原子力推進へ連携対応強化 県の取り組み促す狙いも 下北半島4市町村
デーリー東北新聞社 1月5日(月)9時17分配信

原子力関連施設の工事再開、早期稼働に向けた対応を協議する立地自治体の4市町村長=2014年12月25日、むつ市役所
原子力関連施設が立地する下北半島の4市町村が、原子力政策の推進に向け、合同での対応を活発化させている。各施設の工事再開や操業開始の時期に不透明さが増す中、核燃料サイクル事業の進展などを旗印に連携を強化。東京電力福島第1原発事故後もなお、原子力との共存を目指す姿勢に不安を抱える住民がいる一方で、計画の遅れなどが地元経済や財政に悪影響を及ぼしているとして、2月には国に支援策を要望する。これらの働き掛けを強める背景には、「具体的な動きが鈍い」(関係者)とする青森県の取り組みを促す狙いもある。
「各施設は、地理的にも内容的にも密接に関連している。政治的な力を合わせ、まずは意見を聞いてもらう基盤をつくりたい」
2014年12月25日、むつ市役所。市内に使用済み核燃料中間貯蔵施設を抱える宮下宗一郎市長は報道陣に対し、原子力関連施設の早期操業を促すための取り組みに強い決意を示した。
新規制基準による安全審査を申請したばかりの大間原発がある大間町の金澤満春町長、再稼働に至っていない東通原発が立地する東通村の越善靖夫村長、完工が遅れている使用済み核燃料再処理工場を抱える六ケ所村の戸田衛村長が同席。4首長での会合は2度目で、この日は国への要望事項を協議した。
4市町村の経済は原子力関連産業に大きく依存している。だが、東日本大震災から3年以上にわたって工事が停滞し、安全審査も長期化の様相。先行きの見通しが立たない中で、地元は疲弊の一途をたどっている。
加えて、歳入に占める割合が大きい原子力関連の交付金も削減され、市町村財政に悪影響が及んでいる。大間町は大間原発の運転開始が先送りとなったことで、15~18年度に約140億円とみていた固定資産税の収入が見込めなくなり、15年度に着工予定だった役場庁舎の建て替えを見送った。
4首長が足並みをそろえた活動を強化するのは、国に地元の実情を強く訴えるのが目的。長期化する審査の迅速化を働き掛けたい思惑もある。
さらに、ある首長は「最終処分地にしない確約をする以外、県はなかなか具体的な動きを見せない」と不満を漏らす。「市町村単独や市町村の集まりだけでは足元を見られる場合もある。県の重い腰を上げる狙いもある」と打ち明けた。
4市町村はこれまでも要望などを繰り返してきたが、状況に大きな変化がないことに対して共通の危機感を抱える。宮下市長は「今の状況は遺憾に思うが、だからと言って思考停止になるのが最も駄目だ。意思を同じくするメンバーで、もう一度流れを取り戻したい」と活動を継続する考えだ。
一方、原子力推進の姿勢を強く打ち出す首長の動きに対し、原発核燃をなくす下北の会の櫛部孝行代表は「福島の事故を受けても、過去の安全神話に浸っているとしか思えない。原発に批判や不安が強まっているはずなのに、耳を貸そうともしない」と批判した。