瓶コーラの自販機の扉は思ったより低く、背を屈めなくてはならない。
その先には一間の待ち合いスペース。
吹雪を除けたり、コートを脱ぎ着するための部屋でもありながら、店内への期待をさらに膨らませる。
そんな仕掛けに感心しながら通されると、視界の先にライトアップされた木立が入ってきた。
カウンター越しの大きな窓の向こうに雪景色が広がっているのである。
ニセコのひらふエリアを歩くと高級で洗練された造りの宿泊施設や店舗が立ち並ぶ。
名だたる外資系ホテルのオープンもこのあと控えているという。
それらに比べるとバーギュータスの佇まいは簡素に見えるかもしれない。
しかしながら店内に流れるアナログレコードの質感そのままに、手作りの温もりと創意工夫に溢れている。
バブル的な狂騒が始まる以前から根っこを張っていたこの店で余市を味わうと、
北海道のニセコへはるばるやって来た実感に包まれる。
4月の一週目を過ぎる頃、このバーは長い休業に入る。
ニセコに世界中から観光客が押し寄せるのは冬。
春先には雪が溶けるかの如く賑わいが去って行く。
初めて訪ねたのはそんな時期だったが、自販機の扉を出ると街灯に名残雪が激しく舞っていた。
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