殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

若妻会

2014年05月20日 11時49分01秒 | みりこんぐらし
義母ヨシコのご近所さん、こはぎちゃんを覚えておいでだろうか。

隔週の月曜日に我が家を訪れては

午前中から夕方までを過ごす、90才のおばあちゃんだ。

このこはぎちゃんが、近頃ヤバい。


周辺では、認知症疑惑がささやかれている。

「来たら最後、夕方まで帰らない」

そう訴える家々が、続出しているのだ。

うちだけではなかったらしい。


先日のこはぎデー、ヨシコは病院の検査に出かけた。

そこへこはぎちゃんから電話。

「これからお邪魔してもいいかしら」

ヨシコの留守を伝える私に、こはぎちゃんは言った。

「でも、あなたはいるんでしょ?いいわ、行きます」

ガチャリと電話は切られた。


ほどなくやって来たこはぎちゃんは

いつものようにドラ焼き5つ入りの小箱をくれた。

一人息子が単身赴任先で買ってくるものだ。

これを手土産に、あちこち行っているらしい。


息子さんの心配りのこれも、訪問先ではすこぶる不評である。

なぜならうち以外は、未亡人の一人暮らし。

「同じ甘いものばっかり、ありがた迷惑」

と言うのだ。

未亡人の一人暮らしは、健康志向なのだ。


認知症疑惑とはいえ、こはぎちゃんは

煙たい旦那のいない、つまり長居しやすい家をしっかり選んでいる。

「寂しいだろうから行ってあげる」

「こっちも気を使っている」

夫を見送り、一人で果敢に生きる女性達は

こういう感情に敏感である。

その人達の神経を逆なでしていることなど

こはぎちゃんや息子さんは、知るよしもない。


以後数時間に渡り、私はこはぎちゃんの相手をすることに。

「近頃、小じわが出たみたいなの」

「うちの裏のご主人は、生前、私を狙っていたのよ」

不毛過ぎるおしゃべりが、延々と続く。

ヨシコの苦労が身にしみる。


こはぎちゃんの目は、以前と変わっていた。

光を失い、黒くて小さいふし穴みたいになっている。

彼女もいよいよ、デンジャラ・ストリートの一員か。


午後になって、やっとヨシコが帰って来た時は

留守番をさせられた仔犬のような気持ちで

飛びつきたかった。

こはぎちゃんを見てぶったまげるヨシコに押し付け

さっさと逃げる。

その夜、ただでさえ減少傾向の水分を

すっかり抜き取られたようになり、グッタリした。

私は言いたい。

「息子さん!ドラ焼き5つじゃ合わねえっす!」



さて、前日の“こはぎ疲れ”も癒えぬ翌日は

ヨシコの年寄りの友達、通称ヨリトモが

うちに集まって女子会だい。


いつでもおしっこが漏れてしまう、尿漏れのおチヨ

どこでも太ももあらわにインスリン注射を打つ、インスリンのおタツ

不眠症で精神安定剤を暴飲する、バランスのおシマ

一日の大半をトイレ通いに費やす我が姑、かわやのおヨシ

ヨリトモ軍団は、以上のアラエイティ4名で構成されていたが

最近、新メンバー加入。

“骨肉のおトミ”である。


おトミは昔から、おチヨ、おシマ、おヨシとは仲良しだったが

インスリンのおタツとソリが合わなかった。

どっちもズケズケ言うタイプなので、喧嘩になるからだ。

しかし、近年勃発した嫁姑問題に悩むおトミが

幾分おとなしくなったため、両者は歩み寄りを見せていた。


おトミの骨肉は、昨年

自分の娘に家を買い与えたことから始まった。

片時も手元から離さずに可愛がったあげく

無職のハイミスとなった娘の老後を案じる親心だった。


この一卵性母子と25年間同居した嫁は、この時点でキレた。

おトミ夫妻と娘は突然、嫁からこう言い渡される。

「3人の食事は、もう作りません。

私達は8時に夕飯を食べますから、そちらは6時に済ませてください」


一つの台所を二家族が、時間差で使用する日々が始まった。

板挟みの長男は気を使って

6時におトミ達と夕食を共にし、8時に妻とも食べるようになった。

よって肥満いちじるしく、健康診断の数値も深刻だという。


同じ屋根の下で、口もきかない…

80才を過ぎて、初めて味わう緊張感に

おトミはすっかり参っていた。

愚痴をこぼそうにも、めぼしい者は墓の中。

そこで、ヨリトモ軍団に入団したのだった。


うちの応接間で、賑やかなヨリトモ軍団の宴が始まる。

「一緒に食べましょうよ」

と誘われ、私も仲間に入る。


この集まりが、本当は「若妻会」という名前だと

その時初めて聞いた。

「昔は私達も若妻だったのよぉ~!」

「今は古妻」

「あ~ら、やもめの私は妻も卒業したわ」

アハハ、オホホ…笑いさざめく、元若妻達。


会話がはずむ、笑い合える、この普通が嬉しい。

前日のこはぎ疲れを、若妻会に解毒してもらった。

毒をもって毒を制すか。

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6 コメント

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??? (すみこはん)
2014-05-20 16:55:39
あれッ!?
みりこんさん、反転していないですか?

イラストですが、
本当言うと、前のタッチの方が好き。
子どもの絵画が持つ力強さに似た、たくましさがが好きでした。
iPadでしたっけ、
線がシャープで洗練されているから、
何か寂しい。
でも、今のも大好きなんですよ。
あくまでも、前のとの比較です。
ソコノトコロ誤解無きようお願いします。

記事については、また後ほど来させていただきます。
今からゴーヤチャンプル作ります。
返信する
反転 (みりこん~すみこはんへ)
2014-05-20 20:15:16
最初に描いたのを反転させたら、ドラ焼きの字も反対になったので
また反転させて元に戻しました。

iPadは機能が進化していて描くスピードは早いですが
構造上、先の尖ったペンでカリカリひっかくように描けないので
入魂?しにくいです。
指で描いてんのよ。
すいませんね(笑)
返信する
がはははは~~~ (夫人)
2014-05-20 23:22:52
個々のネーミング。
馬鹿ウケでした。
毎度思いますが、上手いこと考えますね。
小学生の時、沢山の友達にニックネームをつけてあげたんじゃないですか?
もし私が同級生だったら、みりこんさんにとんでもないあだ名をつけられていたんじゃないかと思います。
(内心ホッ)

若妻会かぁ~
言うよねぇ~
返信する
ネーミング (みりこん~夫人さんへ)
2014-05-21 08:53:25
私、センス無いのよ。
何しろ白い犬にジジ(魔女の宅急便の猫)と名付けてしまい
呼ぶたびに、近所のおじいさんににらまれ…。

友達にニックネーム、いかにもやりそうでしょ。
小、中では無いんだわ。
差別問題が急にうるさくなった年代で、あだ名は差別の第一歩
ということで、禁止だったから。

意地悪な子限定で、心じゃ密かに考えてたわよ。
トンカツ魔女とか(色黒のデブ)、緑海苔(ミドリノリ)とか。
緑海苔は、自分ちは金持ちだって自慢しまくるんだけど
同じ町だからホラ吹いてるのはわかるし
遠足の弁当の海苔は、いつも安物の緑色だったから。
本人が言うほど父親が名士なら、おむすびの味付け海苔は常に
いただき物の黒いやつでなきゃ。
よって、口ほどにもない嘘つきを緑海苔と。

こんなこと考えてる子だから、わたしゃいじめられるのよ(笑)
返信する
手で! (すみこはん)
2014-05-21 13:19:35
描かれていた!
私は出来ないので、どんな風に描いておられるのかイメージできなくて
好き勝手言っちゃいました。

こはぎさん、いよいよデンジャラストリート
スタート地点ですか?

艶っぽいインスリンのおタツさん、ヨシコさん
は、何となくイメージ出来て
私もお仲間になったように楽しい、感じ。

目前にデンジャラストリートがあり、
自分もやがてそこを通過して、
あの世へ往くのが近いぞと判っておられる『元若妻会』の面々には
もう恐れる物はないから
ワハハ、ギャハハと楽しいことでしょう。
それに、あの〈蜘蛛の糸〉の〈かんだた〉でさえ
天国に行けそうだったんだから
『元若妻会』の方々は、バッチリ安心して
みりこん家サロンではくつろいでおられるのでしょうね。

しかし御本人達はイザ知らず
周りの者には、
デンジャラストリートって、結構長~いんですよね。
誰の思惑でもないけど
まだ居たの?って言うくらい
デンジャラストリートって、結構長~いんですよね。
返信する
元若妻(笑) (みりそん~すみこはんへ)
2014-05-22 07:50:46
高度成長期とバブルの恩恵を受けまくった世代であり
あの人達の親世代って、わりと早く亡くなる習慣?だったので
姑仕えや介護も無かったから、ライオンズクラブだ旅行だと
しよっちゅう一緒に遊び回れたのよね。
楽しい思い出を共有してるから、今でも交流が続いてるし
しっかり遊んでる分、人間が面白い。
人を作るのは、やたらの苦労より、遊びだとつくづく思うわ。

楽しそうにやってるけど、やっぱりそれぞれ“深刻”が
あるみたいですね。
町一番の裕福家庭、おチヨは病弱な孫(これが一番辛いかも)
やり手で通っていたおシマはアル中の次男(人を押さえつけた分が
我が子に)
自他共に認めるファッションリーダー、おヨシは言わずとしれた貧乏
(度を越した衣装好きは寂しさの裏返しで、寂しさが身を滅ぼす)

おタツは早くに未亡人になった分、他の方面では快適を保ち
家のメンテナンスや遊びに行く男を2人はべらせていたけど
亡くなったご主人の弟が、最近になって家をよこせと言い出した。
勝手に改築を始めちゃって、嵐の予感。
親が懸命に働いて建てた家に、よその男を我が物顔で出入りさせるのは
許さんという理由。

人の一生って、配分はみんな同じと改めて思いますが
メンバーには諸事情をものともせず
アグレッシブに生ききってもらいたいです。

蜘蛛の糸…その話を日々強く感じるのよ。
あの人だって、最終的には切られたけど、一応ゴールはおびやかした。
小さな我欲が邪魔をしただけ。
介護って、深いわ。
返信する

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