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TONALITY OF LIFE

作曲家デビュー間近のR. I. が出会った
お気に入りの時間、空間、モノ・・・
その余韻を楽しむためのブログ

穏やかな移ろい

2016-02-28 01:30:05 | 音楽
水栽培のヒヤシンスの白い根っこ。
ジョギングコースの木々のシルエットの膨らみ。
ゆっくりながらも季節が動いているのを教えてくれる。
睦月から如月にかけての穏やかな移ろいは年間を通しても貴重である。

間もなく花粉の飛散で鼻が利かなくなる。
そうなるとアルコールの魅力が半減する。
喉ごし、味覚もさることながら、ビールのホップもワインのアロマもグラスに注いだとき鼻に届く香りが捨て難い。

ひと頃よりも陽射しが明るくなると、ブラジル音楽を聴きたくなる。
デルタの機内でたまたま耳にしたイリアーヌ・イリアスの『Made In Brazil』をCDで購入した。
通しで聴いてもこの時期にぴったりなアルバムで、
なかでも6曲目の♪「インセンディアンド(静かな炎)」が完璧にシンクロしている。

クインシー・ジョーンズ@東京国際フォーラム

2013-08-01 01:48:16 | 音楽
コントラバスも隠れてしまうほどの巨体で現れたのには驚いた。
しかし御年八十、アメリカのお年寄りの典型的な体型と言ってしまえばそうなのかもしれない。
歩く足取りの重さも、前回の来日から32年もの歳月が経っていることを物語っていた。
それでも白のジャケットを着こなしてビッグ・バンドを指揮する。
こんな姿を見られる日が来ようとは...

クインシー・ジョーンズの音楽を一言で表すとしたら、ズバリ “洗練” だろう。
彼の手に掛かるとすべての要素が滑らかにつながって、仕上がる。
舗装されたてのアスファルトのように。
最上のカッティングを施された宝石のように。
上品な色気というか、人肌のような独特の温もりを醸し出しているところも魅力である。
思うに何事も80点を90点にするより、97点を98点に、98点を99点に引き上げる方が遥かに難しい。
それを成せるのは本当に限られた人で、フィギュアスケートのタラソワなんかもきっとそう。
作品を垢抜けさせる業は、まさにマジックなのである。

コンサートは途中30分の休憩を挟んで、計4時間にも及んだ。
前半は亀田誠治プロデュースで日本人アーティストたちがお気に入りの作品をトリビュート。
絢香~K~土岐麻子~小野リサ~小曽根真~BoA~三浦大知~ゴスペラーズと続いた。
後半に入ると秘蔵っ子と呼ばれる若い才能が計6組披露され、
これだけでもお腹いっぱいというところだが、めくるめくメインディッシュはこの後。
パティ・オースティンが♪「愛のコリーダ」のイントロと共に現れると会場は一気に最高潮へと加速した。
続くパティの♪「Say You Love Me」では、モノマネ番組で見かけるようなサプライズがあった。
なんと2コーラス目から松田聖子が登場。
ジェームス・イングラムは♪「Just Once」でこれでもかと自分だけの世界を作り上げた。
そして何よりも感激したのはパティとジェームスの共演。
二人とも以前とまったく変わらぬ声量で♪「Baby, Come To Me」を歌い上げ、
しかも舞台袖ではそれをクインシーが見守っているという
奇跡のreuniteを目の当たりにした。
大都会を彷徨い疲れた大人の男女が邂逅する、そんな絵がニューヨークの薫りとともに浮かんでくる名曲である。
一方ですでにこの世を去ってしまったマイケル・ジャクソン。
♪「Michael Jackson Overture」なる彼のヒット曲のイントロをつないだ楽曲が
ビッグ・バンドによって華やかに奏でられているというのに、
ステージはぽっかりと空いているようで、今は亡き事実を突き付けられた気分だ。
そしてマイケルとの仕事こそがクインシーの最も偉大な成功であったことに改めて気付かされるのである。
その流れを汲んで、サイーダ・ギャレットは♪「Man In The Mirror」を熱唱した。

序破急そのままに終盤はあっという間であった。
ラストに用意されていたのは、出演者全員による♪「We Are The World」。
自然と皆が立ち上がった客席には、無数の思い出や感情が去来していたに違いない。
困っている人に手を差し延べようというシンプルなメッセージが、
モニターに映し出されたクインシーの優しい眼差しと重なった。

Quincy Jones The 80th Celebration Live in JAPAN(初日)
2013 7.31 wed
東京国際フォーラム ホールA

古内東子@BLUE NOTE TOKYO

2013-02-08 00:54:51 | 音楽
古内東子1995年リリースのアルバム『Strength』は今でも時々聴きたくなる作品だ。
NYのトップミュージシャン達によるバックはとびっきりグルーヴィーで心地よく、
詩には彼女の恋愛哲学のエッセンスが丁度よいさじ加減で収まっているように感じる。
以前から一度ライブに足を運びたいと思っていたアーティスト。
昨晩、活動20周年記念ベスト・アルバムのリリース・パーティーと銘打ったライブに出掛けてきた。

古内本人は以前より幾分ふっくらとして健康的な印象。
胸元が大きく開いたオレンジ色のドレスを纏っていたせいかもしれない。
歌唱中は会場の隅々にまで視線を送って彼女の世界を懸命に伝えようとする。
一番好きな♪「Strength」をナマで聴きたかったのだがそれは叶わず。
しかしアンコールでサプライズ・ゲストとして登場した平井堅とのデュエットがすばらしく、これを聴けたのはよかった。
昔レコード会社の片隅で所属アーティスト同士として紹介される場面があり、
そのとき平井は挨拶代わりに古内の曲をフェイクも完ぺきに歌ってみせたのだとか(確か♪「Distance」と言っていたような)。
そんな秘話というか思い出話のあと登場し、客席は大いに盛り上がった。
歳月の流れを投影した♪「さよならレストラン」という新しいデュエット曲。
終始平井の歌唱力に圧倒された。
今宵のミュージシャンたちも精鋭揃いでそのプレイにちょくちょく目が行っていたのだが、
彼が歌いだすと絶対的な中心となってバンドの存在は瞬時に遠のいたのである。
そんな訳で、お洒落なスーツからグリーンのシャツを覗かせ、センスのいい花束を携えて登場した平井堅の印象は、
R. I. のなかで急上昇。
同時にアニバーサリー的なイベントに旧知のゲストがサプライズで登場するという演出の威力を目の当たりにしたのだった。

家に帰って♪「Strength」を聴いて改めて気付いたこと、それはコーラスの多さ。
バンドにコーラスがいなかったことも、歌われなかった理由の一つなのだろうか。

2013 2.7 thu. 1st
http://www.bluenote.co.jp/

イヴァン・リンスの♪「上を向いて歩こう」

2012-04-10 01:57:29 | 音楽
会社から桜の青山墓地を抜けてブルーノート東京へ向かった。
週末は花冷えしたので、満開は気温が上がった今日かもしれない。
「ジェーン・モンハイト with イヴァン・リンス」初日の1stステージ、お目当てはイヴァンである。
彼による♪「上を向いて歩こう」のカバーがYouTubeにアップされているのを先週遅ればせながら知り、
そのすばらしさから無性に会いたくなった。

その「上を向いて歩こう」は、イヴァンのバラードの美質がすべて詰めこまれているかのようなアレンジ。
一言で表すとしたら「流麗」、だろうか。
♪「Setembro」や♪「Iluminados」のように夢見心地にさせてくれるよどみない転調、
それが繰り返されるうちに宇宙の彼方へと引っ張られていく感じ、
そしていつもなぜか海の匂いがするところ。
日本語で歌われており、テンポが遅めのせいか、一言一句を噛みしめるような発音が耳に残る。
その独特の声質とあいまって、「歩こう」の「う(お)」音を伸ばすところなどは
声明か能の謡の節回しのようにも聞こえた。
込められた祈りが日本の風土に浸み渡ってゆくイメージ。
大震災のわずか数日後に地球の反対側からこんな音楽を発信してくれていたなんて。

CDやチケットを買わずにはいられないお気に入りのアーティスト、
R. I. にとってそれは紛れもなくイヴァン・リンスである。
久々の高揚感に包まれながら地下のステージへ。
初日は張りつめた雰囲気かと思いきや、
客席が埋まり切っていないこともあり意外なほどリラックスしていた。
それでもイヴァンはサンバの曲を終えるとガッツポーズをし、
セルメンへの提供曲♪「Lua Soberana」では観客にリフレインの合唱を仕掛けるという
相変わらずのパワフルさ。
しばらくは♪アイアーラカリア~の魔法から抜け出せそうにない。
ジェーン・モンハイトはポルトガル語でも歌いこなし、
特に♪「Comecar de Novo」(クインシー・ジョーンズ・プリゼンツの「The Island」としても有名)では
ディーヴァのオーラを存分に放出していたのはさすが。
MCで “I can't still beleive this” と繰り返していたとおり、
イヴァンとステージを共にしている感激が伝わってきた。

新婚時代、かみさんと二人で出掛けたイヴァンもここブルーノート。
今宵も一緒に行きたかったけど、ミンモがいるから
一人で行かせてくれてありがとう。

JANE MONHEIT with IVAN LINS
2012 4.9mon.-4.12thu.
http://www.bluenote.co.jp/