地域循環共生概論 66

2023年03月07日 | 防災と琵琶湖


 作成日:2023.3.6|更新日:2023.3.


図  出所:高浜電発

その後の彦根広域ごみ処理施設建設問題 Ⅷ
10.2 放射性セシウムの有効な除去方法の検討
10.2.1 ゼオライトによる吸着除去
10.2.1.1 カラム試験
ゼオライトによる吸着法の実用化を検討するため、放射性
セシウムが30Bq/L 程度含ま れる浸出水を原水とし、カラ
ム試験を実施した(図8.2)。試験条件は、浸出水処理施
設における活性炭吸着塔をゼオライトに置き換えることを
想定し、可能な限り現場の条件 を反映させました。 

・使用原水:一般廃棄物最終処分場浸出水 
・原水 Cs 濃度:Cs134(14.3Bq/L)、Cs137(13.9Bq/L)、
 合計(28.2Bq/L) 
・通水速度:LV 6.23m/h(現地の活性炭吸着塔及びキレー
  ト吸着塔の条件と同じ) 
・空間速度:SV=6(カラム1 出口)、SV=3(カラム2 出
 口)(SV=6 は現地の活性 炭吸着塔およびキレート吸着
 塔1塔あたりの条件と同等) 
・通水量:2.6L/h 
・使用ゼオライト:新東北化学工業 ゼオフィル 品番1424
 ♯粒径1.0~1.4mm 
・使用カラム:φ23mm×1,000mmH 
・充填ゼオライト量:0.31kg/カラム


 今回の試行的な試験条件として、処理水中の放射性セシ
ウム濃度10Bq/L を破過点とすると、SV6 となるカラム1
においては、通水開始後28~32 時間の間に破過に達した。
このとき、SV3となるカラム2 では検出下限値以下であり、
50~60 時間後に10Bq/Lを超える値が検出されました。こ
のカラム試験により、破過点を10Bq/L とした場合の浸出
水中のセシウム吸着容量は、24 時間振とう試験の結果の
約半分程度の6,641Bq/kg と計算された。浸出水原水量、
原水中の放射性セシウム濃度、吸着塔容量等を仮定した上
で、吸着塔によるセシウム除去を行う際のゼオライトの必
要量および交換頻度を試算した。結果は表8.5 に示す通り。
なお、破過点におけるゼオライト中の放射性セシウム濃度
は8,000Bq/kg 以下であることから、本条件においては、
破過後の吸着剤の取り扱いは比較的容易であると考えられ
るが、ゼオライトの交換頻度が 8.1日と短いため、恒久的
な対策としては他の方法を導入することも検討に値する。

表10.5 試験結果(カラム1)からの交換頻度の算出


10.2.1.2 現場試験
基準値を下回る放射性セシウムが検出された埋立地浸出水
処理施設において、既設活性炭吸着塔2 塔と、キレート吸
着塔(水銀用)をゼオライトによる吸着塔として使用した
試験を実施した。なお、浸出水中の放射性セシウム濃度(
Cs134、Cs137 の合計)は最大でも31 Bq/Lであり、基準値
を下回る値。

活性炭吸着塔A、B、キレート吸着塔A の3 塔について、カ
ラム試験で用いたゼオライトと同じ素材で粒径のみ若干大
きいものを充填した。


活性炭吸着塔A の上部が破過していると想定される24 時
間後に一旦通水を停止し、ゼオライト及び浸出水(砂ろ過
器出口)、処理水(活性炭吸着塔A 出口、B 出口)の分析
を行った。その結果、浸出水自体の放射性セシウム濃度も
低い状態であっ
たが、処理水中の放射性セシウム濃度は定
量限界以下となることが確認された。このとき、ゼオライ
トの放射性セシウム濃度は2,450 Bq/kg でした。含水率
(38.4%)から乾燥重量当たりの放射性セシウム濃度を計
算すると、約4,000 Bq/kg となります。カラム試験の結果
ではゼオライトの吸着容量は6,641Bq/kg と試算している
ので、6 割程度しか吸着していないが浸出水中の放射性
セシウム濃度が低いことや粒径が若干異なることが影響し
たものと考えられる

なお、この吸着塔での試験においては、吸着塔の外部表面
における放射線量率を定期的に測定することで、吸着剤へ
の放射性セシウムの吸着状態を把握し、吸着剤の交換時期
の目安などの維持管理に用いることができる可能性が示さ
れてきた。

10.2.2 逆浸透膜による除去
表8.3 で示した通り、RO 膜による放射性セシウムの除去
特性を把握するため、安定セシウムを指標として既存処理
施設における挙動を調査した結果、安定セシウムは約99%除
去され、RO 濃縮液は2 倍程度の濃縮率でした。したがって、
放射性セシウムについても同様の除去効果が期待できます。
但し、RO 膜で処理した際に濃縮水が発生しますが、濃縮
水中の安定セシウム濃度は原水の2 倍以上となる。また通
常、濃縮水は蒸発乾固し、固形残さとして廃棄されること
から、実際に放射性セシウムを対象として除去する場合に
は、濃縮水の取り扱いも含めて検討する必要がある。
調査対象施設では原水の塩濃度が高いため、処理水量と濃
縮水量の比率は6:4 程度であり、流入原水量の4 割程度が
濃縮液として排出される状況でした。濃縮水は蒸発乾固さ
れ、含水率85%以下となるため、濃縮率は数十~数百倍以上
になる可能性がある。したがって、濃縮液の取り扱いにつ
いては検討が必要。

10.2.2.1 逆浸透膜による放射性セシウム除去の現場
試験

恒久的な放射性セシウム対策のひとつとして、浸出水中の
放射性セシウム濃度(Cs134、Cs137 の合計)が数十Bq/L
の浸出水を対象として、放射性物質を物理的に除去・濃縮
する逆浸透膜処理を行い、その除去性能を確認した。本シ
ステムの逆浸透膜は海水の淡水化などで用いられるもので、
ポリアミド系高分子膜のプレート&フレーム型で4 MPa 程
度の圧力で運転しました。図8.4 の通り、2 段階の逆浸透
膜により処理する仕組みになっており、1 段目の逆浸透膜
から濃縮水が、2 段目の逆浸透膜から処理水が出てくる。


分析の結果、浸出水中に74.5 Bq/L の濃度で存在した放射
性セシウムが定量下限以下まで除去されることが確認でき
た。EC や安定セシウムの分析値を見ると、それぞれ99%、
97%の除去率となっており、表10.3 の結果と同様に現場試
験においても高い除去率が得られた。



なお、除去された放射性セシウムは濃縮水中に5.8 倍に濃
縮。この濃縮水に含まれる放射性セシウムについては、吸
着剤により効率的に除去・処分する試験を進めている。

11. 放射能等の測定モニタリング手法
11.1 はじめに
原発事故由来の放射性物質に汚染された廃棄物や福島県内
の災害廃棄物の処理処分を、施設の作業従事者や周辺住民
の被ばくを最小限に抑えつつ円滑に進める上で、廃棄物や
処理施設の放射能を測定し、そのレベルに応じた対応や処
理処分の方法を選択する必要がある。本章では、廃棄物の
放射能等の測定モニタリング手法について概説する。

11.2 放射能濃度等測定方法ガイドライン
指定廃棄物等の保管や特定一般・特定産業廃棄物処理施設
の維持管理に係る空間線量率、放射能濃度の測定・方法は、
環境省の「廃棄物関係ガイドライン」の「第5 部 放射能
濃度等測定方法ガイドライン」にまとめられており(以下、
ガイドラインと呼びます)、平成23年12月に第1 版が発出
され、平成25 年3 月には第2 版に改訂されました。ガイ
ドラインの構成は、測定機器(第1 章)、空間線量率の測定
方法(第2 章)、排ガス(第3 章)や粉じん(第4 章)、排水及
び公共の水域の水(第5 章)、周縁地下水(第6 章)、燃え殻・
ばいじん・排水汚泥・溶融スラグ・溶融飛灰の採取及び測
定方法(第7 章)、溶出量の測定方法(第8 章)となっている。
以下に、各測定対象についての測定方法を概説。


(1) 空間線量率
空間線量率の測定は、廃棄物等の保管や運搬、廃棄物処理
施設の維持管理の際に周辺環境への影響がないことを確認
するために実施する。ここでは、廃棄物等の保管に係る空
間線量率の測定について記す。測定の時期は保管の開始前
(搬入前)、開始後(搬入中及び搬入後)とします。測定地点
は敷地境界線の4 点とバックグラウンド地点の5 地点とす
る。測定高さは地上1m とし、測定場所は周囲1m 以内に木
や建築物がない場所とする。測定機器は1 年以内に校正さ
れたシンチレーション式サーベイメータを使用します。機
器の時定数は十分長い時間(例えば30 秒以上)とし、時定数
の3 倍程度の時間経過して数値が安定した後、5 回数値を
読み取りその平均値を測定結果とします。

(2) 排ガス
試料採取位置は最終排出口と同一組成のガスが採取できる
排出口とします。試料採取はJIS Z 8808「排ガス中のダス
ト濃度の測定方法」に準拠し、円筒ろ紙(または円形ろ紙
)による吸着捕集と吸収瓶による液体捕集を用い等速吸引に
より採取します。採取量は3000 L を目安とします(15 L/分
×240 分)。試料採取後の円筒ろ紙はブランクのろ紙と合
わせて裁断・混合してU8 容器に充填。また、吸収瓶中のド
レン洗浄液は2 L マリネリ容器に充填します。測定は捕集
部(ろ紙部、ドレン部)ごとにゲルマニウム半導体検出器に
よるガンマ線スペクトロメトリーにより行う。検出下限値
は捕集部ごとに134Cs、137Cs 共に2 Bq/m3(N)とする。


(3) 粉じん

開放型の破砕施設では、破砕施設の敷地境界の2 点(風上側、
風下側)でハイボリウムエアサンプラーにより試料を採取。
試料採取量は15 m3 とする(500 L/分×30 分)。密閉型の
破砕施設では、排ガスと同様に、JIS Z 8808 に準拠して
試料を採取。採取した試料の調製、測定は排ガスと同様に
捕集部ごとにゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線ス
ペクトロメトリーにより行うが、開放型の破砕施設はろ紙
部のみの測定となります。検出下限値は捕集部ごとに134Cs、
137Cs 共に2 Bq/m3 (N)としている。

(4) 排水及び公共の水域の水
排水口において、ひしゃく等の採水器具を使用して採取。
採取量は2 L 公共の水域の水は排水中の放射性セシウム濃
度が濃度限度(134Cs: 60 Bq/L、137Cs: 90 Bq/L)を超過し
た場合に採取・測定。排水はU8 容器に、公共の水域の水
は2 L マリネリ容器充填し、ゲルマニウム半導体検出器に
よるガンマ線スペクトロメトリーにより測定。検出下限値
は134Cs、137Cs 共に排水では10~20 Bq/L、公共の水域の
水では1~2 Bq/Lとしている。


(5) 周縁地下水
地下水の流向が分かっている場合は保管場所等の下流側、
不明な場合は最も近い観測井や井戸の水を、べーラー等の
採取器具を使用して採取します。採取量は2 L とします。
試料は2 L マリネリ容器に充填し、ゲルマニウム半導体検
出器によるガンマ線スペクトロメトリーにより測定します。
検出下限値は134Cs、137Cs 共に1~2 Bq/L としています。
(6) 燃え殻、ばいじん、排水汚泥、溶融スラグ、溶融飛灰
試料の採取は代表性に配慮して行い、採取器具としてイン
クリメントスコップ等を使用。堆積した試料の場合は、離
れた4 カ所以上から採取します。コンベア等を流れている
試料の場合は、1 ロットが流れている間に一定時間間隔に
4 回以上採取します。採取試料は全部を1 つの容器に入れ
混合し、最終的に500 g~1 kg 程度とします。試料は適宜
粉砕を行った後に均一化してU8 容器に充填し、ゲルマニ
ウム半導体検出器またはNaI(Tl)シンチレーションスペクト
ロメータ、LaBr3(Ce)シンチレーションスペクトロメータ
によるガンマ線スペクトロメトリーにより測定します。検
出下限値は134Cs、137Cs 共に10~30 Bq/kgとしている。

                    この項つづく
【エピソード】


さて、お花見まで1ヶ月、これから計画を立てます。もう
少し、お持ち下さい。
                     幹事敬白
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1986年に起こった「史上最悪」と言われるチョルノービリ
原発事故の調査を、20年以上にわたって続けてきた放射線
衛生学の専門家である木村真三さんは、史上初めてのプー
チンによるロシアが稼働中のザポリージャ原発への攻撃に
かつてない危機を覚え戦慄したという。


via  Science Media Centre ; expert reaction to Russian claims that a
Zaporizhzhia nuclear power plant accident could spread radiation
across parts of Europe


【脚注及びリンク】
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