昨晩、学生時代からの友人のNから電話がかかってきた。
最近は長い間会っていないし、電話も1年ぶりぐらいである。
Nは「今日、喪中のはがきが届いたけど…」と切り出し、
「お母さん、亡くなられたんやね。…それはどうも」
…と、弔意を表してくれた。
Nとは大学入学時にオリエンテーションを受けているとき、
たまたま僕の前に座っており、それがきっかけで交友が始まった。
よくわが家に遊びに来ていたので、うちの母もNをよく知っていた。
僕が結婚しても、Nはわが新婚家庭へ邪魔をしに来た(笑)。
お酒を飲んでわいわい騒ぎ、そのまま泊まっていく時もあった。
(酒飲み2人の相手をしてくれた妻には苦労をかけました)
僕が結婚した時、Nは披露宴で友人代表スピーチをしてくれた。
その数年後、今度は彼の結婚披露宴の時に、僕は司会をした。
それから、今度は家族ぐるみの付き合いが始まり、
定期的にお互いの家を訪問し合い、お酒を交わし合った。
Nも、彼の奥さんも、うちの息子たちを可愛がってくれた。
やがてN夫妻にも女の子が誕生し、遊びに行くと喜んでくれた。
それから20数年が経ち、その女の子(A子ちゃん)が結婚した。
その結婚披露宴の席で、僕は来賓の祝辞を仰せつかった。
Nの結婚披露宴の司会をしたのがついこの間のことのようで、
20数年の年月の流れる早さには、驚くばかりだった。
そのA子ちゃんから、今でも毎年年賀状が来るのだけれど、
今年は息子さんたちの、柔道着姿の勇ましい姿が写っていた。
(来年のお正月、年賀状をもらえないのは寂しいなぁ)
「A子ちゃんや、孫さんたちも、元気そうやねえ」と、
Nとの久しぶりの電話での会話で、まずその話をした。
それから、お互いの日常生活について近況報告をし合った。
そして、Nは「そろそろ身辺整理もしなければなぁ」と言った。
なるほど、身辺整理かぁ…。
実は僕も、それが今かかえている課題なのだ。
僕自身も、山ほどある写真や、ずっと書いてきた日記類や、
読書ノート、昔々の自転車旅行記やマラソン日記、
それに、妻との海外旅行を写真と文章でまとめた旅行記など…
中には、僕が北海道自転車旅行中に妻に出した手紙などもある。
20歳の時に、今の妻に当てた手紙をざっと読み返すと、
顔から火が出るほど恥ずかしい。
大阪へ帰り、結婚するまでの間も、僕は妻に手紙を書き続けた。
それを妻がファイルに綴じていて、結婚後、僕に見せた。
だから、そういうものもわが家にあるわけだ。
そういう思い出深い物が、人にはいろいろとあるんですよね。
でもそれらは、いつかは整理しなければならない。
Nが「身辺整理をしなければなぁ」というのも、よくわかる話だ。
ただ、僕は何でも書くことが好きなので手紙や日記が多くある。
でも、Nはそれほど日記を書いたりしていた様子はない。
「身辺整理って、どんなものがあるの?」と僕は尋ねた。
「そうやなぁ、写真とか…他にもいろいろとねぇ…」
…とNは何やら考えながら話を続けるのだが、
突然、こんなことを言ったのである。
「あんたからの手紙も、沢山あるねん」
はぁ? 僕がNに送った手紙が沢山あるって…?
またそれを、今の今まで手元に置いていたわけ…?
「ホンマかいな。いつそんな沢山の手紙を送ったんや」と僕。
「何言うてるねん? 大学の時からず~っとや」と彼は続ける。
「旅行先からの手紙やら海外からのハガキやら、
その外も何やらかんやらと…いっぱいあるで」
僕はそれを受けて、
「あのなぁ、なんでそんなもん、残してるねん。
さっさと捨てたらええがな。もっと大事なもんのこと考えや」
と、伝えたことは言うまでもない。
「捨てるのもなぁ…」とまだNはブツブツつぶやくように、
「なんか悪いような気がして」と言いながら、
「これ、全部あんたに返そか?」なんて言い出した。
「いらんわ」
もちろん、断った。いらんいらん。そんなもん。
「身辺整理」の話が、とんでもない話に発展した。
…まあ、昨晩は、そんな会話を交わしながらの長電話だった。
Nよ。改めて言います。僕の手紙など、さっさと捨ててください。
と言っても…
パソコン嫌いのNは、このブログの存在も知らないしなぁ。