TONALITY OF LIFE

作曲家デビュー間近のR. I. が出会った
お気に入りの時間、空間、モノ・・・
その余韻を楽しむためのブログ

乗り継ぎ便の魔法

2015-02-15 01:59:53 | 旅行
眼下にはシアトルの夜景が煌めいて、いよいよ最終目的地へと飛び立った。
クリスマス・ヴァージョンの粋なアナウンスに機内のムードがとてもいい。
禁煙の注意は “Santa hates smoke” いった具合。
バンクーバー、シアトルと経由した疲れは吹っ飛んで、
ようやくiPhoneに入れてきた音楽を聴きたい気分になった。
夢見心地なイントロは小野リサが歌うクリスマス・ソング♪「ウン・フェリッツ(フェリッツ・ナビダッド)」。
優しいポルトガル語の響きに包まれる。

隣のシートにはミンモと同い年くらいの女の子。
しばらくすると人懐っこく話し掛けてきた。
アイダホから乗り継いで、お父さんに会いにいく途中だと言う。
アメリカの映画やドラマに出てくる子供はまるでデフォルトのように両親が離婚しているが、
この子もどうやらそうらしい。
今日の日を指折り待ち焦がれていた様子に
「僕も離れて暮らすwifeとdaughterに会いに行くところなんだよ」とおんなじ気持ちを伝えた。
本を開いてもイヤフォンを入れても長くは続かず、到着が待ち切れないとこぼしてくる。
“me, too” と答えては、残りの時間を教えてあげた。

再会前のフライトでは、会えなかった時間の分、想いが加速度的に凝縮されてゆく。
それを味わうことになるのは直行便よりも乗り継ぎ便である。
去年もそうだった
近くまで来ているのに足止めされるもどかしさ。
乗り継ぎという道行きが魔法のように効くのである。

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川口&スミルノフ組に寄せて

2015-02-11 23:21:17 | フィギュアスケート
ソチ五輪で残念だったことの一つに、ペアの川口悠子&アレクサンダー・スミルノフ組の不在が挙げられる。
スミルノフの怪我により出場は叶わなかった。
ピークに向けた調整も二人分となるのがカップル競技の難しいところ。
しかしながら今シーズン、昨シーズンの思いも乗せて円熟の域に到達した二人の姿がある。
スケートアメリカと欧州選手権の映像をぜひ確かめてほしい。

このペアにはっきりと魅了されたのは、バンクーバー五輪終了後のシーズン。
フリーで演じたドビュッシーの「月の光」である。
2シーズン続けて滑るなかで、衣装の “青” は試合毎に変化を見せた。
緑がかったり、目の覚めるような鮮やかなものになったりと、様々な青い夜がリンクに帳をおろしたものだ。
特に2010-2011シーズンのデススパイラルに入る箇所は曲とのシンクロが秀逸で、
満月の光の輪や、宇宙における軌道にまで思いを馳せてしまうような広がりがあった。
直後に同じ回転運動のスピンへと移行するところもいい。
またつなぎの要素も実に多彩で、女性が男性に巻き付いたときのフォルム、
抱えられた女性の空中遊泳のようなモーションと、
月夜の無重力感もが随所に散りばめられていて、まさに芸術的なのである。
すばらしい演技というのは曲のよさを一段と引き立てる。
西洋音楽史におけるドビュッシーという革新的な存在、
そして「月の光」こそが彼一番の傑作なのではないかとたたみ掛けるように訴求してきた。
終盤のリフトは様々なポジションへと変化し、
モスクワのワールドでは「万華鏡のよう」と実況していたのも印象的。

今シーズンは何と言ってもサイドバイサイドのジャンプがピタっと決まるところから安定感がある。
ショートの「タイスの瞑想曲」では余裕さえ感じさせ、
フリーのチャイコフスキーではいかにもロシア的で重厚な響きのうえに感情が炸裂する。
様々なことが遂に噛み合って、世界選手権の表彰台、それも中央を狙える位置にいると言えよう。
当初はペア界屈指のマッチョ・スミルノフと、あまりにも線の細い川口との対比に目が行った。
しかしいつしかそれは気にならなくなり、むしろロシアの伝統仕込みで洗練されていくのが楽しみになっていた。
先の欧州選手権でのエキシビションは何と「月の光」。
競技用より短い編集で例のデススパイラルの場所は変わってしまったが、
この選曲からも集大成に向けた二人の意気込みが大いに伝わって来るのである。

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