冬の北山川上流の夜空には,京都の住宅地では見ることのできない星たちがたくさん輝いている.陽が落ちると同時に辺りは強く冷え込み,夜露で濡れはじめる.質素であるが暖かい食事とウイスキーで暖をとりながら,星空を眺めるのがこの時期の楽しみだ.
食事が終わってしまうと,もう寒くなって外にはいられず,テントの中の寝袋へと逃げ込む.翌日の計画を練るために寝転んで地図を眺めるも、面倒くさくなって眠ってしまう.そして,尿意の為に1時や2時ごろに目が覚めてはトイレへ行く.そんなことを繰り返しているうちに,すっかり夜が明けてしまう.
そんなときは,まずは湯を沸かし,暖かいコーヒーをちびちびと飲んでから,北山川へと散策に出かける.夜中は星空がたくさん見えるほど晴れていたのに,北山川の朝はやはり靄(もや)から始まる.このあたりは,北山川でも瀞峡より上流にあたる場所だ.
奇岩や巨岩のあいだを独特な青さの北山川の水が,静かに流れている.この荒涼とした景観は,日常の世界とかけ離れたところへ心身共に連れて行ってくれる.
この辺りの岩石は,白亜紀(六千万年以前)の付加体である日高川層群の海溝堆積物がマグマの熱で変質し,硬くなったものであるらしい.それらが大台ケ原からの水流によって浸食作用を受けて,この北山峡谷ができたということだ.目の前の景色が,数千万年の浸食作用による姿であるとは,ちょっと信じ難いものがある.
そして,この独特の青さの川をじっと見つめていると,白くて大きなものが水中に静止していることに気付く.大きな白い石を誰かが沈めたのだろうと思っていたが,ふと目を離した隙に,白い物体は最初にあった場所から少し離れたところに移動していた.寝ぼけまなこをこすってよく見てみると,30センチメートルくらいある大きな魚だった.
上手く写真に撮れたか,カメラに目をやっている間に,魚はどこかへと消えてしまった.一時は2匹が同時に川の流れに抗して静止していた時もあった.色が色だけに少し神秘的なものを見たような心持がした.しかし,この川の中で白色は目立ち過ぎる.とても生存競争に勝ち残ってきたとは思えない.まさか外来種ではあるまい.後日,地元の温泉にて話を聞いてみたが,ちっともこの魚の正体はわからない.次回は印刷した写真を持って、聞いて回ろうと思っている.
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