2020年9月定例会で、市民共同議員団を代表して斎藤雄二議員がおこなった2019年度決算討論の概要です。
[1]全体の財政状況
令和元年度の一般会計および特別会計を合わせた歳入総額は、前年度より約43億円増額の1278億6755万円、市税収入は前年度より約5億円の増額の375億3195万円でした。ともに草加市政始まって以来の過去最高額です。
全会計の市債残高は、平成16年度末に過去最高額の約1425億円まで膨れ上がりましたが、毎年削減に取り組んできた結果、元年度末は約1005億円まで削減されました。また、一般会計における各種基金の残高合計は、前年度より約5億4854万円増額の136億6609万円となりました。草加市の財政力が伺える決算となりました。
一方、収支状況の悪化も顕著に現れた決算となりました。一般会計の「単年度収支」は約8億9387万円の赤字、「実質単年度収支」は約7457万円の赤字となり、いずれも前年度の黒字から赤字に転落しました。経常収支比率は前年度の94.8%から、元年度は96.5%に上昇し、収支状況の悪化と財政の硬直化がより一層厳しさを増していると言えます。
なお、元年度の臨時財政対策債の利子も含めた元利償還額は約26億5360万円にのぼりましたが、普通交付税収は約24億4452万円で臨時財政対策債の償還額以下でした。臨時財政対策債は、実質、草加市の負担で臨時財政対策債の返済をしているようなものであり、国の地方交付税の在り方を指摘するものです。
[2]一般会計決算の歳入概要
市税収入が過去最高額を更新した主な理由として、全体の納税義務者数が前年度比1.3%増となったことや、1人当たりの給与所得金額が前年度比約3万5千円増の332万4649円に増加したことなどがあげられます。一方、法人市民税は、製造業で自動車や半導体製造装置関連の企業の業績が下降したことなどにより減額となりました。
また、消費税が元年10月1日から10%に引き上げられました。国からの振り込みにタイムラグがあることにより、元年度に顕著な影響は生じていませんが、元年度に草加市が受け取った地方消費税交付金は約39億3千万円で、支払った消費税はおよそ24億7千万円です。令和2年度以降、消費税の影響に注視する必要があります。
[3]一般会計決算の歳出概要
「市長の政治倫理調査特別委員会」で指摘されている福島県昭和村からむし織の里フェアやカーソン市への訪問に係る市長の問題について、予算執行の在り方や随行職員の職責など問題があったと指摘せざるを得ません。今後の改善を強く求めます。
防災:防災行政無線が聞こえない、改善してほしいとの要望に対して、元年度は北谷地区の1か所に音の伝わり方が異なる市街地に適したスピーカーが設置され、聞こえ方が改善されました。また、元年度の台風15号や19号を踏まえて、避難所の備蓄食料や簡易ブランケット、自動梱包式トイレ、蓄電池などの整備が進められました。避難場所となる小・中学校への応急給水栓の設置について、新栄小、八幡北小、川柳小学校および両新田中学校に設置されました。計画通り令和7年度完了に向けて着実に整備していくよう要望します。
また、小中学校の体育館へのエアコン整備について、令和2年度に工事をおこなう高砂小、谷塚小、小山小、長栄小学校および草加中、川柳中、新田中学校の実施設計がおこなわれました。教育環境及び避難場所環境の向上につながるものです。
本庁舎建て替え:新庁舎建設に伴う旧本庁舎等の解体や事後調査、新庁舎の基本・実施設計などが進められました。庁舎建て替えに伴う民間ビルによる執務スペースや駐車場などの確保に年間約1億79万円の賃料などが生じています。近隣住民への丁寧な対応や円滑な事業推進を求めます。
人件費:平成31年4月1日の正規職員は1805人、臨時職員は1026人で、臨時職員の割合は36.2%です。一般会計職員のうち、元年度は保育園等の保育士29人、生活支援課3人など合計44人の増員が図られました。正職員1人当たりの人口は前年度の214人から、元年度は207人に改善されましたが、人口に対する職員数が県内2番目に少ない自治体のままです。まずは県平均176人までの職員増員を目指すよう指摘します。また、一般会計職員に占める女性職員の割合は46.3%ですが、課長級以上に占める割合では9.3%に減少します。
障がい者雇用について、元年度から、これまで身体障がい者に限定されていた採用試験が、障がいの区分にかかわらず応募・受験できるよう改善されました。個々の障がいに応じた働きやすい環境への対応や、障がい者雇用率の達成に向けて取り組んでいくよう指摘します。
ケースワーカーについて生活保護など5人の増員が図られました。ケースワーカー1人当たりの生活保護世帯数は84.6世帯となり、県内40市中少ないほうから19番目まで改善されました。毎年増員を図ってきた市の姿勢を評価し、さらなる増員を求めます。
保育士について、正規保育士は前年度より26人の増員が図られました。保育士採用の対象年齢拡大などの改善策を進めてきた結果です。一方、臨時保育士の確保が課題となっています。その背景には、正職員の年間平均給与約573万円に対して、臨時保育士は年収277万円であり、倍以上の賃金差が生じていることなどがあります。積極的に増員した保育士の育成と、臨時職員の確保に向けた処遇改善策などを進めるよう求めます。
文書管理システム:文書管理システムが本格稼働し、起案文書が電子決済化されました。新型コロナ対応では、決済のための職員間の接触が避けられるなどの効果が発揮されています。公文書の適正管理に努めることと併せて、市の事務手続きに即したシステムに改善していくよう指摘します。
公用車:元年度は電動アシスト付き自転車が5台購入されました。また、公用車の運転に慣れさせることを優先するため、これまでのドライビングシミュレーター研修を辞め、実際の公用車を使っての自主運転研修に切りかえられました。運転に不慣れな職員が増えている中、公用車の事故防止の取り組みが評価されます。
プレミアム付商品券:消費税10%への引き上げによる景気低迷を避ける対策として、全国でプレミアム付商品券事業が実施されました。しかし、対象者を、税率引き上げの影響を受けやすい扶養外非課税者および3歳未満の子育て世帯に限定したことで、商品券の購入率が約70%にとどまりました。購入する現金を用意することがそもそも困難だった状況などが想定されます。プレミアム商品券事業の在り方についての今後の教訓とするよう求めます。
まちづくりや創業支援:リノベーションスクールで提案された空き物件等を活用する事業について、元年度までに11案件中9案件が受講生の方々により事業化されました。さらに、リノベーションまちづくりを支援しようと、「さいしんまちづくりファンド」が設立されファイナンス面も強化されました。今後、谷塚エリアへの展開なども想定されており、草加全体の活性化につながっていくよう期待します。
草加市の創業支援事業により、これまでに134人が実際に創業されました。女性創業スタートアップ事業では79人もの方がご自身のペースで創業され、98.8%の非常に高い創業率となっています。市内商工団体などと連携した創業後の支援のさらなる充実を求めます。
生活保護:平成30年10月から3か年かけて、現行の扶助基準額からマイナス5%以内とする緩和措置を行う生活保護基準額の引き下げが進められています。令和2年度は、児童養育加算について、支給対象が中学から高校まで拡大された一方で、子ども1人当たりの加算が3110円引き下げの1万190円に減額されました。また、母子加算も1000円引き下げの1万8800円に減額されました。子育て世帯の生活をより苦しめるものであります。
生活保護全体としては、生活保護受給者の高齢化などにより介護扶助や医療扶助が増加しています。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、経済停滞による失業や収入減などによる生活困窮世帯の増加が複数年にわたって予想されます。ケースワーカーのさらなる増員による個々のケースに即したより丁寧な支援や、まるごとサポートSOKAの体制強化など生活困窮世帯への支援拡充を求めます。
コミュニティソーシャルワーカー(CSW):元年度は1人増員され2人体制となりました。電話や来所などで受け付けた相談件数は30年度の981件から、元年度は3116件と大幅に増加しています。人口25万人の自治体で2人体制では間に合いません。CSWのさらなる増員と待遇改善を求めます。
保健センター:「にんしん出産相談室ぽかぽか(草加市子育て世代包括支援センター)」の開所に向けた準備が進められました。母子手帳の交付を一括して行うことで、妊娠期からの支援や把握、関係機関との連携をより一層はかれるようになります。また、3歳3か月児健診で弱視の危険因子となる斜視などをスクリーニングする「スポットビジョン」が導入されました。導入前の30年度の要精密検査者は51人(2.8%)でしたが、導入後の元年度は153人(9.2%)に増加しました。引き続き、乳幼児から高年者まで市民全体の健康づくりの各種事業の充実を期待します。
こども医療費無料化:令和2年度からのこども医療費の18歳までの無料化に向けたシステム改修などが実施されました。引き続き、通院分の拡大も含めた制度拡充を検討するよう求めます。
障がい:中川の郷について、元年度は、通園事業の定員を現行の5人から10人へ、短期入所事業を2床から5床へ拡充する増築工事が実施されました。平成29年に開所した「障がい者生活介護事業所そよかぜの森」については、利用者が年々増加しています。とくに、1階の重症心身障がい者は14人まで増えてきており、今後数年内にスペースが埋まりかねない状況です。重症心身障がい者の通所施設の増設や拡充について検討するよう指摘します。
保育所等:元年10月から、幼児教育・保育の無償化がスタートしました。草加市の幼稚園や保育所ニーズへの影響については、市が実施している幼稚園の長時間預かり保育に対する補助の延べ利用数が、前年比2万3820人の増加であったことや、過去10年間で800人以上減っていた草加市在住者の園児数が、元年度は前年比35人増加に転じたことなどから、無償化により保育の必要がある3歳児以上については、幼稚園への選択が広がったことが伺えます。また、保育所等についても、3歳児クラス以上の年度当初の在籍数が前年比38人増加したにもかかわらず、入園保留園児が前年比18人増となっていることから、幼稚園同様に3歳児以上保育ニーズが高まったと考えられます。
待機児童対策について、元年度は民間認可保育所2園の増設などが進められましたが、年度当初の待機児童総数は前年度比19人増加の271人となりました。また、正規の保育士確保などが積極的に行われていますが、依然として、保育士不足により公立保育園12園1分園で合計189人もの定員割れが生じています。前年度より48人の増加です。引き続きの待機児童対策を求めます。
たかさご保育園建設の基本・実施設計や、しんぜん、しのは、やはた保育園の耐震補強工事が実施されました。対象となる19施設中12施設の耐震化が完了しています。引き続き耐震化の推進を求めます。
児童クラブ:元年度の入室申請は前年度比136人増の2403人、待機児童は前年度144人増の548人、待機児童のうち第2児童クラブに543人が入室しました。第2児童クラブ入室者のうち3年生以下は126人で、前年度より75人増加しています。早急な対応と児童クラブの増設を求めます。また、本体の児童クラブの正職員は前年度比9人減少の54人です。保育の質の向上や公的責任の強化、職員の処遇改善、支援員不足の解消に向けて、引き続き、市から社会福祉協議会に働きかけていくよう求めます。
子育て支援センター:児童虐待担当の職員が2人増員され6人に、児童デイサービスセンターの正規保育士が1人増員され4人となるなど職員体制が強化されました。これにより、ケースワーカー1人当たりの児童虐待ケース数が前年度の112件から72件に改善しました。
また、「子育て応援情報サイトぼっくるん」の充実を図るなかで、アクセス数が29年度約28万件、30年度36万件、元年度40万件と増加し続けています。結果として、子育て支援コーディネーターに多く寄せられていた子どもの預け先や遊び場などの情報を「ぼっくるん」で確認できるようになり、コーディネーターの相談対応の改善に繋がっています。子育て支援センター全体の取り組みがうまく連携し合い、市民サービスの向上や利便性の向上が図られているものであり評価されます。
パリポリくんバス(コミュニティバス):元年度は新田ルートの運行が開始されました。また、試験運行5年目の運行評価の基礎資料とするためのコミバス利用状況調査が実施されましたが、年度末から新型コロナによる利用者数への影響も生じています。収支率にも大きな影響を及ぼすものであり、試験運行5年目の運行評価は新型コロナの影響も加味して慎重に検討するよう指摘します。
教育:元年度、教員に占める臨時的任用教員の割合は、小学校は6.7%で前年度より1.8ポイント改善しましたが、中学校は14.2%で4.3ポイント増加しています。また、特別支援学級における割合は、小学校47.7%、中学校48.5%と高い状況が続いています。引き続き市教育委員会から県教育委員会に対して改善を求めるよう要望します。
学校施設について、元年度は特別教室および給食室にエアコンが設置されました。特別教室は、電気式19校120教室、ガス式10校68教室。給食室は、電気式14校、ガス式9校にエアコンが設置されました。トイレ改修も順次進められ、対象となる27校63棟のうち、小学校16校37棟、中学校1校1棟が完了しました。小学校については全校完了となります。また、小中学校の非構造部材耐震化工事及び、雨水貯留量1500立方メートルとなる新栄中学校校庭の雨水貯留施設改修工事、川柳中学校の大規模改修工事が完了しました。学校施設の個別施策計画を早急に策定し、学校の計画的な建てかえと、その計画に基づく施設環境改善策を進めていくよう指摘します。
[4]草加市立病院
これまでも繰り返し市立病院の厳しい運営状況について指摘し、抜本的な経営改善策と一体で、必要な繰入れをすぐにでも実施するよう求めてきました。ようやく今回の補正により、市立病院に3億5千万円の法定外繰入れを行うとのことです。
しかしながら、市立病院で試算した令和2年度末の現預金残高は6億2900万円のマイナスを見込んでいます。6億円のマイナスも、新型コロナの影響がこれ以上拡大せず、7月以降の医業収益を経営努力により1割以上増収させたと想定しての金額です。状況によってはさらに大きな不足額が生じる可能性があります。また、今回の3億5千万円の繰入額自体ではまず足りない点も指摘します。
そもそも、新型コロナが拡大する以前から市立病院の経営悪化と資金不足が生じることは指摘してきました。いずれ新型コロナが収束したとしても、財政悪化の度合いがいくらか和らぐだけで、悪化傾向は変わりません。もちろん、レセプト見直しなどにより外来1人1日当たりの診療収入が前年度の1万5909円から、元年度は1万6996円に増加するなどの経営改善策の一端が元年度決算で現れていますが、根本的な解決には至っていません。
草加市立病院は「存続」という問題に直面している段階にあるといっても過言ではありません。10億、20億という法定外繰入れを毎年行うような事態とならないよう設置者責任において抜本的な市立病院の経営改善策を進めるよう指摘します。