TONALITY OF LIFE

作曲家デビュー間近のR. I. が出会った
お気に入りの時間、空間、モノ・・・
その余韻を楽しむためのブログ

YUMING MUSEUM@東京シティビュー

2023-02-26 14:45:50 | 音楽

六本木ヒルズ・森タワーの52階。
広告で目にしていた空間が最初のエリアだった。
高い天井から舞うようにディスプレイされた譜面や歌詞は、
アルバム『パール・ピアス』のジャケットを彷彿とさせる。
グランドピアノの周辺に降り積もった様子は、
50周年という♪「経る時」をイメージしての砂時計の底といったところか。
1枚1枚を覗き込むと、そこには初めて目にするユーミンの字体。
少しだけ丸みを帯びている。
清書されたものよりも、二重線が引かれてまさに創作の最終段階と思しきものが多く、
いきなりテンションが上昇した。

そのあとの肉筆が展示されたコーナーでは、たくさんの発見に時間を忘れそうになった。
例えば荒井由実時代の♪「晩夏」はメモのような状態で、
タイトルはないまま冒頭に「1975.9.10 in Yokote」と記されている。
全体のまだ3割程度でありながら、「ひとり」というキーワードとともに作品の方向性は定まっているようだ。
♪「Corvett 1954」はユーミンの生まれた年と勝手に結びつけていたものの、
当初は1953であったことに驚き、
♪「緑の町に舞い降りて」はタイトルのあとに括弧で(MORIOKAモリオカ紀行)と添えられているのを見つけ、
これが英語タイトルの「Ode of Morioka」に昇華されていたのだと解釈した。

かつてインタビューでユーミンが作詞における生みの苦しみを、
鶴が自分の羽毛を抜いて糸の間に織り込んでいく「鶴の恩返し」の一場面に喩えていたことを思い出す。
念写のような気持ちで言葉を紡ぎ出すとも語っていた。
世の中に発表されているのとは異なるフレーズを目にする度に、
パズルの最後のピースはここだったのかという興奮に包まれる。
極めつけは、アルバム『DAWN PURPLE』のなかの♪「遠雷」。
2行目の「冷めたカップ ペイズリーの煙草のけむり」は特に惹かれる一節なのだが、
ここはなんと「冷めたカップ 薄い煙 めくらないページ」となっているではないか。
「めくらないページ」は削ぎ落とされ、煙の動きにフォーカスした結果の「ペイズリー」。
部屋のなかの静物と対比され、より映像的になっていると感じるのである。
貴重な幼少期の写真からシャングリラに出演したロシア人のメッセージまで
実に盛りだくさんの内容であったが、
創作の過程を垣間見られたことがやはり一番贅沢であった。

ユーミンの声で展示をナビゲートしてくれたのもいい。
日没の時間帯だったので、昔エフエム東京でやっていた「サウンドアドベンチャー」を思い出した。
売店のエリアに来場者交流の場としてストリートピアノを置いてみてはと思った。
ピアノの得意なファンがユーミンの名曲を代わる代わる奏でたに違いない。

記念のグッズ購入は、ジャケ写をあしらったミニノートと行く前から決めていた。
1つずつシルバーの袋に入っていて、中身は前もって分からないという。
初めて買ったLPレコード『VOYAGER』になる確率は40分の1ということになる。
結果はなんと『ユーミン万歳』! 袋から独特の赤が覗いた瞬間、すぐに分かった。
大当たりのような気もするし、オリジナルアルバムのほうが何らかの思い入れと重なったかもしれないし、
最新のベストアルバムを引き当てた偶然をどのように味わったらよいのか
頭のなかをまだぐるぐるとしている。

YUMING MUSEUM(ユーミン・ミュージアム)
2023.2.23@東京シティビュー
かみさんからの誕生日プレゼント



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