福満遺跡 5世紀の古墳
彦根市教委文化財課は、小泉町で発掘調査中の福満遺跡
の一部から市内で初めて5世紀代の古墳が確認されたと発
表。同遺跡は小泉町や西今町に及ぶ縄文時代から、弥生、
古墳時代、古代・中世までの遺構で構成された複合遺跡。
これまでに古墳の埋葬施設とみられる遺構や周濠(しゅうご
う)とされる溝の跡などが確認。また近くの西今、須川、竹ケ
鼻廃寺などの各遺跡からは埴輪片が見つかっている。
今回は福満遺跡のうち、ひこね燦ぱれす北側の約120
0平方㍍内の約400平方㍍で今年7月16日~11月6日
の予定で発掘調査を実施。弥生時代末期~古墳時代初期
(3世紀後半)の方形周溝墓1基や、古墳時代中期の終
わり~末期(5世紀後半)の古墳(円墳)2基=1基の
周濠内の長さ約25㍍=が東西に発見。そのうち東側の古
墳は全周濠の4分の1を確認し、周濠の土からは円筒埴
輪片、有蓋高坏(ゆうがいたかつき)・堤瓶(ていへい)
など須恵器、土師器も見つかった。埴輪と須恵器は墳丘
に置かれていた可能性が高いという。西側の古墳は長さ
20㍍弱の大きさ(滋賀彦根新聞 2015.10.28)。
市教委は、同遺跡の近隣地で過去にも古墳の埋葬施設ら
しき遺構や、周濠と考えられる溝なども確認しているこ
とで、在地有力者の古墳群がこの一帯で形成されていた
可能性もあると推測している。
また、犬上川流域ではこれまで、左岸の葛籠(つづら)
北(きた)遺跡(同市葛籠町)で6世紀前半の円墳が出
土している。
● 子持勾玉物語
彦根市西今町・福満移籍から、発掘調査により出土し
た子持ち勾玉(上写真)。古墳時代後期(6世紀前半
)の玉玩(地面に掘った穴)の中から、当時の土器な
どとともに出土。子持ち勾玉は、大型の勾玉形を母
体として、その腹背および両側辺などに小型の勾玉形
を作り出したもの。
使用の正確な用途は明らかになっていない。福濁遺跡
出土の子持ち勾玉には、腹部に1箇、背部に3画、両側
に2箇すつの合計8箇の小型勾玉形が削り出されてい
て、全長81cm、幅46cm、厚さ2、9cm、重量
116gす。石の材質は深緑色の滑石製。表面を詳細
に観察では、幅0.2~0.5cm程度の細かい削り駈
を確認。削り痕はその痕跡をほとんど残さない入念な
研磨仕上げ。平滑となった表面に新たに円圏文が施さ
れている。円圏文はドーナツ状の幅のある圏線とし、
中央には貫通しない孔を穿つ。円圏文の径は0.7cm
~1.1cm。
滋賀県内では福満遺跡を含めて14点の子持ち勾玉が
出土し、その多くが採集品や包含層から出土したもの
であり、福満遺跡のように明確な遺構から出土したも
のは3点しかない。また、表面に円圏文が施されてい
る現存例は福満遺跡が唯一だとされる。県外に視野を
広げると、子持ち勾玉の類例が6世紀を中心に、山陰・
北陸・東北などで出土し、さらに、日本からもたらさ
れたと考えられる子持ち勾玉が朝鮮半島でも出土する
など、日本海沿岸から朝鮮半島に至る地域間の交流を
示す特異な形状の資料として注目されている。彦根市
では、出土状況や埋納時期が明らかで、円圏文を有し
た入念な作りの子持ち勾玉として全国的に数少ない優
品であることから、2009年に彦根市指定文化財に
指定される。
福満神社は彦根市西今町に鎮座し、山の神・酒造りの神
の須佐之男尊の孫にあたる大山昨神(おおやまのくひの
みこと) を祭神とする神社がある。その由来は、鎌倉時
代、野瀬付近一帯に青蓮院門跡を本所とする比叡山延暦
寺の荘園「福満荘」があったということから、その守
護神にあたる坂本日吉(ひえ)大社のご分霊を勧請して
西今・野瀬両村民の「産土神」としました。それが当神
社の始まりと云われている。創建年代は定かでないが、
江戸時代初期と推定され、現在の本殿は、寛政3年(
1791)に再建されたもの。鎮座以来明治の初めまで、
山王権現あるいは山王社と呼んでいたが、明治9年(
1876)、荘園時代の福満荘に因んで、現在の福満神社
と改められる。
地名の福満は、中世の荘園時代の福満荘から、荘園崩壊
後の福満の名称は、明治22年の市町村制が施行時まで使
われず、明治22年から昭和12年の彦根市が誕生するまで
の約50年間は福満村として犬上郡に属す。なお、福満の
名称の起こりは、昔、小泉町八王子神社付近に、天王塚
があり、この塚の天王より由来すると伝えられる。
【脚注及びリンク】
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- 彦根初の5世紀の古墳 滋賀彦根新聞 2015.10.28
- 彦根初 5世紀後半円墳 読売新聞 2015.10.21
- 彦根に5世紀の円墳 初確認、空白期埋める 京
都新聞 2015.10.22 - 彦福満遺跡:彦根市内初の5世紀円墳 25日に
現地説明会 毎日新聞 2015.10.22 - 解説シート「子持こもち勾玉まがたま」(福満
遺跡出土)彦根市 - 福満(ふくみつ)遺跡 滋賀県
- 福満遺跡、奈良文化財研究所
- 5世紀末の円墳2基を確 朝日新聞 2015.10.22
- 福満遺跡とトンボ (現地公開見て歩き137)
- 福満遺跡: 10・11, 第 10 巻 彦根市教育委員会
文化財課, 2008-48ページ - 福満遺跡: 第7次調查, 第 7 巻
- 福満遺跡発掘調查槪要報告書彦根市育委員会
1982 - 遺跡公園をイメージして整備された福満公園
2009.05.18 - 埋蔵文化財 遺跡一覧 全体図
- 大山昨命を祀る「福満神社」2009.05.20
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