 
  21. フリードリッヒ・ヘルダーリン - 松岡正剛の千
    夜千冊
  22. ヘルダーリンにおける詩と哲学あるいは詩作と思
    索頌歌『わびごと』を手がかりに 高橋輝暁 2010.
    09.06
  23. 『ヘルダーリンの詩作の解明』、ハイデッガー著
    イーリス・ブフハイム,濱田恂子訳
  24. 南ドイツの観光|ドイツ観光ガイド|阪急交通社
  25. バーデンヴェルテンベルク州&バイエルン州観光
    局公式日本語
  26. リンダウ - Wikipedia
  27. ハイデルベルグ Wikipedia
  28. ハイデルベルク城 - Wikipedia
  29. 城郭都市 Wikipedia
  30. List of cities with defensive walls Wikipedia
  31. ヨーロッパ100名城 Wikipedia 
  32. 中国の城郭都市 : 殷周から明清まで 愛宕元著
  33. 中国城郭都市社会史研究 川勝守 著 汲古書院
  34. 万里の長城 世界史の窓  
  35. 中国厦門の城郭都市研究における外邦図の利用
    山近久美子(防衛大学校)2005.08.25
  36. ヨーロッパ100名城 Wikipedia
  37. 近江佐和山城・彦根城 城郭談話会編 サンライズ
    出版
  38. 淡海文庫 44 「近江が生んだ知将 石田三成」太
    田浩司 サンライズ出版
  39. 佐和山城 [5/5] 大手口跡は荒れ放題。現存する移
    築大手門は必見 | 城めぐりチャンネル
  40. 中井均 『近江佐和山城・彦根城』サンライズ出
    版2007
  41. 彦根御山絵図 彦根三根往古絵図など古絵図デジタ
    ル・アーカイブ化に、彦根市立図書館  2012.05.
    27 
  42. 彦根市指定文化財 「山崎山城跡
  43. 都市計画の世界史、日端康雄 講談社現代新書
  44. ドイツ流 街づくり読本  水島信
  45. 続・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  46. 完・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  47. 都市計画-1 日本の都市計画制度の概要 大谷英一   
  48. 都市計画-2 都市の歴史と都市計画 大谷英一
  49. 都市計画の理論 系譜と課題 高見沢実編集
  50. 「協働的プランニング」の都市計画理論 Patsy He-
    aley ,“Collaborative Planning
    2010.02.13
       
     
  51. 都第4回 リスク社会論 ベック・ギデンズ・ルー
    マンの「リスク」論(現代都市文化論演習 2009))
    筑和 正格 2010.05.25
     
  52. ビフォア・セオリ 現代思想の<争点> モダンと
    ポストモダン 慶應義塾大学出版会|人文書

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城郭都市設計史 28

2016年02月25日 | 湖と城郭都市

 

先回までドイツの都市計画を建築家・水島信の体験を通
してその特徴・差異・課題(問題点)を足早に俯瞰する。
今回はこれまでの都市計画に関する理論と実践過程を高
見沢 実 編『都市計画の理論 系譜と課題』を元に俯瞰し
未来への視座をスケッチする。その後、「まちづくりは
ひとづくり」をめざし 市民主導のまち創る-近世城下
町 彦根市本町地区の2例の場合」と「近世の彦根」の
考察に移る。

【都市計画理論の現況】

この著書では、近年注目される対話聖都市計両理論をと
りあげて、他の理論的立場からの批判を踏まえ、これか
らの都市計画理論を展望する。

● 対話型都市計両理論の意義と限界

90年代の後半以降、過去の反省から対話的な都市計画に
関す
る実践が積み重ねられ理論化も進んできた。しかし
これまで、この対話型都市
計画理論について日本で体系
的にかつ批判的に議論した論文はない。まず対話型都市
計画部論の提唱された経緯と
普及してきたか、背景やバ
リエーションはについて紹介される。



上図のサロン(生活圏)をミシェル・フーコ(構造主義)
的画像展開の1つの事例が下図(公共圏の解体)




・価値が生成される対話型都市計画理論 

それぞれの主体が政治圧力カ等の制約にさらされることなく
自らの考えを発言し、じっくり話し合ってこそ真の計画づくり
は可能とする理論。原論としてはハーバーマスの対話理論
である(上図)。都市計画への応用としては、「対話型
communicative,discursive)」「協働
collaboratione)」
「コンセンサス構築(consensus bunding)」などの言い
方で理論化sれる
。この際、既存の社会組織をどうみる
かで議論に参加すべき主体が変化
、ヒーリーの議論が一
般論に近いのに対し、イネスの
議論は現代社会を「ステ
ークホルダー」社会(おのおのがステーク=利害関係を
もち、それを背景に登場する
)ととらえ、それぞれのス
テークをもる主体間でコンセンサスを形成することの重
要性を、マスタープラン策定例ををもとに説かれる。  

・日本での実践

日本でも70年代後半頃よりこうした対話型都巾計画の
必要件が強調され
住民参加」などのキーワードにより実践も
積み重ねられてきた。しかし、理論化゛という面でみると弱かっ
たことは否めない。もともと日本では理論化の作業自体がな
かなかなされないばかりか、その上のようなことは「役立たな
い」で片づけられる傾向がある。小泉秀樹はようやく対
話型
都市計画というものの考え方と成立条件を体系的に
紹介し記述したものであるが、小島孔、
佐藤滋編集等も
これに関連したものである。

しかし、実践があまりなされなかったというとそうでは
ない。さらに進ん
 日本での実践が遅れていたかという
とそうでもない。むしろ自覚的に理論化
されてこなかっ
た意味、日本での経験が世界のモデル
になりうる部分も
もっていると考えられる。理論化の作業が重要なのは、
こうした相互比較により国際的な位置付けできることで
ある。

● 対話型都市計画理論の限界

対話型都市計画はあまり反対の余地がない都市計画であ
るが万能ではない。とりあえず、ある場を設定し周囲か
らの出力なく純粋な形で計画を決めていくことは理念と
しては立派であるが、そのような状況が創れる場面は実
際には、限定的である。むしろそのような状況にならな
いのはなぜか、そのような状況を創り得たとしても実行
段階でうまくいかないことが多いのはなぜか。そうした
問題を克服するにはどうしたらよいのかを考えることが
重要である。

さらに、踏み込むと、そのような場が仮にできたとして
もすでに参加者の間には構造的につくりだされた差異(
貧富、男女、マイノリティ等)が総菜するが
それを対話
よって解決するのは困難であるといった本質的問題が
ある。
そこで、「パワーの行使としての都市計画理論」「
声無き民の理論」「市場
の論理と対話型都市計画理論」
「目標の設定」の4つの視点から対話型都市
計画理論の
限界が論じられる。

・パワーの行使としての都市計画理論 


都市計画が最終的に個人の財産権の制約にまで踏み込むこ
とを本質とする。以上、最後にそこまで踏み込むパワーを
押さ
えておくことが必要である。もちろん、対話型都市
計画理論も
合意形成のうえで取り決めをしパワーを行使
するからそのよう
なことは折り込み済みであると反論す
ることも可能である。

しかしそうであるにせよ、例えば都市計画決定や事業化
をめぐって、ざまざまな葛藤が生じている現実を真摯に
けとめるためにも、ここでパワーにつき理論的に考え
ておく。フーコーに源を発し、ジョン・フオレスターや
ジーン・ヒリアーらにより
理論化が進められるこの批判
の核心は、対話型都市計画があまりにユートピ
ア的であ
る点にある。そもそも対話に参加する関係これはさまざ
まで、すでに
大きな力の差ができあがっている)。力と
いうとすぐに(行政的な)権力機構を
想起しがちである
が、フーコーによれば力は社会のすみずみにまで働いて
る普遍的なものである。例えば男性の役員の割合が女
性よりも多いなどの現
象は、こうしたさまざまな1つ1
つのカが(多くは無意識のうちに)働いた
結果築きあげ
られたものなのである。そうした批判への自覚的対処が
なけれ
ば住民参加は単なる行政による操作にすぎなくな
る。

そうである以上、対話によって形成される「合意」というのも疑
わしい。そもそもあまりに価値観や立場が違いすぎてい
て合意があり得ないととまで言わなくとも、何事も合意
に収斂するはずだというのは現実的でない。批判理論の
観点からは、合
意(consensus)ではなく競技(contest
とみなすべきと
唱える論者もある。両者をつなぐ理論(
見方)としてはコンセ
ンサス(con-sensus 合意はできない
までも、感じる
ことで理解し合おうと努めること)、セ
ツルメント(settlement 合意はできないまでも
、お互いの主
張を理解して収めておくこと)などがある。ここでは、

さらに進んで具体的な都市計画に直接の示唆を与えるヘ
ンク・ヴーグドとヒリアー
の議論がある。

ヴ-グドは、これをソーシャル・ジレンマ(social dilem-
mas
)の問題と考え、以下のように
説く。ソーシャル・
ジレンマは、今はやりの対話型都市
計画だけで解けるほ
ど単純ではない。計画分野におけるソーシャル・ジレン
マは、多次元的
なのだから、ソーシャル・ジレンマ解決
の戦略も多次元的であ
るべきで、そもそも対話型都市計
画論者が批判する合理的総合計画の問題(世の中の複雑
なことを合理的に計算尽くせるわけではない)は、対話
型都市計画理論自体の問題である(いろいろな計画にす
べて参加することは不可能だから)。結論的にはヴーグ
ドは2軸には仕分けがソシアル・ジレンマを解決するた
めの適切な戦略であるとするとする
。第1軸は、市民参
が受け身的(re-active)か、能動的(pro-active)か。
第2
軸は、政府参加が主導的leading)か、調整的(fa-
cilitating )
かである。これらを組み合わせすると下表とな
る(下表↓)




この整理によれば、対話型都市計画がff効なのは表の右
下、つまり、市民参加が
能動的で、政府が調整的な役割
を果たす場面に限られることがわかる。その他
のハコで
対話型都市計画がまったく無力というわけではないが、
それだけで
解決できるものではない。例えば現実にあり
かちなのが左上のハコ、つまり
市民は受け身的であるが
政府が主導的な場合には、ルールと手続による
解決が適
している。具体的には行政がある地域に幹線道路をぜひ
通したい道路
行えた場合、たとえ反対住民がいても都市
計画決定手続を粛々と行い、異議
中し立てがあったとし
ても補償額のルールなどによって道路事業を進め
るとい
うように。

一方、ヒリアーは、近年顕著にみられる上うになった直
接行動による都市計画
(陳情を行ったり座り込みを行う
など)を理論的にも正統な都市計画
システムに位置づけ
ようと理論化の作業に取り紺んでいる。対話型都市計画
理論がユートピアであるとする背景には、そのような公
共の場の設定ができる場面は限られており、世界の大半
の国では
政治の裏取引や非合理的行動がまかり通ってい
る現実がある。ヒリアーの母国オーストラリアでもそれ
は同
じで、力を結集できる中産階級のエリート集団を行
動によっていとも簡
単に開発エリアを変更させたり、ア
ボリジニーをはじめとする「弱者」の主
張は公武の場に
おいても直接行動としても取り入れられない。そうであ
る以上、
都市計画システムとしては非公式である直接行動
を正当化することや、「弱者」の声を反映できる上うにするこ
とが大きな課題であるとする。

そこで提唱されているのが合意(consensus)による都市計画
ではなく、競争的な (agonistic都市計画である。 実はこの
え方は、政治理論的にはナンナ・アーレント(母国は
ドイツ)や
バットナム(イタリア研究)の見方に通じる
ものがあるし、日本
のよう土壌に共通するものがある。
勿論、賄賂や暴力などの極端な問題は法によって裁かれ
るべきとしても、このような問題意識をもって現実や実
践の中から理論化を行うことは我々に課された大きな課

題なのであると、このように述べる。  

                            この項つづく



【エピソード】      

           

【脚注及びリンク】
-----------------------:------------------------
 
 

  1. 「地域資源・交通拠点等のネットワーク化による
    国際観光振興方策に関する研究」国土技術政策総
    合研究所 プロジェクト研究報告 2008.05.21
  2. 「歴史まちづくりのてびき(案)」ISSN 1346-73
    28 2013.11.13
  3. 歴史まちづくりの特性の見方・読み方 国土技術
    政策総合研究所 2013.04.11
  4. 「まちづくりはひとづくり」をめざし 市民主導
    のまち創る-近世城下町 彦根市本町地区の2例の
    場合-(これからの都市づくりと都市計画制度 全
    国市長会) 中島一 2005.05.09
  5. 「城と湖のまち彦根」中島一 サンライズ印刷出版
  6. 「続・城と湖のまち彦根」中島一 サンライズ印刷
    出版部 
  7. 中島一・水野金一・田中治是『建築空間における
    都市計画額』コロナ社
  8. 中島一元彦根市長 Wikipedia
  9. ドイツ:ニュルティンゲン市「市民による自治体
    コンテスト1位のまち(1)」 池田憲昭
     内閣
    府経済社会総合研究所
  10. The Neckar river near Heidelberg  Wipipedia
  11. ラウフェン・アム・ネッカー Wipipedia
  12. ボーデン湖 Wikopedia
  13. コモ湖 Wikipedia
  14. ネッカー川 Wikipedia
  15. 『ヘルダーリン詩集』 川村次郎 訳 岩波文庫
  16. 『ヘルダーリン』小磯 仁 著 清水書院
  17. 三島由紀夫 著『絹と明察』
  18. 三島由紀夫の十代の詩を読み解く21:詩論とし
    ての『絹と明察』(4):ヘルダーリンの『帰郷
    』詩文楽
  19. 三島由紀夫の十代の詩を読み解く18:詩論とし
    ての『絹と明察』(1)~(7)詩文楽-Shibun-
    raku
  20. フリードリヒ・ヘルダーリン  Wikipedia 
  21. フリードリッヒ・ヘルダーリン - 松岡正剛の千
    夜千冊
  22. ヘルダーリンにおける詩と哲学あるいは詩作と思
    索頌歌『わびごと』を手がかりに 高橋輝暁 2010.
    09.06
  23. 『ヘルダーリンの詩作の解明』、ハイデッガー著
    イーリス・ブフハイム,濱田恂子訳
  24. 南ドイツの観光|ドイツ観光ガイド|阪急交通社
  25. バーデンヴェルテンベルク州&バイエルン州観光
    局公式日本語
  26. リンダウ - Wikipedia
  27. ハイデルベルグ Wikipedia
  28. ハイデルベルク城 - Wikipedia
  29. 城郭都市 Wikipedia
  30. List of cities with defensive walls Wikipedia
  31. ヨーロッパ100名城 Wikipedia 
  32. 中国の城郭都市 : 殷周から明清まで 愛宕元著
  33. 中国城郭都市社会史研究 川勝守 著 汲古書院
  34. 万里の長城 世界史の窓  
  35. 中国厦門の城郭都市研究における外邦図の利用
    山近久美子(防衛大学校)2005.08.25
  36. ヨーロッパ100名城 Wikipedia
  37. 近江佐和山城・彦根城 城郭談話会編 サンライズ
    出版
  38. 淡海文庫 44 「近江が生んだ知将 石田三成」太
    田浩司 サンライズ出版
  39. 佐和山城 [5/5] 大手口跡は荒れ放題。現存する移
    築大手門は必見 | 城めぐりチャンネル
  40. 中井均 『近江佐和山城・彦根城』サンライズ出
    版2007
  41. 彦根御山絵図 彦根三根往古絵図など古絵図デジタ
    ル・アーカイブ化に、彦根市立図書館  2012.05.
    27 
  42. 彦根市指定文化財 「山崎山城跡
  43. 都市計画の世界史、日端康雄 講談社現代新書
  44. ドイツ流 街づくり読本  水島信
  45. 続・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  46. 完・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  47. 都市計画-1 日本の都市計画制度の概要 大谷英一   
  48. 都市計画-2 都市の歴史と都市計画 大谷英一
  49. 都市計画の理論 系譜と課題 高見沢実編集
  50. 「協働的プランニング」の都市計画理論 Patsy He-
    aley ,“Collaborative Planning
    2010.02.13
       
     

 ---------------------;-------------------------


城郭都市設計史 27

2016年02月20日 | 湖と城郭都市

 

【ヘルダーリーンの国の街づくり Ⅲ】

今回は、水島信氏の「都市計画論」をまとめ参考にして
いこう。

● 市民の市民による市民のための街づくり

日本で街づくりというと主に観光になってしまう。観光
を推進することは、経済的には必要だが、まず自分たち
が住んで気持ちよくなければ街づくりにならないと著者
は指摘する。

人が見てきれいかどうかという前に、自分たちが住んで
気持ちいいかどうかが街づくりの基本であるのに、日本
では、街づくりとしての観光の推進が、自分たちの生活
を圧迫するものになってしまっているのは方向違いだ。、
と述べる。

Noerdlingen

彼自身が関わった街づくりで、レトロな路面電車を走ら
せれ
ば観光になるじゃないかという提案があった時、そ
のため
にどれだけの税金が使われるのかといったことや、
設置による
都市空間の分断の弊害などを考えたもので
なく、単に路面電車が欲しいと動機で、自分たちが使え
るような交通機関であれば問題はないが、
観光のための
路面電車であれば、住民の利便さに役立たない
、その街
の人は年に数度しか使わないような
ものを毎日走らせる
ために、単に税金を使うことになる――
結果として自分た
ちの街はよくならない。これは純経済――例えば、単年
度会計を前提とし「路面列車導入による観光収入増-(
路面列車建設運用経費+導入によるデメリット)」として
考えれば明確となる。ただし、「導入によるデメリット」
とは、観光事業運用費、例えば、ゴミ回収や美化整備の
ための出費など。
大きな施設をつくり施工者は利益を得
るが、でき
あがってしまった後は年間何億もの維持費か
かるといっなど日本の各地に実例があるものの、それは、
それが街づくりだと思っている人も多いので、税金を使
う行政側も、自分のお金じゃないから無責任なことをや
ってもそんなに堪えていないが、ドイツでは当該
市長は
即落選すると手厳しい。


開発の考え方も日本とドイツは違う。新規の開発は、基
本的には人間の手が入っていないところを開墾すること
であって、いま開発という名前でやっていることは、
はすべて再開発

この再開発の大きな目的は、最初の開発の間違いを直す
こと。日本の再開発は、最初の間違いの上にまた間違い
を重ねる。日本の再開発はスラムクリーニング。、劣悪
な環境を一見きれいにしただけで、本当の意味で居住環
境がよくなっていない。インフラも整っていないのに高
層の建物などをつくれば、住環境は悪くなるのは一目瞭
然。

これに対して、ドイツの場合は社会主義的な背景(その
政策をパックった国家純血主義(=ナチズム:目的なき
破壊運動)をもあって、再開発の目的は住民にとっての
居住環境の改善だという考え方が徹底し、経済性より生
態環境性の背景
にある。一番に問題を発生させるのは経
済優先の都市計画である。産業革命の後に経済を優先し
たことで、人間性を無視した都市開発が行われ、ヨーロ
ッパはそのことを既に経験した。だから、ドイツでは都
市計画の結果損害を被った人への保障まで考えている。
改善したことで利益を得た人たちから負担金を徴収し、
損失を受ける人を保障するソシアルプラン―――やり過
ぎだという批判があるが―――で、誰にでも平等な居住
環境を提供する。

 

● 観光事業の失敗学

ドイツでも、ロマンチック街道では、戦後の一時期、街
のなかを観光施設にして、普通の店をお土産屋にすると
儲かる。そうすると、いままで地域の人が、ちょっとミ
ルクを買いに行ったりしていたのが、買えなくなってし
まう。つまり、自分たちの生活が不便――日本では現在
はコンビニが乱立気味?にありそれは考えにくいが――
さに気づきは観光化を止めた。造ってしまった施設はそ
のままにしておき、これ以上増やさないようにする。ロ
ーテンブルクの建設局での話では、「自分たちが住めな
くなったら、自分たちの街じゃなくなってしまう。街づ
くりの基本はそれだよ」と。ローテンブルクの住民は観
光ではなくて自分たちが住みやすいかどうかという視点
から街づくりを始める。ところが、70年代の半ばに自
分たちが暮らしやすい街づくりに切り替え、城壁の外に
駐車場をつくって街の中に車を入れないようにしたら、
逆に観光客が増え、車が通らないので街の中を自由に散
策できるようになり、観光客にとっても魅力が増える
つまり、自分たちが歩きやすい街は、観光客も歩きやす
いという当たり前のこと。ロマンチック街道は観光を売
物にしなかったが故に、いまにして昔風に残っている。
もちろん観光で潤っている街だが、日本では、観光客を
呼ぶことが街づくりだと思っているが自分たちが住んで
不便な部分を直すことが先決だと事例を介する。



その上で、日本は、街づくりに民衆が関わった歴史がほ
とんどない、権利をきちんと主張したことがない、自分
たちの暮らしを脅かす相手に対して喧嘩もできない、時
には喧嘩もしなければいけないという認識もない。自分
たちの生活を守るという経験がないから、自分たちの生
活の場である街づくりに何が重要かということに気付か
ない。たとえば、体育館のない街の住民が森を壊してで
も体育館が欲しいと主張することはあっても、体育館が
できたらどれだけ自分たちの生活が豊かになるかという
議論はない。余暇を利用して健康になるための体育館こ
そが自分たちの生活のクオリティを上げるんだという話
だけになってしまう。誰も、どうして森のままでは健康
づくりができないのかも聞かないし、聞いたとしても多
数賛成派の意見に消される。体育館の目的は住民の健康
のためだから、森を残してジョギングコースにした方が
健康的ではないか、ちょっと森を荒らすことになるけど、
トレーニングができる設備をつくればいいでしょうと確
信を持って語れる人と場が日本には少ない――多少強引
なレトリックだが――と述べて「長いスパンで考えるべ
き経済効率性」という考え方を述べる。




ドイツでも、経済効率性を考えるがスパンが違う。何年
たって儲かるかという考え方、それが日本は短いのだと、
たとえば、一戸当たり180平方メートル(60坪)ぐ
らいの土地であったら、ドイツでは長屋として計画する。
そうすると土地の半分は庭で残ることになる。180平
方メートルの土地で奥行きが30メートル、間口が6メ
ートルだと、境界線からの引きが5m、建物が12メート
ルなら、残りは13メートルになる。この13メートル
と引きの5メートルも、一軒の家だと狭い庭でも、2軒、
3軒、10軒と並んだのを合わせれば、成長してグリー
ンベルトになる。50年、百年といった長いスパンで考
える発想ができる。ところが、日本のデベロッパーと話
しても、そんな話にはならない。慣習的な正方形が良い
という日本の杓子定規なやり方なら、グリーンベルトと
して残らない。将来的に環境が良くなることで資産価値
が上がらない。これも、経済効率を短いスパンで考える
弊害だと一例を示し、次のように問いかける。

Romantische Straße


「クオリティの悪い環境に住んでいて、人間としての尊
厳を守れるかと」
。良くない環境に住んでいて、それが
当たり前になってしまうことで生じる文化格差なものが
あるのではないか、日本人は、戦前にはすごくいい環境
に住んでいたのに戦後にバラックを建てたことで、それ
が当たり前になってしまった。家の中にモノがいっぱい
で、ちょっと歩くと何かに当たってしまうのが当たり前
の住環境になる。一度慣れてしまえば、なかなかそこか
ら抜け出すことはできない。だから今の日本では、街の
中でも景観とかそういう視点がなくなってしまっている
と問題提起し読者に迫る。
 

Schloss Neuschwanstein

【エピソード】      

           

【第1回現地調査日】 2016年4月下旬(予定)  

 

   

 

【脚注及びリンク】
-----------------------:------------------------
 
 

  1. 「地域資源・交通拠点等のネットワーク化による
    国際観光振興方策に関する研究」国土技術政策総
    合研究所 プロジェクト研究報告 2008.05.21
  2. 「歴史まちづくりのてびき(案)」ISSN 1346-73
    28 2013.11.13
  3. 歴史まちづくりの特性の見方・読み方 国土技術
    政策総合研究所 2013.04.11
  4. 「城と湖のまち彦根」中島一 サンライズ印刷出版
  5. 「続・城と湖のまち彦根」中島一 サンライズ印刷
    出版部 
  6. 中島一・水野金一・田中治是『建築空間における
    都市計画額』コロナ社
  7. 中島一元彦根市長 Wikipedia
  8. ドイツ:ニュルティンゲン市「市民による自治体
    コンテスト1位のまち(1)」 池田憲昭
     内閣
    府経済社会総合研究所
  9. The Neckar river near Heidelberg  Wipipedia
  10. ラウフェン・アム・ネッカー Wipipedia
  11. ボーデン湖 Wikopedia
  12. コモ湖 Wikipedia
  13. ネッカー川 Wikipedia
  14. 『ヘルダーリン詩集』 川村次郎 訳 岩波文庫
  15. 『ヘルダーリン』小磯 仁 著 清水書院
  16. 三島由紀夫 著『絹と明察』
  17. 三島由紀夫の十代の詩を読み解く21:詩論とし
    ての『絹と明察』(4):ヘルダーリンの『帰郷
    』詩文楽
  18. 三島由紀夫の十代の詩を読み解く18:詩論とし
    ての『絹と明察』(1)~(7)詩文楽-Shibun-
    raku
  19. フリードリヒ・ヘルダーリン  Wikipedia 
  20. フリードリッヒ・ヘルダーリン - 松岡正剛の千
    夜千冊
  21. ヘルダーリンにおける詩と哲学あるいは詩作と思
    索頌歌『わびごと』を手がかりに 高橋輝暁 2010.
    09.06
  22. 『ヘルダーリンの詩作の解明』、ハイデッガー著
    イーリス・ブフハイム,濱田恂子訳
  23. 南ドイツの観光|ドイツ観光ガイド|阪急交通社
  24. バーデンヴェルテンベルク州&バイエルン州観光
    局公式日本語
  25. リンダウ - Wikipedia
  26. ハイデルベルグ Wikipedia
  27. ハイデルベルク城 - Wikipedia
  28. 城郭都市 Wikipedia
  29. List of cities with defensive walls Wikipedia
  30. ヨーロッパ100名城 Wikipedia 
  31. 中国の城郭都市 : 殷周から明清まで 愛宕元著
  32. 中国城郭都市社会史研究 川勝守 著 汲古書院
  33. 万里の長城 世界史の窓  
  34. 中国厦門の城郭都市研究における外邦図の利用
    山近久美子(防衛大学校)2005.08.25
  35. ヨーロッパ100名城 Wikipedia
  36. 近江佐和山城・彦根城 城郭談話会編 サンライズ
    出版
  37. 淡海文庫 44 「近江が生んだ知将 石田三成」太
    田浩司 サンライズ出版
  38. 佐和山城 [5/5] 大手口跡は荒れ放題。現存する移
    築大手門は必見 | 城めぐりチャンネル
  39. 中井均 『近江佐和山城・彦根城』サンライズ出
    版2007
  40. 彦根御山絵図 彦根三根往古絵図など古絵図デジタ
    ル・アーカイブ化に、彦根市立図書館  2012.05.
    27 
  41. 彦根市指定文化財 「山崎山城跡
  42. 都市計画の世界史、日端康雄 講談社現代新書
  43. ドイツ流 街づくり読本  水島信
  44. 続・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  45. 完・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  46. 列伝 井伊家十四代 国宝・彦根城築城四百年祭   

 ---------------------;-------------------------
    

 


城郭都市設計史 26

2016年02月19日 | 湖と城郭都市

 

【ヘルダーリーンの国の街づくり Ⅱ】

さて、先回のつづき(「都市デザインサイト - アーバ
ンデザインの実務の視点から日本の街づくりを俯瞰する
」水島信)。



● 建築は文化的行為の結果である

水島信の体験からはじめる。ミュンヘン技術大学でのア
ーバンデザインの授業での街づくりの演習は、まず住宅
の図面を描くことから始まる。それをもとにして6軒の
家をどう組み合わせるか。その次が25 軒の連棟住宅、
それを並べたらどういう街ができるか。そこから発展し
て、街の中の集合住宅とか、郊外の集合住宅へと規模が
大きく。慣れてくると、住宅の図面を描かなくても、た
とえばある区画に12メートルの幅の建物だったら8.
5メートル程度の住居がどんなふうに並んで、どんな街
区ができるかがおのずと分かるようになる、今度はバリ
エーションでタイプ違う家を組み合わせる。そんな演習
を通し、特定の地域のことだけを考えるだけでは、都市
設計としては不十分だということを学ぶと紹介する。



そこでは、ドイツでは国土計画に沿ってプランをつくり、
それに沿ってプランができるという流れがあり、街区内
の部分的に悪いところを直すだけではなくて、そこを直
したらこの地域はどう変化するかを予測する。さらに、
その地域が変化することが都市全体にどのような影響を
与えるのかという配慮も必要で、全体を視野に入れた上
で、部分をどのように計画をするのか?まず、S=1/
/25000の図面を描き、次のステップでは、S=1/
5000の検討も行った上で、S=1/2500になる
と都市のディティールが見えてくる。そんなふうに検討
し理解し、最終的にS=1/1の図面まで落とし込み、
具体的なアーバンデザインするという―――のだから、
流石、欧州の近代知を結実させた国だと驚く。


 

次に、建築家の報酬はドイツ建築家・技師者報酬令HO
AI
で保障されている。これは、建築は文化の一端を担う
という認識に立った上で、建築家はそ
の仕事に一定のク
オリティを求められていることを
意味する。その良質な
クオリティはダンピングされた報酬からは得ることはで
きないという歴史的事実に
基づいた考え方でだが、一律
の設計料規定は独占
法違反などといった日本の考え方、
または、文化の発展に逆行するような考え方では理解で
きない条令。


また、施主が設計上不都合なことを要求したら、建築家
が専門的根拠をもって制止・説得する。建物に
関しての
ことは建築家に任せなさいという
が、施主はお金を出す
ことで必要な建物を手に入れる
のが目的とし、そのため
に建築家は施主と同等のレベル
でアイディアを出し、経
費発生する。だから上下の関係
がなく、対等な関係の人
間として計画にとって何が最良
のことであるかを話し合
う。これは、お金を出す施主の
いう通りにしろといった
意識のある日本では、理解
しがたいという(実際はどうかは
?)。


ここで、日本語の建築という言葉は、行為の名詞形で
って、造形するという概念が入っていないと指
摘。だか
ら、もし一級建築士に建築家という言葉を
使うのなら、
造形するという概念も含めた言葉とし
て使う必要がある
とし、ヨーロッパでいうアーキテ
クトと同じ意味で建築
家という言葉を使うなら、創
造するという概念を新たに
入れないと意味がない。

これはArchitectureを建築と翻訳したときのボタンの掛け
違いがあって、「建物」と「建築」という言葉違いが明確
で無くなってしまう。建物という言葉は、建造物や建築
物という意味を持ち、建設されたものを指す。ところが
日本語の建築という言葉は、家屋や橋などを建設する行
為と、建設されたものの両方の意味を持っているが、ド
イツ語では Architekturは、芸術としての造形や建造を指
Baukunst、または様式としての建造、造形を指すBaustil
とされている。技巧や芸術を意味するのがkunst、様式や
スタイルを意味するstilで、日本語の建築とは違い明確に
芸術的行為の結果を指すと解説しているが、概念的にそ
うであっも、分業・細分化した社会ではデザイン(意匠
設計)、機能(構造設計)さらに分化していくために実
体は似たり寄ったりではないだろうか。



Nördlingen  ネルトリンゲン

 

● 一体的に共有すべき将来的な都市像

日本とドイツは何が違うのか?何で違うのか?それは一
言で
いうと日本特有の縦割りの行政制度からきていると、
指摘しているが、これは重要な共通認識である。同じよ
うなスキームなのに、実施する面積が違
うだけで別の事
業区分になる。時には開発事業になったり、
地区計画事
業になったりと、どういう基準でそうなるのか分
からな
上、行政側のいろいろな部署が縄張り争いをしてい
るよ
うに見えるのだと。



F-プランは自治体が都市をどうするかというビジョンを
表し、そのF-プランに則るかたちで、それぞれの部分の
B-プランを計画する。部分の計画を集めて構成するので
はなく、背景として全体のネットワークがある中で部分
の計画が造られる。ですからドイツの都市計画は、国の
計画があって、州の計画があって、地方の計画があるこ
とで流れ、国土計画や州計画から影響を受けている自治
体の責任を明確にして、ビジョンを表明したF-プランと
いうがあって、その枠内での新たな建設の詳細を示すB-
プランがある。このシステムが、必ずしも将来の都市の
状況を示すプランを意味しない日本の都市計画との大き
な違いです。部分的な解決法しか行われず、しかもそれ
ぞれの施策が有機的に関連しない日本と、市街地全体を
考えて都市計画を構想するドイツの違いとその弊害は明
瞭だと言い切る――ここで拍手!それでは「縦割り行政
を解体し行政刷新する」という命題についてどう考える
のか?それば別の機会と場で考える。 



Abensberg

さらに、著者は、日本は街づくりの手法の模索をしてい
るようだが、その原因はこのように、それぞれの地域が
独立した上で連携をとっていないからではないかとし上
で、ドイツの建設指針計画、つまり本来の形の地区計画
システムを導入すれば、全体的な視点で検討されたデザ
インをそれぞれの地区で行うことになり、結果として非
常にきれいな街になる。また、日本のように縦割りで、
道路も住宅地もそれぞれが関連なく造るのではなく、
市全体のイメージの中でつくれば良い、ドイツでも、都
市計画はパッチワークになってしまう面があるものの
F-プランという全体の枠の中で行うので、たとえ全体像
から少しはずれても、大きな枠の中には納められること
になりまる。全体像があれば、ある部分で増えたら、別
の部分で調整でき、全体像がないから、一部分でやって
しまったら、別の部分ができなくなる日本のやり方を考
え直さなくてはいけないと主張する。

                              この項つづく 

 

【エピソード】     

         

 

 【第1回現地調査日】 2016年4月下旬(予定) 

 

  

 

【脚注及びリンク】
-----------------------:------------------------
 
 

  1. 「地域資源・交通拠点等のネットワーク化による
    国際観光振興方策に関する研究」国土技術政策総
    合研究所 プロジェクト研究報告 2008.05.21
  2. 「歴史まちづくりのてびき(案)」ISSN 1346-73
    28 2013.11.13
  3. 歴史まちづくりの特性の見方・読み方 国土技術
    政策総合研究所 2013.04.11
  4. 「城と湖のまち彦根」中島一 サンライズ印刷出版
  5. 「続・城と湖のまち彦根」中島一 サンライズ印刷
    出版部 
  6. 中島一・水野金一・田中治是『建築空間における
    都市計画額』コロナ社
  7. 中島一元彦根市長 Wikipedia
  8. ドイツ:ニュルティンゲン市「市民による自治体
    コンテスト1位のまち(1)」 池田憲昭
     内閣
    府経済社会総合研究所
  9. The Neckar river near Heidelberg  Wipipedia
  10. ラウフェン・アム・ネッカー Wipipedia
  11. ボーデン湖 Wikopedia
  12. コモ湖 Wikipedia
  13. ネッカー川 Wikipedia
  14. 『ヘルダーリン詩集』 川村次郎 訳 岩波文庫
  15. 『ヘルダーリン』小磯 仁 著 清水書院
  16. 三島由紀夫 著『絹と明察』
  17. 三島由紀夫の十代の詩を読み解く21:詩論とし
    ての『絹と明察』(4):ヘルダーリンの『帰郷
    』詩文楽
  18. 三島由紀夫の十代の詩を読み解く18:詩論とし
    ての『絹と明察』(1)~(7)詩文楽-Shibun-
    raku
  19. フリードリヒ・ヘルダーリン  Wikipedia 
  20. フリードリッヒ・ヘルダーリン - 松岡正剛の千
    夜千冊
  21. ヘルダーリンにおける詩と哲学あるいは詩作と思
    索頌歌『わびごと』を手がかりに 高橋輝暁 2010.
    09.06
  22. 『ヘルダーリンの詩作の解明』、ハイデッガー著
    イーリス・ブフハイム,濱田恂子訳
  23. 南ドイツの観光|ドイツ観光ガイド|阪急交通社
  24. バーデンヴェルテンベルク州&バイエルン州観光
    局公式日本語
  25. リンダウ - Wikipedia
  26. ハイデルベルグ Wikipedia
  27. ハイデルベルク城 - Wikipedia
  28. 城郭都市 Wikipedia
  29. List of cities with defensive walls Wikipedia
  30. ヨーロッパ100名城 Wikipedia 
  31. 中国の城郭都市 : 殷周から明清まで 愛宕元著
  32. 中国城郭都市社会史研究 川勝守 著 汲古書院
  33. 万里の長城 世界史の窓  
  34. 中国厦門の城郭都市研究における外邦図の利用
    山近久美子(防衛大学校)2005.08.25
  35. ヨーロッパ100名城 Wikipedia
  36. 近江佐和山城・彦根城 城郭談話会編 サンライズ
    出版
  37. 淡海文庫 44 「近江が生んだ知将 石田三成」 太田
    浩司 サンライズ出版
  38. 佐和山城 [5/5] 大手口跡は荒れ放題。現存する移築
    大手門は必見 | 城めぐりチャンネル
  39. 中井均 『近江佐和山城・彦根城』サンライズ出版2007
  40. 彦根御山絵図 彦根三根往古絵図など古絵図デジタ
    ル・アーカイブ化に、彦根市立図書館  2012.05.27  
  41. 彦根市指定文化財 「山崎山城跡
  42. 都市計画の世界史、日端康雄 講談社現代新書
  43. ドイツ流 街づくり読本  水島信
  44. 続・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  45. 完・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  46. 列伝 井伊家十四代 国宝・彦根城築城四百年祭    

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