落ち葉のなかの松ぼっくりに薄霜が降りる。
大きなガラスのショーケースではこのモンブラン一種類が林立していたので、
単体で眺めると新しいイマジネーションが湧いてきた。
数日前に味わった栗きんとんが、栗への欲望に火を付けた。
今度はモンブランを食したいと思うようになり、久々のオフィス出社の帰りに立ち寄ったのがモリ・ヨシダ・パリ。
パリで認められた日本人パティシエ・吉田守秀の日本初出店は、
一年前の渋谷スクランブルスクエア開業時に話題となったものだ。
近年独創的なモンブランが巷間を賑わしているのを知ってはいたものの、
モリ ヨシダの意匠はその上を行く。
一体どのようなテクニックで松笠状にクリームを絞り出しているのだろうか?
思うに日本人パティシエの活躍は、和菓子文化の基盤のうえに成り立っている。
つまり、和菓子で表現される季節感が、松ぼっくりのモンブランに昇華されたと解釈する。
また、茹でた栗を潰して菓子にするという発想は、栗きんとんとモンブランに共通するもので、
そのような洗練された食文化を元から有していることも、日本人が洋菓子の本場で花開く理由に違いない。
さて、味の方は全体的に甘さ控えめで、落ち葉の部分の薄いパイ生地が食感のアクセントとなっている。
晩秋の小さきものに注がれたパティシエの眼差しを勝手にイメージしながら、栗の風味を堪能した。
https://moriyoshida.fr/ja/