前田士郎教授の研究グループが分析した県内在住4015人のゲノム情報に基づくデータ。宮古島と久米島在住者のデータは出生地調査を行って色付けしている(前田教授提供)
遺伝学的に比較的均一な日本人の中で、沖縄県出身者は本土とは異なる遺伝背景を持っており、県内でも地域ごとに複数の遺伝集団があることが、琉球大学大学院医学研究科の前田士郎教授の研究チームによって明らかになった。
病気のなりやすさや薬の効き方に遺伝子が関わっていることも分かってきている。解明が進めば、個人に合った治療や予防の実現が期待される。
チームは県内で同意を得た人を対象に、健康診断などで血液や唾液試料を採取した。
ゲノムDNAに含まれる全遺伝情報を読み取って解析を進めている。研究は県の先端医療実用化推進事業の一環で、2016年度から始まり、これまでに1万人以上の同意を得た。ゲノムのデータは匿名化した上で医療情報と合わせて蓄積し、病気の仕組みや薬の効き方の解明につなげる狙いだ。
人のゲノムは約30億の塩基の配列からなり、99.7%は全人類で共通している。0.3%ほどに当たる約1千万に違いがあり、SNP(スニップ)と呼ばれる。SNPのデータ4015人分を分析したところ、沖縄本島と久米島、宮古島の在住者で地域ごとに異なる集団を形成している様子が確認された。
さらに久米島と宮古島のデータにおいて、祖父母の出身地を確認する出生地調査を実施した。それぞれの島の出身者を抽出すると、データのばらつきが減り、よりまとまった遺伝子集団になったという。
前田教授は「地域ごとにここまで違いがあるのは意外だった。詳細な解析の際には地域を分ける必要がある」と話している。