草加市の2024年度予算は、財政難を背景にいくつかの事業が削減・見直しされました。にもかかわらず、予算全体で財政的な余裕がうまれない状況となっています。
いったいなぜか?
主な背景をまとめました。
まずは、草加市の2024年度予算の大枠をおさらいします。
一般会計の予算規模は895億6500万円です。前年度より1.3%増加し、当初予算規模としては過去最高を更新しました。
税収が大きく好転した!訳ではありません。※
様々な財政需要に対応するため、財政調整基金(市の貯金)を過去最大の56億円取崩すなどして歳入を確保したことによります。財政調整基金の残高は実質ゼロとなりました。
なぜ、そこまで歳出がふくらんだのでしょうか。。
少子高齢化などの進展や市民サービスの多様化など、全国の自治体で生じている要因もありますが、草加市の特徴的な要因がいくつかあります。
①過去の行政ミスの清算
はじめに、教育や福祉サービスなど行政にとってのいわゆる”本業”以外の財政出動の影響をもろに受けている点です。
草加市が過去に課税した固定資産税等の誤りにより総額9億円もの還付金(土地所有者への返還)が生じていることや、国民健康保険特別会計における軽減措置の過大交付による8千万円超の返還金、草加市立病院での保険請求上の過誤に対する1億5千万円超の返還金など、過去に草加市が起こした問題やミスによる多額の清算が市全体の財政運営に影響を与えています。また、国に翻弄されるかたちで、障がい者相談支援事業等の過年度消費税として3千万円超の支出も2024年度に予定されています。
②広域行政のハード整備
東埼玉資源環境組合(リユース)では現在、越谷市にあるゴミ焼却場の更新に向けた検討が進められています。そのため、同組合を構成する5市1町では2024年度から分担金が大幅に増加していくことになっています。草加市の分担金は2023年度の約7億5千万円から、2024年度は約11億8千億円まで増加しています。また、草加八潮消防本部の建てかえも進められています。これら広域行政にハード整備にともなう財政負担が急増する時期に入りました。
③まちづくりや公共施設更新の財政出動
直近では、草加市役所新庁舎の建設が実施されました。その借金返済などが大きな財政負担となっています。2024年度予算では、利子を含めた公債費(借金返済額)が67億円超。
また、現在進められている新田駅東西口の区画整理や保育園耐震化、今後予定されている市北東部スポーツ施設整備や栄中学校建てかえなどで、市債(借金)を含む多額の財源が必要になっていきます。現時点における草加市の試算では、市債残高のピークは2023年度末で約684億円となり、公債費のピークは2028年度で約70億円にもなる見通しです。
■厳しい局面を乗り越えるために
予算編成が困難になった背景には、これら財政負担が一気に重なった側面があり、結果として予算規模が膨らんでいるような状況があります。
これまでの行財政運営の計画性に課題はなかったのか、やるべき事業を先送りした結果、次から次に進めないと間に合わなくなってしまったのではないか、そういった検証も重要です。この局面をどう乗り越えるか、その中で将来の行財政運営にどのような教訓を導き出せるのか、議論を進めていきます。
また、注意しなけらばならないのは、予算編成が厳しい➨お金がない➨なんでも削減といった過度な議論に走ってしまうことです。市民サービスと財政のバランスは重要ですが、これら財政需要の増加は、①のように短期的なものや、施設が完成すれば負担が減っていくものもあります。「予算編成の財源が厳しい」と「財政力」もイコールではありません。財政の硬直化や厳しい財政状況のもと、様々な影響を受けながらの市財政運営を進める難しい局面。市長や行政職員、私たち議員の力がこれまで以上に試される局面です。ともに議論を重ねて危機を乗り越えていく市政運営が不可欠です。
※市税収入の状況
2024年度予算、税収の根幹である市税収入は377億円です。国の定額減税による影響で前年度より2億8千万円減少を見込んでいますが、給与所得の増加や、所得200万円(課税標準額)を超すすべての所得段階が増え、本来の個人市民税収は増収見込みです。ただし、市が把握できる情報だけでは詳細な分析は困難なため、純粋に雇用・経済環境が好転したというより、年金だけで生活できず仕事を始めた高年者やダブルワークを始めた方、共働きとなった家庭などが増えたことなどが背景にある可能性もあります。なお、法人市民税収は、製造業や卸売・小売業などを中心に減収見通しとなっています。
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