TONALITY OF LIFE

作曲家デビュー間近のR. I. が出会った
お気に入りの時間、空間、モノ・・・
その余韻を楽しむためのブログ

甘味礼讃 Vol. 4 ~ 渋谷・ドゥ マゴ パリのタルトタタン(タルトタタンとラフマニノフの休日)

2014-11-21 00:32:29 | グルメ

一言でいえば、リンゴのあまりにも魅力的な変容。
1989年の開店以来この店で圧倒的な人気を誇っているという味をコンサートの前に確かめた。
ホームページによると「しっかりしたリンゴの素材感」を出すのに最適な品種を追い求めた結果、
「硬めの富士」という結論に至ったとのこと。
シンプルであるがゆえにものを言う素材選び。
甘酸っぱさと生クリームの相性がまた秀逸である。
この日は両親を招待し、後日談として母が絶品のタルトタタンを繰り返し話題にしていると父から聞いた。
どうやらコンサートの印象を上回ったらしい(笑)。

さて、そのコンサートはN響のオーチャード定期第81回。
お目当てはラフマニノフのピアノ協奏曲第2番である。
もはやこの曲を浅田真央のスケートと切り離して聴くことはできない。
ソチでは失意のショートがあったからこそ、フリーの偉業が際立ったのも事実。
彼女が一体どんな覚悟でフリーに臨んだのかを考えるだけで出だしから目頭が熱くなった。
重厚な旋律に乗って成し遂げられた最高難度のプログラム。
第3楽章では伊藤みどりのアルベールビルを思い出し、
R. I. のなかではもう完全に別名“トリプルアクセル・コンチェルト”なのである。
指揮者のレナード・スラットキンが健康上の理由でキャンセルとなったのは残念であったが、
代役のクリスティアン・アルミンクは同い年ということで注目した。
上背があるので手を伸ばすと管楽器の最前列にまで届きそうなダイナミックさがある。
例の浅田真央のステップの部分はテンポを落としてゆったりと荘重に聴かせてみせた。
ラフマニノフという作曲家はとにかく音が多い。
SACDで録音年度の新しいディスクを聴くと、こんなところでこんな音が鳴っていたのかという発見に都度出くわす。
この日座ったバルコニー席からはピアノのハンマーが大量の塊となって上下しているのが目に入った。
ピアノのオルガ・ケルンは抜群の安定感。
第1回ラフマニノフ国際ピアノ・コンクールの覇者だそうで、すでに十八番であることが窺えた。

N響オーチャード定期 第81回
2014 11.9 sun
Bunkamuraオーチャードホール

http://www.bunkamura.co.jp/magots/topics/post_10.html


第30回記念 狂言 やるまい会 東京公演@喜多能楽堂

2014-11-17 01:26:00 | 舞台
学生時代の知り合いの演奏会や個展に出掛けると、
卒業以来欠かすことなく積み重ねられてきたであろう精進の日々に思いが馳せられてただただ頭が下がる。
特にパフォーマンスを伴うものには「本番」があり、
身体的なメンテナンスにも常日頃から相当な神経を注いでいるはずだ。
狂言「やるまい会」の主催者・野村又三郎は、十四世として今まさに脂が乗っていた。
狂言の道を真摯に極めようとしている姿に接し、またご子息との共演を目の当たりにして一層感慨深い公演となった。
一子相伝の芸が次代へ橋渡しされているのを垣間見られるのは、能・狂言や歌舞伎など子役が登場する演劇ならでは。
工芸や大工などの分野も然り、日本の伝承は家によって代々おこなわれていくのが強みである。
芸能に限れば、雅楽まで遡ってあらゆるジャンルの主要な流派が途絶えることなく並存しているのは
日本ならではの特色と言われる。
極めつけは男系で125代続いている天皇家。
世界広しと言えどもこのような長きにわたる一本の皇統が現存するのは我が国のみで、
それが例えばアメリカのプロトコル(外交儀礼)においては
英国国王、ローマ法王と並んで天皇が最高位に置かれる理由なのだとか。

さて、会主の堂々たる挨拶に始まり、『文蔵』、『石神』、素囃子の「水波之伝」を挟んで『唐人子宝』の三番が披露された。
『石神』で夫婦役を演じた奥津健太郎、野口隆行は役へのはまり具合が絶妙でおかしさを誘った。
なんと三組の親子が舞台に立った『唐人子宝』は、子役達の声や背格好がまさに一期一会であることからも貴重である。
世継ぎを無事に儲けた誇らしさ、めでたさが舞台に満ち満ちているかのように感じられた。
能『唐船』を翻案した異色の狂言だそうで、中国語風の科白が珍しい。
この日客席が一番湧いたのは、唐土(中国)より携えたという宝物、巻絹・サンゴ・瑠璃の壷が舞台に並べられ、
サンゴを「赤サンゴでござる」と言った場面。
おそらく時事の話題を巧みに取り込んだものと思われ、それによって様々な距離がぐんと縮まった。
やはり笑いを取ってこその狂言と思うのである。
野村又三郎は狂言に相応しい明るいオーラと、その風貌に際立った個性を備えている。
古典芸能という制約はあれども、これから唯一無二の芸風がますます磨かれていく予感がした。

楽屋を訪ねたとき、ご子息の挨拶が礼儀正しかったこと。
それにあやかるためにも今度はぜひ子供と一緒に出かけよう。

第30回 狂言やるまい会 東京公演
2014 11.15 sat
十四世喜多六平多記念能楽堂

多肉のお裾分け

2014-11-01 23:04:27 | ガーデニング
夏のあいだにたくさん分岐した多肉植物。
剪定したものを小ぶりのテラコッタに移植して、妹夫婦宅訪問時のプレゼントにした。
これからの季節は成長が止まり、寒気のマジックで赤く染まっていく。
多肉は冬が楽しみな植物である。