自治体の財政構造の弾力性を測るものさしである経常収支比率。1969年以降の草加市の推移をまとめました。
■はじめに…経常収支比率とは
2022年度における草加市の経常収支比率は前年度比8.4ポイント上昇(悪化)の96.3%に達しています。
この経常収支比率をお家で例えると…毎月の給料と比べて、食費や家賃、水光熱費などの生活費(経常的な経費)の割合が大きくなると、家計に余裕がなくなってしまいます。急な出費が必要な時などに対応できなくなってしまいます。同じように、草加市の財政も、災害時などの突発的な対応や自由な財政運営ができる弾力性を確保しておく必要があります。それを測る指標が経常収支比率です。
草加市の場合、家計の生活費にあたる経常経費が、地方税や交付税などの経常的な収入の96.3%も占めています。経常収支比率が高い=財源に余裕がない状況で、財政構造の弾力性が低い「硬直化」していると言えます。
【グラフ】草加市の経常収支比率の推移
■県内平均を上回り上昇傾向続く
グラフを見ると、経常収支比率は昨年度だけグッと下がっています。その主な理由は、国の決算見通しに伴う地方交付税の追加交付(※)により、自治体が自由に使える地方交付税が増えたことで、経常収支比率の分母も大きくなったからです。全国的に生じた状況です。
そのため、昨年度の一時的な低下を除けば、年々、経常収支比率は上昇傾向が続いています。財政が一層硬直化しています。
また、埼玉県が公表した「県内市町村の令和4年度普通会計決算概要(速報)」によると、経常収支比率の埼玉県内市平均は93.6%で前年度より4.1ポイント上昇したとのことです。草加市は96.3%で、県内平均を2.7%上回っています。
(※)臨時財政対策債の上限引き上げにより実施
■1975年の埼玉県財政非常事態宣言を超える水準
1969年以降の経常収支比率の推移を見ると、1975年(昭和50年)に草加市の経常収支比率が90.9%まで上昇しています。
草加市史によると、1974年(昭和49年)に超過負担が歳出決算額の5.3%、市税の10.3%を占める状況まで悪化しました。翌1975年、経常収支比率が90.9%まで上昇。1977年(昭和52年)には、経常収支比率85.6%で県3位に悪化したと記されています。その主な要因は、義務的経費のうち公債費・人件費の伸びとされました。
当時、埼玉県においても1975年7月に畑知事(当時)が県財政非常事態宣言を出すなど、財政悪化が全体的な課題となっていました。
現在の草加市の財政状況は、県財政非常事態宣言の当時をさらに超える財政構造の硬直化(経常収支比率の上昇)に直面しています。
■財政再建と市民サービスの両立へ
財政収支比率=財政構造の硬直化の改善が喫緊の課題となっています。
ただし、経常経費は市民サービスの維持に必要な経費であり、財政構造を弾力化させるために市民生活に直結する経常経費をただ削減させれば良いという訳でもありません。また、経常収支比率が高いことは、その自治体がそれだけ市民のための経常的な独自施策をおこなっているという側面もあります。
市民の暮らしや命に直結する施策を守りながら、財政再建を目指していく。そのためには、どこに軸足をおき、どう財政のバランスをとるか、みんなで考えていくことが重要です。