TONALITY OF LIFE

作曲家デビュー間近のR. I. が出会った
お気に入りの時間、空間、モノ・・・
その余韻を楽しむためのブログ

1969年産のブルゴーニュに出逢う

2019-03-25 00:42:20 | グルメ
それぞれ手にしたグラスが乾杯とともに美しい軌跡を描いた。
注がれたのは1969年産のブルゴーニュ。
皆の期待が最高潮に達したその瞬間がスローモーションで蘇る。

両親の金婚式のために押さえてもらったとっておきの一本は、
まず電話でブルゴーニュの赤と告げられ、追ってメールで詳細が送られてきた。
Pommard Les Arvelets
Remoissenet Pere et Fils
検索すると情報は次から次に現れて、
「ポマール」はブルゴーニュ地方、コート・ド・ボーヌ地区にあるワイン生産地、
「ルモワスネ・ペール・エ・フィス」は生産者の名前であることが分かった。
何よりも1969年は「第二次世界大戦以降で最も素晴らしい年の1つと言われています」というコメントに胸が躍らされた。

ソムリエと言えば、ワインのアドバイザーとしての印象が強かったのだが、
ヴィンテージワインが相手となれば開栓こそ腕の見せどころとなる。
コルクの様子が見えるようにキャップシールはすべて剥がされた。
顔を覗かせた部分は50年の歳月を証明するかのように黒ずんでいた。
灯されたキャンドルのもと、プロの道具を使って開栓は進む。
軟化していて一度は折れたものの、やがて銀のトレイには、まるでオペで取り出された臓器のようにコルクが横たわった。

果たして1969年産ブルゴーニュ赤の味は、一言で形容するならば、紹興酒に似ていた。
状態の保証は致しかねます、と言われていたのはエクスキューズで、大切に保管されてきたことが窺われた。
「種を噛み砕いてリコリスの味がしたら収穫時」というセリフにときめいたのは、映画『ブルゴーニュで会いましょう』。
50年前そんな風に摘まれたであろうブドウがワインに変わって、
2019年、東京の高層ビルのとあるレストランで再び空気に触れたという奇遇。
祝宴のハイライトをさらったヴィンテージの存在は偉大である。
これまで断然ボルドー派だったのが、この出逢いを機にブルゴーニュを知りたいと思うようになった。
ワインの王と呼ばれるのも、あのロマネコンティも、ブルゴーニュだったとは。