TONALITY OF LIFE

作曲家デビュー間近のR. I. が出会った
お気に入りの時間、空間、モノ・・・
その余韻を楽しむためのブログ

暴かれた秘密の入り江 〜 ジュリア・ファイファー・バーンズ州立公園

2017-01-23 00:36:52 | 旅行
断崖絶壁が続く海岸線の途中に完璧な入り江があった。
砂浜に流れ落ちる一条の滝が入り江を特別なものにしている。
この地の女性開拓者で、州立公園の名前にも冠されているジュリア・ファイファー・バーンズお気に入りの場所だったという。
本当ならば誰にも教えたくない秘密の入り江であったに違いない。
パーキングに車が溢れて、遊歩道は世界中からの観光客でごった返している状況を見たら何と思うだろうか。
ビーチは立ち入り禁止で、見下ろすようになっているのが救いである。

1号線を挟んだ山側にはトレイルがあって、眼下の絶景を眺めながら上へと続くらしい。
人の気配を感じること無くこのエリアを満喫したかったのだが一日足りなかった。
年末のホリデイシーズンとは言え、観光客の多さに閉口した。
近くにある崖上のレストラン・ネペンセはランチに1時間待ち。
特製のアンブロージア・ハンバーガーは期待を裏切らなかったが、
18ドルという値段からも分かるとおりすっかり観光地化されているのである。

それでも砂浜に寄せては消える波の跡を見ながら想像だけは膨らんだ。
夏の午後、満月の晩、ジュリアはこの入り江でどんなにロマンティックな時間を過ごしたことだろう。
かつては先住民の土地であったとは言え、
フロンティアの大自然に共感を寄せた白人の話しは悪くない。

http://www.visitcalifornia.com/jp/attraction/ジュリア・ファイファー・バーンズ州立公園

カリフォルニアの海岸線をドライブする 〜 ビッグ・サーに心を掴まれて

2017-01-15 18:14:10 | 旅行
オレゴンの内陸は凍てついているというから、年末年始はカリフォルニアのコーストで会うことにした。
ロサンゼルスからサンフランシスコまで北上するというのが当初の案。
しかしながらインとアウトを同じにした方が航空チケットが安いという理由で、
結局はサンフランを起点にL. A. 手前のサンタバーバラまで南下、再び同じ道を戻った。
道中でとりわけ心を掴まれたのがビッグ・サー。
断崖絶壁のはるか上を走る1号線からは水平線までの大海原を望み、
ワインディングロードはときに海に吸い込まれそうになったり、空に向かったりと、バードアイのパノラマが続く。
日没のすばらしさは言うに及ばず、眼下の岩場に砕け散る波や、雲間の太陽が沖合の一点を照らす様もスケールがでかい。
この地に魅せられてレストランや宿を始めた人々が少なからずいることも大いに頷けるのである。
なかには驚くような値段のスパも点在する。
ビッグ・サーと呼ばれるエリアは思ったよりも縦に長い。
初日からビッグ・サーの宿も考えたのだが、手前のモントレーにしたのは正解だった。
暗くなってからドライブは無謀というもの。



往路はモントレーとソルバングで連泊、復路はカーメルとサンフランに一泊ずつした。
この旅からのお薦めは、モントレー半島の17マイルドライブ、
ビッグ・サーのジュリア・ファイファー・バーンズ州立公園、
そしてカーメル付近のポイント・ロボス・ステート保護区。

http://www.visitcalifornia.com/jp

6月の修了式

2016-10-22 23:19:11 | 旅行
コメスメント(修了式)は6月に屋外でおこなわれると聞いた。
家族も参加してよいというから、ジューンブライドのガーデンパーティーのような絵が浮かんだ。
何と言っても日本の梅雨とは対極のベストシーズン。
しかもその日は2週間前から晴れマークをキープしていたのである。

果たして当日は予報どおりの完璧なお天気。
美しい木漏れ日を縫ってキャンパスに着くと、広い敷地の数箇所に式場が設営されていた。
人文系、社会系など近しい学部がいくつか集まって執り行われるのだそうだ。
スピーカーからはサム・スミスが流れ、木陰のテントには軽食とドリンク。
桜の季節の卒業式とは風情があまりに異なっている。
サングラスのまま祝辞を述べる教授陣にも驚かされた。

修了生は一人ずつ名前を呼ばれると、客席に向かって一列に並んだ。
アカデミックガウンに身を包んだ学生はもちろんのこと、
一族がこの日のために駆けつけた民族衣装の留学生がいたり、一目でエリートと分かる黒人がいたりと、
かみさんがこんな環境で学んできたのかという発見があった。
翌日の学部生の卒業式はかなり混み合うそうだが、
修了式はゆったりと時が流れて、西海岸のからっとした空のもと、樹々や芝生の輝きがただただ眩しい。
ハードな学業の終点を祝福するかのような陽射しに、席は木陰から埋まった。
大学のシンボルカラーのコード(先端がタッセル状になっている長い紐)を首に掛けているのは優秀な成績を収めた証。
かみさんはよく頑張った。

サンフランシスコ国際空港のワインバー

2016-10-09 11:59:46 | 旅行
サンフランの乗り継ぎで楽しみなのは83番ゲート付近にあるワインバー。
ナパやソノマを控える土地だけに、旅人がワイングラスを傾けているのはとても絵になる。
おススメは3種の飲み比べセット。
ぶどうの種類や産地、あるいは泡など10のカテゴリーのなかから、
往きは “Pinot Trilogy” 、帰りは “Sweet Fare” という甘口のセットを注文した。
乗り継ぎの待ち時間は嫌いではない。
慌ただしい日常の合間に生じる空白がいい。

http://sfuncorkd.com

清流が空を知った場所

2016-05-29 01:44:49 | 旅行
通り過ぎた春にまた会える。
連休明け、札幌での仕事を前に富良野を訪ねることにした。
ようやく芽吹き始めた北の大地。
道東自動車道に乗って、まず目指したのは占冠(しむかっぷ)。
森の神様が作った冠を、知恵を働かせたリスが手に入れましたとさ…
あるいは見とれるほど立派な角をもった牡鹿の物語。
地名からそんなファンタジーが膨らむ。

占冠を降りてからは山間の一般道を走った。
橋を渡る度に清流は道の左右に移動しながら、川幅を徐々に広げて行った。
この川の名前は「空知(そらち)川」。
雪融け水は川の中流で初めてお空に出合いました、といったところか。
アイヌ語の「滝が幾重にもかかる川」を意味するという「ソー・ラプチ・ペツ」にこの当て字。
イマジネーションを呼び起こすアイヌの響きのすばらしさ。



真冬のポートランド紀行 Vol. 3 ~ Ladd's Rose Gardens Circle and Squares

2016-01-25 00:24:49 | 旅行
ガイドブックで川の東側を眺めていたところ、面白い形状の区画が眼に留った。
周囲が碁盤の目になっているなかで、この一角はダイアゴナル(対角線)に道路が走り、
中央にサークル、それを取り囲む八角形の街路、そして4箇所にダイヤ形の緑地帯らしきものが設けられている。
住宅地なのか公園なのか、この幾何学的な場所を確かめることも目的に
DAY5は自転車を借りてミンモと橋を渡った。

結論から言うと、そこはやや古びた住宅街だった。
一戸一戸の区画は広く、街路樹やたくさんの庭木に囲まれているものの、地形が平坦なところが惜しい。
例えば放射状の中心が一番低い田園調布のような起伏があれば、この独創的な街区をもっと体感することができただろう。
中央のサークルは緑地帯、そしてダイヤ形はバラ園で、
「Ladd's Rose Gardens Circle and Squares」という名前を現している。
今は剪定が施され冬薔薇がちらほら咲いているだけだが、
半袖の頃には “Rose City” ポートランドの名に相応しい芳香に包まれることが想像できた。
あとで調べたところ、William Sargent Ladd(1826-1893)という人の発案だそうな。
ゴールドラッシュの波に乗って東部から西海岸へやって来て、
実業家として成功を収めたあとはポートランド市長も務めた人物とのこと。
サークルを望む「Palio Dessert & Espresso House」でお昼を食べた。





街区の外れには「Bee Thinking」という養蜂の専門店。
ハチミツはもちろんのこと蜜蝋キャンドルやTシャツといったグッズのほか、
巣箱から防護服まで本格的な養蜂具が販売されている。
レクチャーをおこなう教室も併設されていて
こんなお店が住宅街のなかにあるところもポートランドらしい。


このあとはビーガン料理の店「Harlow」を目指してさらに東へと漕いだ。
新鮮な小麦の若葉を圧縮したジュース “WHEAT GRASS” を飲むために。
自転車、橋、健康志向の食事もこの街のキーワード。

真冬のポートランド紀行 Vol. 2 ~ アメリカン・アートとの新しい出合い

2016-01-17 00:28:29 | 旅行
アメリカの美術と言えばホッパーとオキーフを知って以降、長らく更新が止まっていた。
しかしながらポートランド・アート・ミュージアムで、新しい出合いがあった。
共鳴したのはミルトン・エイブリーとデヴィッド・ローゼナック。
今回の旅行の思いもかけぬ収穫である。

Milton Avery(1885-1965)
Bathers, Coney Island, 1934
まず女性の水着の色に吸い寄せられた。
このグリーンが無ければ素通りしていたかもしれない。
背景の砂浜と海の対比といい、左端の赤茶といい、配色のセンスが際立っている。
タイトルも額も好みだ。
別のスペースにもう1枚あった。
Dancing Trees, 1960
やはり目が行って作者を確かめるとエイブリー。
驚いたのと同時に、この画家最大の魅力が色の配置であることへの確信が深まった。
また一見小学生が描くような線には、ホッパーに漂う孤独とは反対の親密性を感じる。




David Rosenak(1957-)
Untitled, 1995-2008
カラフルな季節も、強い陽射しを遮る街路樹のトンネルに入った途端モノトーンに変わることがある。
そんな光と影が独特のタッチで丹念に描かれていている。
木漏れ日が綾なす閑静な住宅街。
それはR. I. がいつか世に出したいと願っている作品の舞台でもある。
4点で一連の作品として展示されており、位置の指定も作者自身によるものなのか気になった。
どの絵にも人物が佇んでいるリアリティ。






オレゴンで活躍したアーティストの作品が特集されているフロアがあった。
Clara Jane Stephens(1877-1952)
ポートレートの写真は間違いなく美人である。
イングランド生まれで、ポートランドへは1894年にやって来たという。
Untitled(West Hills Nocturne, Rainy Night with Car Headlights), c. 1930 は、
雨の路面を走り去る車の音が聞こえてきそうな1枚。
この地に寄り添ってどんな生涯を送ったのか思いを馳せつつ眺めていた。


美術館はフラッシュなしの撮影が許可されている。
ミンモにカメラを渡すと、被写体として面白いのだろう、モダンアートがたくさん写されていた。

http://portlandartmuseum.org

真冬のポートランド紀行 Vol. 1 ~ ダウンタウンの表情

2016-01-11 22:31:31 | 旅行
8年ぶりのポートランド。
前回はリバーサイドに宿泊したが、今回はダウンタウンのど真ん中。
カウントダウン会場のパイオニア・コートハウス・スクエアまでも徒歩5分だし、
この方が街の活気や歴史を感じられて楽しい。

2015年の暮れ、R. I. は成田からデルタの直行便で、ママゴンとミンモはアムトラックの列車に乗って合流した。
朝晩の気温は氷点下、日中でも2、3度。
外を歩くと消耗したが、それでも後半晴天続きとなったのはラッキーだった。

ダウンタウンはクラシカルな印象。
近代的なビルよりも古い建物の方が目立っている。




今、全米住みたい街No.1の座にあるポートランド。
・全米で最も環境に優しい都市
・全米で最も自転車通勤に適した都市
・全米で最も外食目的で出かける価値のある都市
・全米で最も菜食主義者に優しい街
・きちんとした食生活で健康に暮らせる街
・知的労働者に最も人気のある都市
・全米で最も出産に適した街
として選ばれており、アメリカ人がここまで健康志向になっているのも驚きなのだが、
要は居心地がいいということなのだろう。

この街ではチェーン店よりも地元のショップが贔屓にされるという。
むろん旅先でスターバックスに入る気は起こらない。
滞在したホテルの近くにあったコーヒーショップ “Courier Coffee Roasters”。
店内はフィルターの入った段ボールやパレットの木材が無造作に置かれ、
流れているのはアナログのレコード。
壁に掛かった絵は地元のアーティストのもので、値札が付けられていた。
ちょっとしたアトリエのような空間である。
ポートランドのキーワード、まずはコーヒー、アナログレコード、そしてアート。


5月のオレゴン ~ 緑の大地に舞い降りて

2015-06-06 01:30:25 | 旅行
5月のオレゴンは緑の王国だった。
住宅街も大学のキャンパスもみずみずしい新緑に溢れていた。
家族寮の敷地に車で入ると、友達と遊んでいたミンモが輝く芝生の方から走ってきた。
ちょっと日に灼けて、背が伸びたミンモ。
郊外のbutte(平原の中の孤立した絶壁の山、というのが一応の定義)に登ると、
岩場もひょこひょこ進んで行く。
体力も随分ついたようだ。
頂上は360度の視界に加え、雲がとても近かった。
その雲の影が牧場や森林などいたるところにグリーンの濃淡を作り出していた。


空港でいつものように借りた車はなぜかフロリダナンバー。
レッドのSUBARUを駆ったワイナリーまでの道のりは、すれ違う車がほとんどない。
からっとした青空と緑のなかを飛ばすと、目的地までのマイルがみるみる減っていった。
目指したのは「SWEET CHEEKS WINERY」。


クリスマスツリー・ファームの思い出

2015-04-30 01:01:49 | 旅行
休暇の申請が通ってクリスマス前に渡米した2014年の暮れ。
そこでツリー・ファームへ出掛けることを思いついた。
昨年ドライブしたときに偶然見つけた看板を思い出したのである。
舗装されていない道路を進んだ先にオーナーさんの一軒家があった。
ノコギリを渡されると今来た道の両脇から好きなのを伐っていいと言われる。
モミの木が整然と植えられたファーム、という想像は外れた(笑)。
そもそも植えたものなのか自生していたものなのかさえ区別がつかない。


ノコギリを当てるとすぐに針葉樹の清涼な香りが放たれた。
三人で代わりばんこに引いて10分も掛からなかっただろう。
丈はミンモの背よりもちょっと低くてお代は3ドル。
Debbyさんはイルミネーションとシダーの葉っぱまでプレゼントしてくれた。
このシダーも実にいい香りで、リースにしたりディスプレイに使用するそうだ。

この晩からミンモが咳き込んで熱を出してしまう
それがママにうつって、パパにうつって、結局家族三人で1週間寝込んでしまった。
ミセス・レイトンに招かれたクリスマス・ディナーもレッドウッドの森へ行く計画も台無し。
このツリーを眺めながら家のなかで過ごすことになった。