TONALITY OF LIFE

作曲家デビュー間近のR. I. が出会った
お気に入りの時間、空間、モノ・・・
その余韻を楽しむためのブログ

屋久島の魅力的な植物たち

2023-10-22 22:11:55 | 旅行

考えてみると南への旅行は久々である。
どちらかと言えば北に憧れがあるものの、植物の多様性においては南国に敵わないことを実感した。
独創的な形状の花や葉っぱに、色の鮮やかさ。
タヒチがポール・ゴーギャンの、奄美が田中一村の絵筆に刺激を与えたのは想像に難くない。
旅程の最終日に宿泊したsankara hotel & spa屋久島は、植物好きにもお薦めの宿である。
本館と、敷地内に点在するヴィラは、カートで送り迎えしてくれるが、
少々の雨ならば傘を手に歩いて行き来するのが楽しい。
手入れの行き届いた熱帯の植物たちはときに芳香も放って、極上のリラックスを与えてくれるのである。

チェックインのラウンジから見えた背の高いヤシの木。プールサイドにもよく映える。

プルメリア。鼻を近づけると濃密な香り。

エントランス横のサクララン。ホテルの植栽チームが丹精込めて伝わせているとのこと。

美しいパープルの花の和名はシコンノボタン(紫紺野牡丹)。
雄しべの造形が熱帯的と思いきや、ブラジル原産で、まるでクモが歩いているように見えることから
ブラジリアン・スパイダー・フラワーの別名を持つ。

極楽鳥花ことストレリチア。
花屋で売られているのを見たことはあっても、実際の植生を目にしたのは初めて。

たわわに実った先にはバナナの花? 巨大な葉っぱにも驚かされる。
数日後、ホテルのインスタに収穫がアップされていた。追熟させていくのだという。

レストランでは新鮮な地場の食材が見事にアレンジされていて、ヴィラの快適さも申し分なく、
まさに楽園と呼ぶに相応しいホテル。
屋久島の気まぐれなお天気に植物たちは表情を変える。
揺れたり、影を作ったり、雫をまとったり...
チェックアウトの日の晴れ間、無数の蝶とトンボが飛び交っていたのも天国的な趣があった。

サンカラ屋久島 sankara hotel &spa Yakushima


人生7回目のスキーは奥志賀で

2021-04-19 00:22:12 | 旅行

板に靴をはめるときのカチッという音にかつてないほど高揚した。
数えてみると2年ぶり、人生7回目のスキーである。
滑るという感覚を身体が無性に欲して奥志賀へ。
いつも初心者への後退を痛感するところからスタートするのが、
今回は一本目の滑走からインプットされているのが分かった。

リフトを乗り継ぐと、山並みの後方に新たな白銀の峰々が現れる。
まるで壁のような連なりもあれば、尖った山容も顔を見せるのが信州ならではの山岳風景。
蝦夷富士ことニセコ・羊蹄山のファンになってから久しいものの、
本州の強靭な背骨を感じさせるスケールに思わず息をのんだ。


この冬は日本各地で記録的な降雪のニュースを耳にしたが、
3月に入ってからは溶けるスピードが速いという。
信州中野ICを下りてから奥志賀へと向かう路面も雪は残っていなかった。
二日目と四日目は天気もよく春スキーならではの汗をかいた。
初日に雪が舞ったのはラッキー、三日目は強風でリフトが動かず落胆したが、
膝や太腿を休めることができたのは逆によかったかもしれない。
最後の日はいつも限界へと突き進む。

http://www.okushiga.jp/skiresort/


別世界的名店 Vol. 10 ~ 奥志賀高原・BAR ALPINA

2021-04-10 17:40:33 | 旅行

暖炉こそ冬の最高のもてなしだと思う。
まるでセンターステージのように鎮座するのは奥志賀高原ホテルのラウンジ。
その炎を眺め、薪のはぜる音に耳を傾けるだけでも訪れる価値があろうというもの。

スキーリゾートが大衆のものではなかった時代からの歴史を持つホテル。
点在する多角形の空間は、「雪の結晶をモチーフにしているらしいです」と館内のフレンチで聞いてから
一体誰が設計したのだろうと気になった。
すぐに平島二郎(1929-1998)という建築家の代表作であることを見つけると、
作品リストには母校の図書館も載っていたから俄かに親近感が湧いた。
天井の梁が作り出す幾何学的なリズムも心地いい。

3月下旬の奥志賀は汗ばむ陽気の日もあって、ホテルのなかは薄着で過ごせるほど。
それでも夜な夜な炎を眺めに通い詰めた。
カルヴァドスにピートの効いたウィスキー、春先はパンチのある香りが欲しくなる。
生産者から独自のルートで入手したという稀少なボトルも置かれているあたり、
帝国ホテル出身のバーテンダーの存在を聞いて合点が行った。
コースターには「BAR ALPINA」の文字。


別世界的名店 Vol. 9 ~ 長野県大町市・美麻珈琲

2020-09-19 12:03:49 | 旅行

一杯のコーヒーを味わいに山道を走る。
カーナビに頼りながら、風を切って、緑を縫って。 

別世界的名店は、不便な場所にあることも少なくない。
それにより道行きは非日常的な体験となる。
わざわざ足を運ぶ価値が伴えば、人里離れていても商いは成立すると思うのである。
美麻珈琲もそんな一軒。

美麻(みあさ)とは麻作りに由来する地名で、その文字面や響きも心地いい。
道路標識の方向に記された「長野 美麻」は、アイドルの名前のようだと感じながら、
いざ到着してみるとコーヒーマイスターは全員女性という偶然の一致があった。
渋いマスター像は裏切られた格好だ。
店は山間の31号線から折れて、未舗装の坂道を進んだ先にある。
登り切って少しだけ下った左手にストローベイル(藁のブロックを積み上げる工法)の一軒家、
反対側の斜面には蕎麦畑の明るいグリーン、
その隣には大きな池と、絵になる風景が連なっている。
池は長雨の影響でこの時期には珍しく姿を現しているのだとか。
店内の席が空くのを待ったのだが、結局は森林の香りも届くテラス席で、
珍しい南インド産の爽やかな一杯を味わった。

http://www.miasacoffee.com/


夏のhaluta hakubaに宿泊する

2020-09-12 12:42:54 | 旅行

北欧好きやリフォームに関心のある方に、ぜひお薦めしたい宿である。
周辺は昔ながらのスキー客用の民宿や古民家が立ち並ぶエリア。
デンマークにも拠点を持つハルタが目を付けた一軒は、白を基調に改装され、
部屋にも共用スペースにも同社が取り扱うヴィンテージの家具などがふんだんに投入されている。

滞在中は特に照明に目が行った。
エントランスを入って右手のものは、まるで眼底検査で撮影されたかのようなデザイン。
コペンハーゲンの空港で実際に使用されていたものだという。
温浴エリアの壁を照らすのは、襞のあるベージュのシェードから漏れる灯り。
角笛のような支柱とともにシャーマニズム的な妖しさを醸し出す。
R. I. 一番のお気に入りは、ダイニングの窓際のものだった。
コードが滑車を伝って、その先に小さな裸電球が吊り下がっている。
いずれもブラケット(壁掛け)タイプなので、真似てすぐには取り付けられないのが難点である。

 


ところで、朝食のパンは自家製で、これもhalutaが力を入れている分野。
ナッツ類やドライフルーツが練り込まれた特大サイズは、ハイキングのお供にもなった。
白馬の夏は太陽との近さを感じさせる暑さでありながら、
石を溶かした断熱材とエコな冷房システムにより、館内はひんやりと心地いい。
馬毛を使用しているという寝具は、入眠までのひととき極上の幸せを与えてくれた。

https://haluta-hotels.com


別世界的名店 Vol. 8 ~ ニセコ・Bar Gyu+(バーギュータス)

2019-01-20 13:24:19 | 旅行

瓶コーラの自販機の扉は思ったより低く、背を屈めなくてはならない。
その先には一間の待ち合いスペース。
吹雪を除けたり、コートを脱ぎ着するための部屋でもありながら、店内への期待をさらに膨らませる。
そんな仕掛けに感心しながら通されると、視界の先にライトアップされた木立が入ってきた。
カウンター越しの大きな窓の向こうに雪景色が広がっているのである。

ニセコのひらふエリアを歩くと高級で洗練された造りの宿泊施設や店舗が立ち並ぶ。
名だたる外資系ホテルのオープンもこのあと控えているという。
それらに比べるとバーギュータスの佇まいは簡素に見えるかもしれない。
しかしながら店内に流れるアナログレコードの質感そのままに、手作りの温もりと創意工夫に溢れている。
バブル的な狂騒が始まる以前から根っこを張っていたこの店で余市を味わうと、
北海道のニセコへはるばるやって来た実感に包まれる。


4月の一週目を過ぎる頃、このバーは長い休業に入る。
ニセコに世界中から観光客が押し寄せるのは冬。
春先には雪が溶けるかの如く賑わいが去って行く。
初めて訪ねたのはそんな時期だったが、自販機の扉を出ると街灯に名残雪が激しく舞っていた。

https://www.gyubar.com


ニセコのパウダースノーを体験する

2019-01-13 21:22:20 | 旅行
晴れ間がのぞくと雪原にはゴンドラの影、行く手にはニセコアンヌプリ山の頂が姿を現した。
美しい二等辺三角形は、白いパテをへらで仕上げたかのよう。
モンブランに引けを取らないケーキのモチーフになり得ると思う。

ニセコで2度目となるスキーはヒルトンに滞在し、ホテル直結のニセコビレッジスキー場を満喫した。
プランに含まれていたリフト券がカバーするのはニセコビレッジのみ。
全山共通のリフト券だと前回滑ったニセコグラン・ヒラフスキー場やニセコHANAZONOスキー場まで足を延ばせるのだが、
ニセコビレッジのコースだけでも初心者には申し分ない。
ゴンドラに乗っては、だべさ〜エンチャンメント〜メイク・センス〜アンフォゲッダブルという初心者コースを滑り降りた。
その先はホテル方面へ戻る“ばんざい”か、スキー場の一番端を周る“クルーザー”というコースに分かれる。
クルーザーはすぐ隣に森が広がっていて落ち着いた雰囲気がいい。
人も少なめで積もったばかりの雪に最初の跡を残せる。

ニセコへはこの一年で3度リピートすることになった。
最初は昨年4月のスキー、夏もいいと言われて8月に再訪
その後移住願望まで芽生えたのとパウダースノーを体験したくて元旦に飛んだ。
“パウダー”は今やニセコの代名詞。
「powder life」というフリーマガジンがあったり、コーヒースタンドの出口に「THIS WAY OUT TO THE POWDER」と書かれていたり。
しかしながら30年来ニセコへ通い詰めているというスキーヤーから、ここ5年で雪が重くなっているという話を聞いた。
オーストラリア訛りの英語、中国語が飛び交う以前のニセコはどんなところだったのか。
それを彷彿とさせるバーがある。

夏のニセコ滞在でまず最初にすべきこと

2018-08-22 00:19:49 | 旅行
それは羊蹄山の湧き水を汲むこと。
汲むと言っても湧水池には蛇口が設けられ、豊富な水が常時溢れ出している。
ただで手に入るとあって訪れる人は後を絶たない。
お米を炊いたのも、鮟鱇の切り身を茹でたのもニセコの水。
コンドミニアムの水道水がイマイチだったので、名水は余計に美味しく感じられた。
非常時用のタンクを持参するのがお勧めである。

夏の滞在はレンタカーのおかげで行動範囲がぐんと広がった。
改めて観光ガイドを見ると湧泉はいくつかあるのだが、
専ら立ち寄ったのは細川たかしのふる里・真狩(まっかり)にある横内観光農園の湧き水。
隣接する豆腐店の賑わいもさることながら、
名水がもたらす驚愕の味はほかにもあった。

風になる、鳥になる

2018-05-05 23:05:19 | 旅行
5年前にカナダ・バンクーバ―島でスキーをしたとき、
風と一体化して、このまま鳥のように浮揚できるのではないかと感じさせる斜面があった。
上昇するスピードになんとか耐えることのできる、初心者にとって絶妙な勾配だったのだろう。
もう一つ覚えているのはそこの幅が狭かったこと。

この春人生5度目のスキーが北海道・ニセコで実現し、あのときとまさに同じ感覚が蘇るコースに出合った。
横2列で滑れるほどの幅で、下った先は右にカーブしている。
最後は傾斜が無くなるのを分かっているから、スキーを平行にしたまま加速に身を任せる。
前傾のままスネに力を掛け続けると、スピードの計測針を振り切ったかのようだ。

シアトルあたりから日本へ飛び立つ航路では、カナダ沿岸部を北上し、眼下に大小さまざまな島を望むことがあった。
それらはアラスカ半島からアリューシャン列島へ、やがては千島から日本列島へと首飾りのように連なっていく。
静謐な空気を切り裂いて風になった体験から、
バンクーバー島と北海道は同じパズルのピースのように思えてならない。

ニセコでスノーシュー 〜 雪の上の自由を手に入れる

2018-04-27 12:49:10 | 旅行
羊蹄山の麓にある半月湖まで、往復約2時間のスノーシューネイチャーツアーに参加した。
ゲレンデを離れてニセコの大自然に触れたいと思ったのである。

スノーシューを初めて履くと、甲の部分を固定して、踵は浮かせる仕組みになっていた。
巨大な草履のような形状が体重を分散させて、雪に沈まない。
いざ歩き始めると、分厚い雪に覆われた森の中は、好きなように歩き回れるという発見があった。
面白い模様の木の幹や、フリーズした植物が目に入ると、近づいてはシャッターを押す。
夏だとクマザサの茂みに邪魔されてこうはいかないだろう。
雪の上は自由に移動ができるんです、とガイドさん。
積もった雪の分、高い位置から眺められるのもスノーシューツアーならでは。

目的地の半月湖へ降りる頃、雪が舞い始めた。
パウダースノーの時期はとっくに過ぎているそうだが、それでも細かな美しい粒だった。
フードに落ちる雪の音を聞きながら、用意してもらった紅茶を湖面の端ですする。
湖は凍っているのではなく、雪が積もっている状態なのだとか。
あまり進むと保証はできませんよ、と言われてミンモは引き返してきた。
家族3人とガイドさん以外には誰もいない。

星野道夫はアラスカでの体験や古老の話を聞くうちに、
アラスカの原野に対するイメージが徐々に変わっていったという。
「人間の手つかずに残された、どこまでも広がる未踏の原野は、実はさまざまな人間が通り過ぎた、物語に満ちた原野だったのだ。」
星野道夫著『ノーザンライツ』(新潮社、2000年)
テニスのラケットのようなイヌイットのスノーシューを見たことがある。
雪に閉ざされる季節が長いからこそ、逆に自由な行き来が手に入ったのかもしれない。