猛毒のキノコ「カエンタケ」が、関西で急速に増殖して
いる。奥深い山地にある大木の株に生えるため、従来は
ほとんど人目に触れることがなかったが、ナラやシイな
どが枯死する「ナラ枯れ」が広がるにつれて自生の範囲
が拡大。里山でもカエンタケが生える株が増えている。
1999年に新潟県で、食べた人が死亡した例もあり、自治
体や専門家が注意を呼びかけているという。カエンタケ
は高さ3~15センチ。赤やオレンジ、赤茶色で、人間の
手の指のよう形をし、触るとその後皮膚がただれ、食べ
た場合は下痢や嘔吐、運動や言語の障害を引き起こす。
致死量は3グラムとされている。滋賀県森林センターは
今年8月、同県の大津、野洲、長浜の3市内など5か所
で確認したと発表。兵庫県立人と自然の博物館は4、5
年前から、カエンタケに関する住民の問い合わせが増え
ているというが「ナラ枯れの被害が広がっている地域と、
カエンタケが見つかる地域は重なっている」との指摘(
大阪市立自然史博物館)している。
カエンタケ(火炎茸・火焔茸、Hypocrea cornu-damae)
は、ニクザキン目ニクザキン科ニクザキン属に属する子
嚢菌の一種。日本・中国・ジャワ島などで見られるが、
中央アメリカのコスタリカでも亜種が発見されるともい
う。梅雨期から秋にかけて、ブナなどの広葉樹林に生育
する。通常は地中に埋もれた倒木や枯れた木の根などに
つながり、子実体は鮮かな赤色を呈し、手の平状・炎状・
棒状となり、内部の組織は白色。真っ赤な色と炎のよう
な形から、この名が与えられた。また赤唐辛子のように
も見える。成熟すると黄褐色の粉胞子を吹く。色調も形
態も毒々しいため、食用キノコと誤認されることはまれ
であるが、いくつかの中毒例では食用キノコのベニナギ
ナタタケ や冬虫夏草と誤って摂取されている。ベニナ
ギナタタケは細い棒状で肉質がもろくて崩れやすく、ほ
とんど無味なのに対し、カエンタケは硬い肉質で、内部
の組織は白く苦味がある。
文政年間(1818年-1829年)の植物図鑑『本草図譜』に
「大毒ありといへり」との記述があることから、古くか
ら中毒、死亡事故が知られていた。猛毒菌で致死量はわ
ずか3g(子実体の生重量)と極めて強力。日本では6例
ほどの中毒事例が報告され、計10名の中毒患者が出てお
り、そのうち2名は死亡している。摂取後10分前後の短
時間で症状が現れ初期には、腹痛、嘔吐、水様性下痢を
呈する。その後、めまい、手足のしびれ、呼吸困難、言
語障害、白血球と血小板の減少・造血機能障害、全身の
皮膚のびらん、肝不全、腎不全、呼吸器不全といった多
彩な症状が現れ、致死率も高い。また回復しても、小脳
の萎縮、脱皮、脱毛、言語障害、運動障害などの後遺症
が残ることがあるという。
汁液に含まれる毒成分には皮膚刺激性があるため、手に
とって観察するだけで炎症を起こす可能性があり、味は
苦く、口に含むとひどい口内炎になると言われている。
京都薬科大学の橋本貴美子准教授(天然物化学)は「摂
取すれば全身が真っ赤に炎症し、汁液に触れれば皮膚が
ただれる。キノコ毒の中で最も強い」と指摘している。
その毒成分はマイコトキシンとして知られているトリコ
テセン類(ロリジンE、ベルカリンJ(ムコノマイシンB)、
サトラトキシンHおよびそのエステル類の計6種類)が
検出されている。これらの毒は皮膚刺激性が強いという。
【ナラ枯れとの因果関係】
里山ではナラ類の集団枯死被害(伝染病。ナラ枯れとも
呼ぶ)が拡大し、被害量も増加している。里山は遠目に
はよく茂ってはいるが,病気の大発生という形で不健康
な状況が見えるようになったと言える。各地で被害を減
らす努力が続けられており、防除(予防と駆除)につい
て相談を受ける機会が増えた。しかし、防除の考え方の
問題や無関心のために手遅れになった場所もある。また、
里山整備によってナラ枯れを助長する場合もあり、現在
の保全手法の問題点が明らかになりつつある。
病原菌Raffaelea quercivora(ファエレア・クエルキボ
ーラ)はカビの一種で、体長約5ミリの甲虫カシノナガ
キクイムシがこの菌を枯死木から生存木へと媒介する。
6〜8月枯死木の中で育った多数の成虫が菌を保持して
飛び出し、健康な樹木の幹に穴を開けてトンネルを掘り、
菌を感染させ産卵する。カシノナガキクイムシは木材を
食べるのではなく、孔道内に菌類を繁殖させて食料にす
る(ナラ枯れでは病原菌とは別種の菌と推定されている)。
病原菌は樹幹内でトンネルを伝って伸長、辺材を変色さ
せる。木部が変色するのは、菌に対する樹木細胞の防御
反応で二次代謝産物が生成したためであり、菌はトンネ
ルを利用し迅速に広り、変色部位の道管は通水機能を失
う。カシノナガキクイムシの穿入が多い樹木では辺材の
ほぼ全域が変色し、木部樹液の流動(根から吸い上げた
水の上昇)が停止する。
したがって、人の手の入らないことで、山林が荒れ、害
虫の大量発生などの対応に後手となりナラ枯れが発生→
立ち枯れた木の根元に発生することから「ナラ枯れとの
因果関係は明らかではないが、木の腐朽が進むにつれて、
大量発生は否定できない」と発生しやすい環境にあると
までは言えそうだ。
【エピソード】
なお、自然の成り行き任せろとの意見もあるが、いった
ん、廃してしまうと後は低木が茂るだけの山林となり治
水・利水や景観上好ましくないという意見もあり「地球
温暖化」と「里山」の関係からバイオマス利用促進の営
林を積極的に進めることの方に優先度が高いと思われる。
会員の皆様の意見をお聞きした。
PS、アンケート欄を適宜・適時実施していくことも考え
てみましょう。
【脚注及びリンク】
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1.「ナラ枯れの被害をどう減らすか」
2.「ナラ枯れ被害」林野庁
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