現在、市町村がごみ処理施設を新設する場合は、従前の施設を更新する場合が多いですが、場所を変えて更新することもあります。
また、広域処理のように更新に当って他の市町村と共同で新設する場合もあります。
なお、広域処理の場合は、普通はそれぞれの市町村が更新に当って共同で行った方がスケールメリットがあるということで行われています。このため、更新の時期が合わないと実現が難しいところがあります。事実、広域処理が実現しなかったケースは、この更新時期の違いによるものが圧倒的に多くなっています。
国は広域処理においても、補助金を交付する場合は、広域処理に参加しているそれぞれの市町村の実情に添って交付の決定をします。したがって、広域処理のために新たに一部事務組合等を設立しても、各市町村の従前の施設の「履歴」を削除することはできません。
そこで、今日は市町村が新設(更新)するごみ処理施設の「補助金」に対する国の考え方を整理してみます。
下の画像をご覧下さい。
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市町村がごみ処理施設を新設(更新)する場合は、まず、建物が老朽化していることが補助金を利用する条件になります。国はまだ使える建物があるのに新たに補助金を交付することはできません。交付すれば税金の無駄遣いになります。ただし、市町村が場所を変えて新しい建物を整備したいと考えている場合は、補助金適正化法の規定に基づいて所定の補助金を返還すれば、新設に当って国の補助金を利用することができます。なぜなら、こうすれば国としては税金の無駄遣いにならないからです。したがって、市町村が補助金を返還しない場合は自主財源により建物を新設することになります。しかし、一般的には市町村は国に一旦補助金を返還して、それから新たに補助金を利用して建物を新設することなります。
設備を新設する場合は、長寿命化を行っていることが絶対条件になります。なぜなら、廃棄物処理法の基本方針と廃棄物処理施設整備計画において、そういう決まりになっているからです。国は国が決めた決まりに違反して補助金を交付することはできません。仮にそのようなことがあったら、国民から損害賠償を求められることになります。したがって、市町村の設備の新設に関する計画が国の決まりに適合していない場合は、自主財源により新たな設備を整備することになります。
なお、広域処理のように複数の市町村が共同でごみ処理施設を新設(更新)する場合は、国の決まりに適合している市町村だけが補助金を利用できることになります。
現在、中城村北中城村清掃事務組合は他の市町村との広域処理を検討しているようですが、相手方の市町村がどこであれ、建物の新設に当っては従前の建物に対する補助金を返還してから、新たに国の補助金を利用して広域施設の建物を整備することになります。
また、設備については溶融炉を休止したまま焼却炉の長寿命化も行わないことになるので、自主財源により新しい設備を整備することになります。
ちなみに、組合がこれからごみ処理を行わない場合は設備の処分制限期間を経過しているので、建物部分の補助金を返還すればごみ処理施設を廃止することができます。ただし、市町村がごみ処理を放棄することはできません。
いずれにしても、組合が既存の設備の長寿命化を行わない場合は、国の決まりに適合しないごみ処理を行うことになるので、広域処理であれ単独処理であれ、自主財源により設備を新設することになります。
仮に、国が設備の長寿命化を行っていない市町村に対して補助金を交付した場合は、国のインフラ長寿命化基本計画は、一挙に流動化することになります。
現在、全国の市町村の多くがごみ処理施設の長寿命化計画を策定しています。平成28年度が策定期限になっているので、各市町村においておよその方向性は定まっているはずです。
そんな社会状況の中で、設備(処分制限期間は経過しているが老朽化していない設備)の長寿命化を行わない市町村に対して国が補助金を交付するようなことがあったら、全ての市町村が長寿命化計画を見直さなければなりません。なぜなら、国は全ての市町村に対して設備(老朽化している設備を除く)の長寿命化を求めているからです。
ちなみに、このブログの管理者は、中城村北中城村清掃事務組合は、まずは国の決まりに従って焼却炉の長寿命化を行い、更新する時期に合わせて広域処理に切り替えるというオーソドックスな方法を検討した方が無難だと考えています。なぜなら、焼却炉の長寿命化を行わない場合は老朽化対策に莫大な費用が必要になるからです。そして、万が一、広域計画が途中で白紙撤回になった場合は、自主財源により焼却炉を更新しなければならなくなるからです。
※民間人からみると国の考え方は極めて合理的な考え方だと思いますが、市町村の職員(公務員)の中には国の考え方を理解できない方が結構います。それだけでなく、都道府県や国の職員(公務員)の中にも少なからず存在しています。したがって、建物や設備が老朽化していない市町村の場合は、ごみ処理施設の新設(更新)に当って十分に注意する必要があると考えます。