草加市の令和4年度予算について、市議会の討論を概要版にまとめました。
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令和4年度 草加市予算の討論概要
<一般会計予算>
■歳入
➊ 総額
・令和4年度予算は、一般会計893.8億円
・特別会計や企業会計などを含めた総合計は1666.9億円
➔新庁舎建設や区画整理、福祉関連費用、新型コロナ対策などにより過去最大規模に
➋ 市税
・市税総額は369.9億円で、前年度当初より24億円増を見込んでいます。
・個人市民税は9億円増の156.9億円です。製造業や卸売・小売業をはじめすべての業種で増額を見込み、法人市民税は約1.7倍もの増収見通しです。
➔市民税収が好転したのではなく、コロナの影響が見通せないなかで組まれた3年度予算より持ち直した状況で、コロナ前の令和2年度には達していません。あくまでコロナ前の水準に戻りつつある段階であり、今後の市民生活や地域経済を支える政策が重要となります。
➌ 埼玉県の補助金
県の「飼い主のいない猫の不妊・去勢手術推進事業費補助金」が3年度をもって終了しました。3年間受けられる制度で、草加市は平成30年度から令和2年度まで受けました。3年度は、新型コロナにより申請自治体が少なかったことから1年延長されました。4年度は市が再延長を要望したものの、打ち切られたとのことです。
地域猫活動を支援し、野良猫問題の解決につながる重要な事業です。その支援を数年実施しただけで打ち切り、あとは自治体任せにする「県の姿勢」を批判すると同時に、補助金が打ち切られても市財源で予算を維持した草加市の姿勢を評価するものです。
➍ 基金と借金
・基金の年度末合計残高は約46億円で、前年度末より78億円減る見通し
・一方、市債の年度末合計残高は約732億円で、16億円増加する見通し
➔市の予算編成は厳しさを増しています。市債を有効活用しながらもバランスある財政運営を進めるよう求めます。
□歳出
①危機管理
福祉避難所および第4避難所となる獨協大学に、避難所内で飛沫感染を防止する折り畳み式パーテーションや、簡易トイレ用ワンタッチテント、災害用特設公衆電話などが配備されます。また、4年度は草加小学校、高砂小学校、谷塚小学校および谷塚中学校に応急給水栓が整備され、未整備校は8校となり7年度までにすべて完了する計画です。
②市役所新庁舎
令和5年5月のゴールデンウィーク後に仮オープン予定です。新庁舎にあわせて職員の身分証明書がICカードに切り替わり、セキュリティ強化や入退庁管理など改善されます。第2庁舎利活用や、お悔やみコーナー、ワンストップ窓口など、これまで要望されてきた機能向上が図られるよう求めます。
③ドローン
職員3人程度を操縦士に育成する費用と検証用ドローン購入費として約104万円が計上。観光PR映像などで活用し、本格的なドローン購入も検討していくとのことです。厳しい財政状況のもとで税を投じる新規事業。市民に効果が見える事業となるよう指摘します。
④町会・自治会
令和4年1月1日の加入率は47.72%で前年より1.19ポイント減。新型コロナにより活動が制限され、町会を知る機会も極端に減少しています。これまで以上に、地域コミュニティを支える諸団体に寄り添った支援策が求められます。
⑤スケートボードパーク
スケボーパークの基本構想策定委託料500万円が計上され、「場所も含めて検討する」との答弁がありました。5千㎡の敷地に、1500㎡のスケートボード場や管理棟、駐車場などを整備する事業です。場所を含めて検討と言っても、この規模で近隣に住宅がない市の土地は他にありません。委託業者にお金を払っても見つかりません。土地を買う余裕もありません。
市として賛成・反対いずれの意見にも寄り添い、協議を重ねることで答えを導きだす努力が必要ですが、市が場所を含めて検討となれば「現予定地にはつくらない」といったメッセージに繋がってしまいます。事業を円滑に進めるどころか、問題を複雑かつ困難な状況に追いやってしまうのではないでしょうか。
スケボーパークは、県との産業団地整備の協議の中で、草加が提案した事業です。県が2年度末までに整備する予定でしたが実現できず、協定見直しで市の整備に変わりました。ようやく基本構想を策定すると思ったら、候補地を検討するとのことで、振り出しより前に戻される状況です。行政運営としてあまりにもお粗末であると指摘せざるを得ません。
⑥産業・観光
・第2次産業強靭化戦略として、令和4年度もプレミアム付き商品券や地域経済活性化事業、経営革新チャレンジ支援事業補助金などが実施されます。
・草加駅高架橋の耐震補強工事にともない、物産観光情報センターが9月に閉館します。物産機能は新庁舎などに分散され、観光案内所を草加駅周辺に設置する予定です。
⑦福祉関連
・国の新たな福祉施策
4年度から、国の法改定による重層的支援体制整備事業が始まります。政府は、社会的孤立や8050問題、ダブルケアなど個人・世帯の複数の課題全体に対応できる支援体制の構築を自治体に求めています。地域福祉分野では、参加支援事業と地域づくり事業の委託料が計上されました。聞こえはいいですが、実際何をどうするかよく分からず非常に抽象的です。専門的な知識や経験、各機関との連携が求められる事業のコーディネーターも1人だけです。
コミュニティソーシャルワーカーも、3人体制のままで増員の流れが途切れています。必要な人材の確保と育成が重要であり体制強化を求めます。
また、重層的支援体制整備事業により、介護保険特会の3事業が一般会計に移行します。障がいや子どもなどの事業と一体的に実施するためとしています。事業内容に変更はないとのことですが、すべてまるっと包むことで、市が網目のように張り巡らせてきた個々の施策が形骸化しないか懸念されます。市職員の能力や質の低下も危惧されます。
国の大きな流れのなかでも、住民の福祉増進に向けた市の軸足を定める議論を庁内で活発に進めていただきたい。そして、重要な課題である福祉労働者の処遇改善にも目を向けていただきたい。この点、要望します。
・障がい
「つばさの森」で重症心身障がい者を含めた生活介護事業が整備されます。令和4年度は基本構想と基本計画を策定。その後に改修工事などが行われ、8年度から受け入れ開始予定です。非常に重要な施策であり、一日も早く整備されるよう求めます。
・生活保護
保護率は減少傾向にありましたが、令和元年度の1.56%を底に、2年度は1.58%、3年度は1.6%とコロナにより増加に変わりました。住宅確保給付金も2年度が申請194件、決定189件で前年度の25倍に増え、4年度も292件の申請を見込んでいます。ギリギリのところで生活されている市民が増えている証拠でもあります。現状に即した支援策を。
⑧駅ホームドアの設置
世界的な半導体不足により大幅に遅れていましたが、ようやく4年度に獨協大学前<草加松原>駅に設置されます。谷塚、草加、新田駅は5年度以降に順次設置していく予定。
⑨防犯・交通安全
青パトが1台増強し、警察OBの巡回指導員による小学校や保育園周辺のパトロールを強化することで、子どもたちの安全確保が向上します。
埼玉県の「第5期 通学路整備計画」に基づくに通学路の安全対策について、草加市は149箇所を実施します。令和4年度からの5カ年計画ですが、すでに3年度に42カ所を実施し、4年度は47カ所の安全対策を講じます。
⑩ゼロカーボンシティ
東南部5市1町の「ゼロカーボンシティ共同宣言」を受けて、ゼロカーボンシティ推進に向けた講演会を文化会館で実施する予定です。予算を投じた具体的な施策を。
⑪リサイクルセンター
昨年5月に起きたリサイクルセンターの火災事故にともなう復旧工事が完了し、今年1月から機械による処理作業がおこなわれています。再発防止策として、分別したものは毎日搬出し、搬入制限時間に間に合わない収集車両は瀬崎仮置場に一時搬入するなど、センター内に「溜めない、残さない」処理作業を実施しています。再発防止策の強化を。
⑫草加駅東口の駅前広場工事
3期工事として、令和4~5年度の継続費2億8204万円が計上されました。4年度に40%の1億1814万円、5年度に残りの60%が計上されています。質疑したところ執行部は「どの場所から工事を進めていくか決まっていない」「資材など準備に費用がかかるため40%は全て前払金」「4年度中の進捗にかかわらず40%を事業者に支払う」「仮に出来高が40%を超えても、それ以上払わない契約になっている」と、誤った答弁を繰り返しました。
その後、執行部から答弁訂正がありました。市の契約規則および公共工事前金払取扱要綱では、4年度予算の4割まで前払金が払える規定となっています。事業費全体でいうと16%です。つまり、4年度予算のうちの約7千万円までは前払いできますが、残りの約4700万円は出来高払いにしなければいけません。
ところが、執行部は、4年度予算の満額1億1814万円を出来高に関係なく前金で払うと答弁していました。
ルール無視の予算執行という深刻な問題につながっていたものです。基本を正しく理解し、自分たちが計上した事業を自分たちが正確に説明できるよう指摘します。
⑬教育
・予算規模
令和4年度の教育費は、前年度より2.8億円減の60億円
➔借金返済などの公債費65億円を下回りました。市教育委員会の重要な事業である学校建てかえなどを実施しないことが一番の要因。将来への投資である教育予算引き上げを。
・タブレット授業
3年度は接続可能人数を150人程度まで改善するなどしました。しかし、活用面でオンライン授業やその改善速度が、保護者の期待と乖離している現状があります。教育委員会が主となり素早く改善させていくよう求めます。
国はタブレット導入時だけ多額の支援をおこないましたが、年3817万円ものランニングコストは草加市負担です。自治体の財政力任せで、国のギガスクール構想は発展するでしょうか。支援策を国に働きかけるよう要望します。
・学校栄養士
短時間勤務職員2人を増員し、市費栄養士が9人になります。これにより、例えば花栗中学校区の花中と小山小、花栗南小学校の3校を栄養士2人で対応するチーム体制が3中学校区でとられます。複数校兼務が解消され、アレルギーのサポート体制も充実します。
・中学校の放課後学習
市長の施政方針で、学力向上に関する取組として中学校放課後学習事業が掲げられました。しかし、同事業は元年度と2年度に3校で実施されましたが、3年度は予算枠が絞られてしまい「市内学力テスト」か「放課後学習」かの二択に迫られ、やむなく廃止された事業です。4年度に復活するといっても、内情は教育の継続性を断ち切り、これまで同様の3校だけです。言葉と実態に違和感しかありません。
・特別支援学級
令和4年度、小中学校の自閉症・情緒障がい特別支援学級は234人で、10年前より3.8倍、172人も増えています。増加傾向にある現状を踏まえながらも、一人一人に寄り添った教育を充実させていくよう求めます。
・施設整備
体育館へのエアコン設置が4年度に全校完了予定です。また、屋外トイレなどの修繕を5年度から実施する見通しが明らかとなりました。少年野球やサッカーなどの学校開放で使われている屋外トイレは、和式で古く、網戸もプライバシーも十分でないことから改善を要望してきました。可能な限り早く取り組むよう求めます。
⑭保育関連
・保育士不足
待機児童問題の要因のひとつである保育士不足について、公立保育園の園長を除く正規保育士は231人で、前年度より2人増える見込みです。一方、会計年度任用職員は48人で7人減る見通しです。非正規の処遇改善を含めた保育士確保策を進めるよう求めます。
・施設整備と耐震化
公立保育園のうち4年度は「ひかわ」と「せざき保育園」の耐震補強工事がおこなわれます。未実施の残り2園のうち、にしまち保育園は5年度に、しんえい保育園は6年度に耐震補強を予定。ようやくゴールが見えてきました。また、松原児童青少年交流センター(10月オープン)や、あおば学園(6年1月オープン)の建設工事が進められています。
・子育て支援センター
児童虐待に対する支援などを充実させるため、センター内に子ども家庭総合支援拠点が開設されます。職員のスキルや体制強化、施策の充実等を図っていくよう要望します。
・児童クラブ
待機児童対策として氷川第二児童クラブが1クラス増える予定です。12月議会で求めた瀬崎小学校プレハブ棟の解体予算が計上され、プレハブ内で実施している瀬崎児童クラブは学校内に単体施設が建てられます。施設整備や待機対策を求める声が寄せられている谷塚児童クラブなども、必要な施設整備を進めていくよう求めます。
⑮職員
令和4年4月1日付けの市全体の職員数は1958人で、前年度より57人増員され、情報推進課や健康福祉部関連、保育園保育士などへの配置予定です。
一方、障がいのある方を対象とした令和3年度の採用試験は採用ゼロです。障がい者雇用率も3年度は1.60%で前年度より0.07ポイント減です。市役所が法定雇用率を守れていない状況を改善するよう指摘します。
令和4年2月から国のコロナ対応により、保育士や児童クラブで働く会計年度任用職員への処遇改善を実施しています。草加市では対象外となる児童館なども対象にし、補助金が切れる10月以降も恒久的な給与として支給します。しかし、正規と非正規の大きな処遇格差があります。事務職では、会計年度任用職員の平均年齢は49.1歳で平均年収211万9千円です。正規職員は大卒1年目で年収306万4千円で、94万5千円もの開きです。
また、人材確保の競争が過熱するなか、公務員を目指す学生だけでなく多くの就活生から応募してもらえるよう、職員採用試験を民間企業の試験方法に移行し、新卒採用サイトにも広告を出していくとのことです。
求める人材を安定的に確保・育成するためにも、積極的な職員確保策や処遇改善を推進していくことと併せて、草加市役所で働きたいと思われるような職場環境の改善、公務労働者としての志と努力が公正に評価される市役所となるよう強く求めます。
<国民健康保険予算>
令和4年度は国保税の値上げが延期され、「赤字削減・解消計画」の見直しを実施する予定です。
一般会計から国保会計への法定外繰入額は、平成30年度が約2億万円、令和元年度は5億万円、2年度はゼロ円です。また、2年度は国保税引き上げや収納率向上、新型コロナの影響などにより8億円を超す黒字決算でした。赤字は既に解消された段階にあります。
今後、県の標準税率の取り扱いの課題もありますが、そもそもの高過ぎる保険税に向き合わなければ根本的な解決になりません。非正規や年金者の方が多く加入されている国保加入者の負担増とならないよう求め賛成します。
<介護保険予算>
令和3年度から、所得第6段階以上の住民税課税者が、おむつ支給対象から外されました。市議会では、対象外となった方へのおむつ支給を一般会計で実施するよう求める決議が、3年2月定例会で可決しました。
市は検討の結果、要介護1から5の認定を受けていれば、所得135万円以下の方は住民税非課税に該当し、国基準のおむつ支給対象者と同等と判断したことから、所得135万円以下の方までを新たに支給対象にするとのことです。対象外となっていた77人のうち、20数人が新たに対象となる見込みですが、50数人は対象外のままです。これでは、国の制度の隙間を埋めるだけであり、議会決議が求めたものと乖離しています。予算審議で、元に戻しても国からペナルティが課されることは無いと明確に答弁されています。
決して生活に余裕のある所得層ではなく、重い介護状態の方からおむつをはぎ取り、所得制限を新たに設けて複雑化させるのではなく、従来の基準を復活させるよう求めます。
<後期高齢者医療保険予算>
4年度と5年度の保険料が、所得割は0.42ポイント増の8.38%、均等割は2470円増の4万4170円に引き上げられる予算であり反対します。
<市立病院予算>
新型コロナの影響で予算が見通せない状況が続いています。4年度は、コロナ対応の影響を受けている3年度の実績ベースをもとに、病床利用率を8ポイント増の76%と見込んで積算されました。一方、国や県などからのコロナ関係の補助金については見込んでいません。
4年度はコロナ関係の補助金が不透明なことから9億円の赤字・純損失見通しとなっています。3年度は、国や県からの大規模なコロナ対応の補助により、純利益が税抜き約7億円予想に変わりました。2期連続(2年度は同14.5億円)の黒字です。病院財政が改善しているかのように見えますが、本来の病院経営はコロナ以前と変わらず深刻な状況にあり、再建策を進めるよう指摘します。
以上