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TONALITY OF LIFE

作曲家デビュー間近のR. I. が出会った
お気に入りの時間、空間、モノ・・・
その余韻を楽しむためのブログ

甘味礼讃 Vol. 7 ~ ボナイユート チョコレート

2022-01-23 17:07:47 | グルメ
数年前に参加したマインドフルネスの研修では、
冒頭でチョコレートが配られて、3分掛けて口の中で噛まずに溶かしていきましょうと、
その間すべての意識をそこに向けるという体験から始まった。
カルヴァドスを飲みながらボナイユート チョコレートを味わう行為はそれに似ている。
鼻腔口腔を刺激する40度のパンチを、ときにチョコレートでかわしながらじっくりと味わうのである。
 
「アンティーカ・ドルチェリーア・ボナイユート」はシチリア南東部・モディカにある老舗のチョコレート店。
シチリアがスペイン王国の統治下にあった16世紀頃、
アステカ帝国で薬として食されていたチョコレートのレシピとカカオが持ちこまれ、
古式ゆかしい製法が今も守り続けられているというから驚きである。
口溶けよくするためのレシチン(乳化剤)やバターを使わないため、
砂糖の粒子が残って独特のシャリシャリとした食感が生まれるという。
その粗さをカルヴァドスが徐々に侵食していく感覚がたまらない。
 
輸入元のサイトには約20種にも及ぶカラフルなパッケージが紹介されており、
フレーバーの元となる果実や植物などの図案が目を引く。
マンダリンオレンジ、レモン、ジンジャーと3種類を試したところで
カルヴァドスのボトルは空になる日が見えてきた。
 
 
参考URL:

夜な夜なカルヴァドス

2022-01-15 20:40:31 | グルメ

1989年産のカルヴァドス ルモルトン。
昭和から平成へと移り、高校を卒業〜浪人生活へと入った忘れられない年である。
ヴィンテージならではの歳月を味わおうと正月三が日に開栓した。

「シャンパン」がフランスはシャンパーニュ地方で造られたものに限定されるのと同様に、
「カルヴァドス」を名乗るにはノルマンディー地方が条件になるという。
この地方には約800種類ものリンゴがあると記載したサイトの真偽はともかく、
そのなかでカルヴァドス用として認められているリンゴは48種類、プラス数種類の洋ナシなのだとか。
調べていくうちに「ルモルトン」は、銘醸地ドンフロンテ地区で農園を営むルモルトン家が
自家醸造、自家熟成させて造るカルヴァドスであることが判った。
洋ナシの割合が高いのがこのエリアの特徴で、
リンゴ100パーセントのものよりも香りの幅が広いと感じる。

さて、飲みながら時の流れに思いを馳せようとしたものの、
偶然手に入れたボナイユート チョコレートとの相性があまりにすばらしく
意識はそちらに持っていかれてしまった。
鼻腔口腔への強烈なパンチに緩急を付けてくれる
シチリア産古代チョコレートの話しは次のエントリーで。

参考URL:
https://lemorton.com/en/home/
https://anyway-grapes.jp/producers/france/normandie/lemorton-/index.php
https://brandydaddy.com/entry/chishiki-20-calvados/


鏡餅とシャンパンと

2021-01-02 12:04:33 | グルメ
真空パックの鏡餅は便利だが、プラスチックのミカンだけはいただけない。
できればお餅はそのまま飾りたいし、葉っぱ付きの本物のミカンを載せてみたいと思い続けていた。
年の瀬のスーパーでお餅の専門店がコーナーを構えていたのであれこれ聞いてみたところ、
やはり空気にさらすのはお勧めできません、
ひび割れとカビ防止のため真空の袋に入れたまま飾ってください、と言われる。
迷いながら一旦退いて別のスーパーへ用事を済ませに行くと、鏡餅用の橙(だいだい)が売っているではないか。
後で知ったのだが、ミカンではなく橙。
その意味は、春になると落ちるミカンとは異なり、橙は一度実がなると4~5年以上落果しないことから、
健康長寿の家庭・家族に見立てるのだという。
長崎産の立派な橙を手にした途端、先ほどの餅を直に飾る決心がついた。
どのようにひび割れるのかも見届けようではないかと。
ところがいざ餅の売り場に戻ってみると、想定していたサイズは大き過ぎた。
一回り小ぶりなものに変えたのが、橙とアンバランスになってしまった理由だ。
奇跡的に安定しているので、鏡開きまでこの状態をキープできるかどうかで今年の運勢を占ってみようか。
作法としては至らないところもあるに違いないが、我が家の鏡餅の完成である。

ところで、今年のお節にはシャンパンを組み合わせた。
全体的に甘みに寄った味つけとの相性も抜群なのである。
鏡餅を正面に見ながら、時おり新春の陽光に煌く泡を愛でる。
最近会話のない娘とは少しだけキャッチボールが弾んだ。


甘味礼讃 Vol. 6 ~ モリ・ヨシダ・パリのモンブラン

2020-11-20 01:02:50 | グルメ

落ち葉のなかの松ぼっくりに薄霜が降りる。
大きなガラスのショーケースではこのモンブラン一種類が林立していたので、
単体で眺めると新しいイマジネーションが湧いてきた。

数日前に味わった栗きんとんが、栗への欲望に火を付けた。
今度はモンブランを食したいと思うようになり、久々のオフィス出社の帰りに立ち寄ったのがモリ・ヨシダ・パリ。
パリで認められた日本人パティシエ・吉田守秀の日本初出店は、
一年前の渋谷スクランブルスクエア開業時に話題となったものだ。
近年独創的なモンブランが巷間を賑わしているのを知ってはいたものの、
モリ ヨシダの意匠はその上を行く。
一体どのようなテクニックで松笠状にクリームを絞り出しているのだろうか?

思うに日本人パティシエの活躍は、和菓子文化の基盤のうえに成り立っている。
つまり、和菓子で表現される季節感が、松ぼっくりのモンブランに昇華されたと解釈する。
また、茹でた栗を潰して菓子にするという発想は、栗きんとんとモンブランに共通するもので、
そのような洗練された食文化を元から有していることも、日本人が洋菓子の本場で花開く理由に違いない。

さて、味の方は全体的に甘さ控えめで、落ち葉の部分の薄いパイ生地が食感のアクセントとなっている。
晩秋の小さきものに注がれたパティシエの眼差しを勝手にイメージしながら、栗の風味を堪能した。

https://moriyoshida.fr/ja/


1969年産のブルゴーニュに出逢う

2019-03-25 00:42:20 | グルメ
それぞれ手にしたグラスが乾杯とともに美しい軌跡を描いた。
注がれたのは1969年産のブルゴーニュ。
皆の期待が最高潮に達したその瞬間がスローモーションで蘇る。

両親の金婚式のために押さえてもらったとっておきの一本は、
まず電話でブルゴーニュの赤と告げられ、追ってメールで詳細が送られてきた。
Pommard Les Arvelets
Remoissenet Pere et Fils
検索すると情報は次から次に現れて、
「ポマール」はブルゴーニュ地方、コート・ド・ボーヌ地区にあるワイン生産地、
「ルモワスネ・ペール・エ・フィス」は生産者の名前であることが分かった。
何よりも1969年は「第二次世界大戦以降で最も素晴らしい年の1つと言われています」というコメントに胸が躍らされた。

ソムリエと言えば、ワインのアドバイザーとしての印象が強かったのだが、
ヴィンテージワインが相手となれば開栓こそ腕の見せどころとなる。
コルクの様子が見えるようにキャップシールはすべて剥がされた。
顔を覗かせた部分は50年の歳月を証明するかのように黒ずんでいた。
灯されたキャンドルのもと、プロの道具を使って開栓は進む。
軟化していて一度は折れたものの、やがて銀のトレイには、まるでオペで取り出された臓器のようにコルクが横たわった。

果たして1969年産ブルゴーニュ赤の味は、一言で形容するならば、紹興酒に似ていた。
状態の保証は致しかねます、と言われていたのはエクスキューズで、大切に保管されてきたことが窺われた。
「種を噛み砕いてリコリスの味がしたら収穫時」というセリフにときめいたのは、映画『ブルゴーニュで会いましょう』。
50年前そんな風に摘まれたであろうブドウがワインに変わって、
2019年、東京の高層ビルのとあるレストランで再び空気に触れたという奇遇。
祝宴のハイライトをさらったヴィンテージの存在は偉大である。
これまで断然ボルドー派だったのが、この出逢いを機にブルゴーニュを知りたいと思うようになった。
ワインの王と呼ばれるのも、あのロマネコンティも、ブルゴーニュだったとは。

甘味礼讃 Vol. 5 ~ ピエール・エルメのマカロン「ジャルダン ゼン(禅の園)」

2015-11-30 00:04:05 | グルメ
2015年の春から秋にかけ月替わりで発表されてきたピエール・エルメのマカロン “ジャルダン シリーズ”、
その掉尾を飾るのが「ジャルダン ゼン」こと「禅の園」である(写真手前)。
使用されているのはなんと白味噌風味ガナッシュショコラ。
フレンチの巨匠がこぞって味噌を絶賛するのは知っていたが、白味噌というのが心憎い。
マカロン「オリーブ」に出合ったときの衝撃を予感したところ的中した。
中心部に埋め込まれた白味噌はオリーブ片と同じ役割。
ショコラの甘味とせめぎ合いながら調和へと移ろい、やがてはカカオの余韻を引き立てるのである。

ちなみにシリーズの全容は以下。
4月 ノルデステの園(ブラジルコーヒー風味、ショウガのコンフィ)
5月 ペルーの園(ルクマ風味)
7月 太陽の園(オリーブオイルとレモン風味)
8月 コルシカの園(ネピタ風味)
9月 松の園(松の蕾風味)
10月 干し草の園(メリロートとハルガヤ風味)
11月 禅の園(白味噌風味、サブレ)

エキゾティックな果実に繊細な芳香…
これだけ次々とアイディアが涌き出せば、マカロン「オリーブ」に遭遇する機会も減ろうというもの。
エルメのまるで科学者か植物学者のような探究心はますますその領域を広げているようだ。
写真の奥は「松の園」と「干し草の園」。
過去の “ジャルダン” を諦めていたところ、直近の3種が箱入りのセットでのみ販売されていた。
全神経を味蕾に集中させ、キスをするように一口目。
圧倒的な個性を放ったのはやはり「禅の園」なのであった。

https://www.pierreherme.co.jp/collections/jardins.html

別世界的名店 Vol. 7 ~ 秋谷・PLAGE SUD(プラージュ・スッド)

2015-04-25 00:44:34 | グルメ
この坂は少々勇気がいる。
逗子をあとに134号線を南下し、
長者ヶ崎のカーブを曲がってしばらくすると海側にアルファベットの看板が見える。
ここで右斜め前方へとハンドルを切らなくてはならない。
急勾配で海に落ちて行く感じと一本の太い椰子の木が、アマルフィ海岸的な別世界へと誘うのである。
バウハウス風のモダニズムを湛えた白い外観も美しい。


店内は半円のスペースに180度窓がある。
そこから見えるのは海だけ。
水平線や白波を見ながら初めて来た日のことを思い出していた。
このあたりは実家がほど近いかみさんのテリトリー。
デートで葉山近辺を案内してもらうことになった。
横横道路を走ると、三浦半島の地名が現れては後ろへ飛び去って行くのにワクワクしたものだ。
そして東京から1時間のドライブでこんな絶景があることに驚いた。
以来葉山と言えば(正確には秋谷だが)、真っ先にこの店が浮かぶのである。

http://plage-sud.com

甘味礼讃 Vol. 4 ~ 渋谷・ドゥ マゴ パリのタルトタタン(タルトタタンとラフマニノフの休日)

2014-11-21 00:32:29 | グルメ

一言でいえば、リンゴのあまりにも魅力的な変容。
1989年の開店以来この店で圧倒的な人気を誇っているという味をコンサートの前に確かめた。
ホームページによると「しっかりしたリンゴの素材感」を出すのに最適な品種を追い求めた結果、
「硬めの富士」という結論に至ったとのこと。
シンプルであるがゆえにものを言う素材選び。
甘酸っぱさと生クリームの相性がまた秀逸である。
この日は両親を招待し、後日談として母が絶品のタルトタタンを繰り返し話題にしていると父から聞いた。
どうやらコンサートの印象を上回ったらしい(笑)。

さて、そのコンサートはN響のオーチャード定期第81回。
お目当てはラフマニノフのピアノ協奏曲第2番である。
もはやこの曲を浅田真央のスケートと切り離して聴くことはできない。
ソチでは失意のショートがあったからこそ、フリーの偉業が際立ったのも事実。
彼女が一体どんな覚悟でフリーに臨んだのかを考えるだけで出だしから目頭が熱くなった。
重厚な旋律に乗って成し遂げられた最高難度のプログラム。
第3楽章では伊藤みどりのアルベールビルを思い出し、
R. I. のなかではもう完全に別名“トリプルアクセル・コンチェルト”なのである。
指揮者のレナード・スラットキンが健康上の理由でキャンセルとなったのは残念であったが、
代役のクリスティアン・アルミンクは同い年ということで注目した。
上背があるので手を伸ばすと管楽器の最前列にまで届きそうなダイナミックさがある。
例の浅田真央のステップの部分はテンポを落としてゆったりと荘重に聴かせてみせた。
ラフマニノフという作曲家はとにかく音が多い。
SACDで録音年度の新しいディスクを聴くと、こんなところでこんな音が鳴っていたのかという発見に都度出くわす。
この日座ったバルコニー席からはピアノのハンマーが大量の塊となって上下しているのが目に入った。
ピアノのオルガ・ケルンは抜群の安定感。
第1回ラフマニノフ国際ピアノ・コンクールの覇者だそうで、すでに十八番であることが窺えた。

N響オーチャード定期 第81回
2014 11.9 sun
Bunkamuraオーチャードホール

http://www.bunkamura.co.jp/magots/topics/post_10.html


別世界的名店 Vol. 6 ~ 青森・BAR港屋

2014-04-19 15:30:08 | グルメ
人間が営む以上、名店にも終わりは訪れる。
青森駅にほど近い港屋は、いつかまた寄りたいと思い続けていたBAR。
2012年4月をもって閉店したことを知る。

東京に転勤が決まったとき、取引先の店長が連れて行ってくれた。
おそらくとっておきのBARであったに違いない。
10年以上も前で記憶はおぼろげ、
それでも流れていた音楽がマーラーのアダージェットだと気付いたときの衝撃は今でもはっきり憶えている。
船の中のBARをイメージしたという別世界的な空間。
弦の響きが異国の海原へと誘った。

マスターは矢野顕子の実弟。
実家は開業医で、なんと医院のビルの2階がBARになっていた。
もう一度あの意外性たっぷりの場所で漂いたかったと思うのである。
記念に持ち帰ったはずのロゴ入りコースターがどうしても見つからない。

甘味礼讃 Vol. 3 ~ フルーツテイストのクリームチーズ

2013-05-06 09:18:05 | グルメ
パンに塗ったときの爽やかな風味は格別である。
イチオシはチーズ王国で販売されている北海道滝上町のフレッシュクリームチーズ。
季節限定というフレーズにも惹かれて、甘夏マーマレード味のリピーターになった。
最初に試食させてもらったとき、蔵王のクリームチーズがすぐに思い出された。
仙台のバーではよくクラッカーの上に盛られて登場したものだ。
ほどなく市内のデパ地下でそのラ・フランス味と出会う。
珍しいうえに東北に産地があることから、仙台ならではの味として印象に刻まれることになった。
ちなみに正式名称は「蔵王クリーミースプレッド ラ フランス」。
身内が仙台に転勤したという会社の先輩にリクエストしていたところ、忘れずに買ってきてくれた。
北海道 vs 蔵王。
フルーツテイストのクリームチーズが並んだゴールデンウィークの朝食。

http://www.cheese-oukoku.co.jp/
http://www.zao-cheese.or.jp/shop/products/list.php?category_id=6