オートバイで旅して観たモノの記録

 Ôtobai de tabi site mita mono no kiroku.

南伊勢町 ―方座浦―

2020年07月28日 | 紀伊半島


 貴重な梅雨晴れの日に,二年ぶりとなる南伊勢町へとオートバイを走らせた.古和浦のニラハマ展望台八柱神社を訪れた後は,同じく南伊勢町の方座浦にやって来た.ここも典型的なリアス式海岸で,太平洋をほとんど望むことができない.この辺り一帯の独特の風景であり,またそれがよいのだと思う.



 この日は夏日で,オートバイから降りて,じっとしているだけで汗が滲んでくる暑さだった.自販機で冷たい炭酸水で喉を潤すことにした.自販機の上にある遊漁船乗り場案内図の看板が,とてもいい味を出していた.裸電球も付いていて,夜はまた違った雰囲気になるのかもしれない.



 休憩後,方座浦から国道を経由せずに,南島へ通ずる村道があったことを思い出し,南島を目指して北上することにした.道路中央には苔が繁茂し,道路両脇には樹木が生い茂っていた.紀伊半島は,やはりこうでなくてはならない.



 この道は,方座浦と南島の間にあるリアス式海岸を南北に走っている.生い茂る樹木で,ほとんど視界は開けないが,何ヶ所か南島の神前湾の絶景を望むことができる.



 ただし,神前湾の絶景とは裏腹に,路面状況は著しく悪い.とにかく,道幅が狭く,さらに連日の降雨によって,路面上には石ころや枝葉などが散乱していた.便利な国道がある今,かつての主要道路は,地元の方でさえ通行しないものと思われる.当然,交通量は皆無だった.



 とは言うものの,やはり神前湾の絶景が望めることもあって,ゆるやかなカーブの見晴らしの良い所に木製のベンチが置いてあった.旅人のいない平日の午前中などは,地元のおじいちゃん,おばあちゃん達の憩いの場になっているのかもしれない.



 ところが,神前湾の絶景を堪能しながら走っているのも束の間の出来事だった.少し急なカーブを越えた先に,突如として現われたのは,土砂崩れの現場だった.規格外な今年の梅雨を考えれば,仕方のないことだった.



 土砂崩れの隙間を縫って,通れないか現場検証してみたが,完全にお手上げ状態だった.かなり気は引けるが,南島まであともう少しという所で,敗走することになってしまった.それでも,こういったハプニングがあるからこそ,ツーリングは辛くもあり,また面白いのだ.南伊勢町を巡る旅は,もう少しだけ続くのだった.

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