TONALITY OF LIFE

作曲家デビュー間近のR. I. が出会った
お気に入りの時間、空間、モノ・・・
その余韻を楽しむためのブログ

♪「TYPHOON」が似合う町

2012-07-12 21:17:54 | 旅行
少し前に通り過ぎた雨が、空気の粒子を膨張させていた。
ただでさえ海洋性の湿り気に晒された町。
夏の植物が発散するエネルギーと合わさって、濃密な夕方を迎えている。
駅の裏手に広がる住宅街、昔住んでいた家はまだあるだろうか。

松任谷由実1983年のアルバム『VOYAGER』。
B面の2曲目に位置する♪「TYPHOON」は、十代を過ごした瀬戸内の記憶と繋がっている。
下がった気圧を想起させるイントロ。
台風は必ずやって来て、「夏の島」は2階の部屋から見えたし、
「ちっぽけな町」はまるでそのものだった。
もともと小林麻美に提供された作品だという。
なるほど、検索して聴いてみると彼女の声質に寄り添っている。
この曲の色っぽさは当時まだ知る由もなかったが、雰囲気だけで十分だった。
♪「夕涼み」、♪「月夜のロケット花火」と並んで
あの頃へトリップさせてくれるR. I. にとってのユーミン夏の三部作。

果たしてその家は、まだあった。
視界に入ったときの安堵感...外構が少し変わっているけれど中央にレンガを敷いたガレージはそのままだ。
両親が転勤となって数年後、悩んだ末に手放した家。
2階の窓は雲の多い夕空を映し出していた。
あそこから見えた景色を探しに、近所を歩いてみることにした。
住宅地は海側の斜面にも拡張され、その一画にセンスのいいカフェを見つけた。
そこのテラスからの眺めの懐かしさ。
当時急に感じていたはずの坂は今歩いたらなだらかだったのに、
この景色は昔のままぴったりと一致していた。