北欧のヴィンテージ家具を扱う専門店はいくつか存在するものの、
ルカ スカンジナビアほどにアートや工芸も充実しているところを他に知らない。
フィン・ユールの椅子の優美な曲線にも、クリスチャンボーシャンデリアの温もりにも惹かれるが、
お店のホームページにアクセスする度にまず目が行くのは絵画である。
オーナーさんの審美眼にかなったデンマークの画家が何名かいて、
同国の20世紀絵画史の一部はこの店が日本に紹介していると言っても過言ではない。
その画家が生涯にどのような作品を残したのか、どのように作風が変遷していったのかなど、
芸術学的な興味までもが自然と湧き上がって来るのである。
そして遂に、1950年代の油彩作品を買い求める日が来た。
絵画をしかも銀座で購入するというのは、特別な体験。
数年前に青山の骨董通りから銀座へ移転したときは、やはり敷居が高くなったように感じた。
しかしながら、ウィンドウ越しに店内を眺められるのは路面店だからこそで、
金箔のフレームに収まった絵画の存在感は画廊の多いこの街に相応しい。
家具や照明との調和によってアートの輝きはさらに増して、別世界を醸し出している。
夏至近くの明るい夕方、絵を携えながら銀座をあとにした。
遅くなる日没にロシアと対峙している北欧が脳裏を過った。
2022年8月追記:
ロードショーで北欧の映画2本と出合う。
『わたしは最悪。』はオスロが舞台。緑の多い街並みが印象に残った。
『魂のまなざし』はフィンランドの国民的画家・ヘレン・シャルフベックを描いた作品。
久々にリピートで2度鑑賞、2015年上野と2016年葉山の展覧会をなぜ気付かずにいたのだろうか。
映画から先に入ったことで焼き付けられたのは、キャンバスを擦る技法。
画集を開いても摩擦音が蘇って来るほどに、音声が徹底して拾われていた。