殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

現場はいま…その後・4

2023年05月21日 20時13分12秒 | シリーズ・現場はいま…
私の住む広島県では、今日までG7・広島サミット。

うちは会場の広島市内とは離れた田舎だけど

ゴールデン・ウィーク明けあたりから他県の県警のバスが続々とやって来て

何だか物々しい雰囲気だったわ。

この真剣さの何百分の一でいいから、安倍元首相暗殺の前に発揮して欲しかったね。


ともあれ、ウクライナのゼレンスキー大統領まで急きょ参加しなすって

マスコミは大騒ぎだけど、広島県民はわりと冷めてるみたい。

初日にG7の首脳が行った原爆資料館の視察で、みんなわかったわよ。

平和公園に到着した各国首脳は東館から入場して

同じ東館から出て来たもの。


東館は、あんまり当たり障りの無い薄口の展示物がある所。

犠牲者の写真や遺品で被爆の惨状をダイレクトに伝えるのは

東館の隣にある本館。

時間的に見ても、そっちへは行かなかったみたい…

というのが広島の視聴者にはわかっちゃったもんね。


広島は結局、「平和屋」という屋号の貸し座敷に過ぎなかった。

その平和屋で、ロシアとの戦争のために

戦闘機をプレゼントする約束なんかされちゃあ

被爆者やその関係者はやってられないと思うわ。


だけどそれは仕方のないことだと、広島の人たちはわかってるの。

核の脅威が現実になるかもしれない今

人類最初の被爆地、広島の名前が世界に発信された…

それだけでも大きな成果…

そう考えるように努めていると思うわ。


それでも各国首脳が平和公園で献花を行ってくれた時は

このいい加減な私でも胸に迫るものがあって、感動しちゃった。

あの原爆慰霊碑はただのモニュメントじゃなくて

石碑の下に、亡くなった被爆者の名簿が安置されてるのよ。


毎年8月6日の原爆の日が近づくと

石碑の下から名簿を取り出して虫干しをするんだけど

その時、書道の上手な人が2〜3人で

この1年間に亡くなった被爆者の名前を書き足すんだわ。

その名簿が入ってるのよ。


13才の時、あの平和公園の近くで被爆して

37才の時、胃癌と白血病で他界した、うちの母ちゃんの名前も載ってるから

ちょいと他人事じゃないような気がするわけ。

お花、ありがとさん…という気持ちね。

ともあれ、無事に終わりそうで良かったです。


G7のメンバーじゃないけどゲスト的な立ち位置で

昨日、日本入りした韓国の大統領夫妻。

到着後に大統領はサミットへ

夫人の方は尾道の商店街を散策なさって

甘味処でスイーツを召し上がったそうよ。


尾道在住の友だちから送られてきた画像。

尾道の商店街は長いから、ペタンコ靴ね。



サミットの県に住みながら、これといってお目にかけるものも無いから

ご覧くださいませ。



さて、次男の言い出したノゾミスパイ説。

一旦そう思い始めたら、疑いが止まらない様子。

そういう目で見ると腑に落ちる点が出てくるようで

最もカンにさわるのは、ノゾミは会社に保管してある書類に

必要以上の興味を示すことらしい。


興味を持つのはかまわない。

何を見られても、困る物は無い。

しかし社員の過去の健康診断結果を見て

次男に「太り過ぎ」と言った時、彼の怒りは最高潮に達した。


次男は確かに太り過ぎだ。

わざわざ診断結果を見なくても、目で見たらわかるぞ。

しかし、太ったヤツと痩せたヤツには絶対言われたくないそうで

「個人情報を盗み見た上に、本人に向かって太り過ぎなんて許せない!」

と、ひどく腹を立てていた。


会社で彼女より年下は次男しかいないので

話しやすい弟みたいに思っているのだろう。

ノゾミのように子供がいない人は、こういうことになる場合がある。

特に男の子は気位が高いので、うっかりしたことを言うと

大いにヘソを曲げるのだ。

今後、健康診断の結果は私が受け取り、家で保管することになった。


さらにノゾミの興味は郵便物にも波及していて

送る物も送られて来る物も、その内容をひどく知りたがるという。

これも別に知られたってかまわないが、変に見たがられると隠したくなるらしく

次男は警戒する。

今後、届いた郵便物は私が管理し、会社から発送する書類も全て

私がやると約束して落ち着いた。

ちょっと〜、何よ〜…私の仕事、増えとるじゃん!


かくしてノゾミは何のための事務員か

だんだんわからなくなりつつある今日この頃…

今まで無関心だった長男まで、ノゾミへの不信感を口にする。

「硬式テニスのラケット買うた言うて、ワシらに見せびらすんじゃ。

仕事に持って来るか?普通。

やりょうるんは、バドミントンじゃなかったんか。

あいつ、おかしいで」


彼が私にこれを言った時、夫もそばに居た。

「バドミントンも続けとるんじゃろ?」

夫にたずねると

「それがのぅ…」

彼は困ったような顔で答えるのだった。

「会社へ入った途端、バドミントンには来んようになったんじゃ」


はあ?…長男も私も問い返す。

「4月の3日から仕事が始まったじゃん。

前の日の2日に来て、それっきりよ」


はあ?…なおも聞き返す長男と私。

「何の連絡も無いけん、他の人も変に思ようる」

「テニスに転向したんかね?」

「知らん。

うちへ入るのが目的じゃったんじゃないんか?」

「バドミントンは、父さんに近づくために始めたっちゅうわけ?」

「そうとしか思えん。

ヨシキがチラッと言ようたが、ワシもアキバの回し者じゃと思う。

うちへ就職するためにバドミントン始めたんじゃろう」

淡々と言う夫であった。

そう言えばこのところ体温低めというか、落ち着いてきたような…

自分が騙されたと知ったのかもね。


「辞めてもらったら?」

長男がにべもなく言い、夫はやはり淡々と答えた。

「そのうち自分から辞めるんじゃないかの?

こんな最低時給は人生の汚点じゃの何じゃの、文句ばっかり言いよるけん」


騙された悔しさやナメられた無念があるのか無いのか…

彼の気持ちは不明だ。

昔から、こういう時はいつも淡々を通すので、内心を推しはかるのは時間の無駄と学習した。

知ろうとする意欲も無い。

相棒の気持ちが知りたいのは、悔しさや無念に苦しんで

こちらの溜飲を下げさせて欲しいという願望があるからだ。

私には無い。


夫をずっと見てきて実感するが、邪恋の末期はいつも惨めで虚しいものだ。

私だったら、恥ずかしくてとても生きてはおられまいよ。

だが、アレらはそれを長く引きずらない。

自分に甘い性分なので、都合の悪いことはすぐ忘れるため

味わった苦々しさが経験値に加わる暇が無い。

失敗として数えないのだから、何回も同じことを繰り返せるわけである。

その特性を把握してからは、どうでもよくなった。


ともあれノゾミを失うとなると、急に惜しくなった私。

「え〜?また変なのが来たら困るけん、今のでええわ」

ノゾミはロクでもない女かもしれないが

身元だけは、どこの誰だかはっきりしているのだ。

わけのわからん所から湧いて出る女が多い浮気界において

これはポイントが高い。


しかも入社の動機が不純なため、内部のことをしゃべるのは

せいぜい隣の社長と、あとは自分の旦那ぐらい。

不特定多数の人間に、つまらぬことをあれこれ言いふらす心配が少ないので

そこら辺のカタギのおばちゃんより安心感がある。

人を雇う上で、この安心感も重要なポイントだ。

ノゾミには、長く続けて欲しいと願っている。

《完》
コメント (4)
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