TONALITY OF LIFE

作曲家デビュー間近のR. I. が出会った
お気に入りの時間、空間、モノ・・・
その余韻を楽しむためのブログ

花のベッドで見る夢は

2013-08-12 00:12:04 | ガーデニング
昨日見かけたカマキリの子供が、今日も同じ場所にいる。
それは純白のダリヤの花の上。
対峙しているかのような黒い虫もずっと一緒のはず。
ここは心休まるベッドなのか、隙を見せることは許されるのか。
風が吹けば花も揺れる。
ハンモックのようにゆらゆらと。

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『春琴』Shun-kin@世田谷パブリックシアター

2013-08-11 13:23:57 | 舞台
谷崎ファンとして直感的にチケットを押さえた。
すっかり足が遠のいている劇場に戻るきっかけを探していたところでもあった。
人気の公演と知ったのは後日。
立ち見もあふれる当日の盛況ぶりに幸運を知る。

演出が英国人というのが何と言っても驚きである。
サイモン・マクバーニー。
イギリス演劇界の鬼才と呼ばれているそうだ。
日本の古典芸能の演出や特徴が彼のなかで消化され、巧みにアプトプットされているところがすばらしい。

数枚の畳がくっついて時には部屋、ときには廊下と、パズルのように形を変える。
最小限の小道具(作り物)で舞台を様々な場所に見立てる、能の精神が宿っていると感じた。
主人公の春琴は、糸竹の道を極めんとする盲目の美しい娘という役柄。
人形で登場することにより、浮世離れした存在が増長されていた。
同一の演目であっても歌舞伎より文楽の方がうんと幻想的であることをサイモンは見抜いていたのだろう。
人形を操りながらセリフを喋るのは深津絵里。
後半激しい感情の炸裂とともに、人形が生身の人間(深津)に変わる、その瞬間の効果も絶大であった。
籠から飛び立つ雲雀を、半紙のような紙を震わせることで表しているのは何からインスパイアされたのか。
扇の技法にあったように思われたが調べがつかず。

ナレーションの収録という体を取りながら進行し、そこかしこに笑いが散りばめられているところは、
いかにも今日の演劇らしいと思った次第。
初めての世田谷パブリックシアターは、官が運営する無機質な劇場かと思いきや、
三茶座とでも呼んだ方がよさそうな居心地のよい空間であった。

『春琴』Shun-kin 谷崎潤一郎『春琴抄』『陰翳礼讃』より(2日目)
2013 8.2 fri
世田谷パブリックシアター

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クインシー・ジョーンズ@東京国際フォーラム

2013-08-01 01:48:16 | 音楽
コントラバスも隠れてしまうほどの巨体で現れたのには驚いた。
しかし御年八十、アメリカのお年寄りの典型的な体型と言ってしまえばそうなのかもしれない。
歩く足取りの重さも、前回の来日から32年もの歳月が経っていることを物語っていた。
それでも白のジャケットを着こなしてビッグ・バンドを指揮する。
こんな姿を見られる日が来ようとは...

クインシー・ジョーンズの音楽を一言で表すとしたら、ズバリ “洗練” だろう。
彼の手に掛かるとすべての要素が滑らかにつながって、仕上がる。
舗装されたてのアスファルトのように。
最上のカッティングを施された宝石のように。
上品な色気というか、人肌のような独特の温もりを醸し出しているところも魅力である。
思うに何事も80点を90点にするより、97点を98点に、98点を99点に引き上げる方が遥かに難しい。
それを成せるのは本当に限られた人で、フィギュアスケートのタラソワなんかもきっとそう。
作品を垢抜けさせる業は、まさにマジックなのである。

コンサートは途中30分の休憩を挟んで、計4時間にも及んだ。
前半は亀田誠治プロデュースで日本人アーティストたちがお気に入りの作品をトリビュート。
絢香~K~土岐麻子~小野リサ~小曽根真~BoA~三浦大知~ゴスペラーズと続いた。
後半に入ると秘蔵っ子と呼ばれる若い才能が計6組披露され、
これだけでもお腹いっぱいというところだが、めくるめくメインディッシュはこの後。
パティ・オースティンが♪「愛のコリーダ」のイントロと共に現れると会場は一気に最高潮へと加速した。
続くパティの♪「Say You Love Me」では、モノマネ番組で見かけるようなサプライズがあった。
なんと2コーラス目から松田聖子が登場。
ジェームス・イングラムは♪「Just Once」でこれでもかと自分だけの世界を作り上げた。
そして何よりも感激したのはパティとジェームスの共演。
二人とも以前とまったく変わらぬ声量で♪「Baby, Come To Me」を歌い上げ、
しかも舞台袖ではそれをクインシーが見守っているという
奇跡のreuniteを目の当たりにした。
大都会を彷徨い疲れた大人の男女が邂逅する、そんな絵がニューヨークの薫りとともに浮かんでくる名曲である。
一方ですでにこの世を去ってしまったマイケル・ジャクソン。
♪「Michael Jackson Overture」なる彼のヒット曲のイントロをつないだ楽曲が
ビッグ・バンドによって華やかに奏でられているというのに、
ステージはぽっかりと空いているようで、今は亡き事実を突き付けられた気分だ。
そしてマイケルとの仕事こそがクインシーの最も偉大な成功であったことに改めて気付かされるのである。
その流れを汲んで、サイーダ・ギャレットは♪「Man In The Mirror」を熱唱した。

序破急そのままに終盤はあっという間であった。
ラストに用意されていたのは、出演者全員による♪「We Are The World」。
自然と皆が立ち上がった客席には、無数の思い出や感情が去来していたに違いない。
困っている人に手を差し延べようというシンプルなメッセージが、
モニターに映し出されたクインシーの優しい眼差しと重なった。

Quincy Jones The 80th Celebration Live in JAPAN(初日)
2013 7.31 wed
東京国際フォーラム ホールA

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