
銀輪は百代の過客にして、回るペダルもまた旅人也。サドルに尻を浮かべハンドルを掴みて老いをむかふる者は、日々旅にして旅を栖とす。
古えに多く銀輪に狂いしあり。余もいづれの頃よりか、片雲の風に誘はれて、漂泊の思ひやまず、今年も蝦夷の地に降りたてり。
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地名は記憶の道標
8/3 プロローグ
羽田>新千歳>滝川
日曜日、いつになくじっくり時間をかけて旅繕い。暇になってしまったのでかなり早い時間に自宅を出発。この日も横浜は猛暑。外で輪行袋をもってタクシーを捜していると、滝のように汗が落ちてくる。神奈川新町から一週間の夏休みのスタートだ。
新千歳行きのJALで一路北へ。上空高く、雲の上から富士山の頭部だけが頭をのぞかせていた。

今日は電車でなるべく北上して、旭川の近くで投宿するつもり。

空弁としていいとこどり弁当を購入。この一週間でどんな道を走れるのか、期待に胸膨らませながら電車は石狩平野を北上する。

結局だいぶ旭川よりの滝川で一夜を明かした。
暗闇の中自転車を組み立て、キャリアのねじを探しながら組み立てしたが、なぜかサイクルコンピューターが台座からもげていた。何の数字のアシストなく一週間走るのはモチベーションが下がる。アロンαやガムテープでの無理やりの固定をはかるが、うまくいかない。いや、これはカチッとはめるのではなく、溝にスライドさせて固定するタイプなのだった。それに気づくとあっという間に台座に再固定された。フゥ

8/4 Stage 1 滝川~手塩 180km
雨竜>北竜>美馬牛峠>幌糠>留萌>小平(小平鰊の番屋)>鬼鹿>苫前>羽幌(オロロン食堂)>初山別>遠別>手塩>鏡浜キャンプ場
一日目の夜はあける。
朝5時朝霞の中、いざ日本海へ
スタート500mで石狩川を越えた

ガスったり晴れ間がさしたりする。
この近辺、非常に広大な牧草地帯だが、地名は
「新十津川」
そう、幕末に少なからず回天に参与した大和の国十津川郷にえにしがある。明治の大水害で村ごと移住し、今でも北海道の十津川と奈良の本村で交流があるらしい。
以前は泥炭で非常に貧しい寒村だったそうだが、今は立派な大規模農村だ

そして、今回の旅行の最初にもってきた、「太陽を味方につけた町」、北竜。
・・・ぜんぜん味方についとらん。
何百万のひまわりが咲く丘があるらしいが、パスしちゃった!

北竜を抜けると、今度は留萌を目指し山間部を走る。
前方に美馬牛峠と標識が出ている。馬牛よろしくフフ~ン!と登坂開始!15kgフル装備の自転車をゆっさゆっさ揺らして駆け上がる!
・・・あれ?もう頂上ですかい?
標高は100mちょっとのなんちゃって峠でした。

留萌の町につき、コンビニのカップラーメンで小休止。再出発すると稚内まで195kmと出た。そして、コーナーを何度も期待しながら折り返しついに・・・
海だぁ~日本海だぁ~

ここから延々と続く日本海沿いのシーニックバイウェイ、オロロンルート
(注:オロロン鳥とは絶滅に瀕した鳥のこと)
うぉぉぉぉおおおおおおおああぁぁ
オロロンオロロン オロロン オロロン ロックンロ~ル!!
(ボヨヨンロックのリズムで)

小平の町には昔の鰊小屋が保存され、道の駅となっていた。ここを走るライダー、チャリダーはみんな休憩するんだろうな。

真冬に一度訪れてみたい。真っ白な泡沫と日本海と鰊小屋。寂しいだろうな~

真っ青な青。そして強烈な追い風です。そうです!これから160km稚内までずっと楽して35km巡航が出来ます。

最高のコンディションのもと、前方にオロロンライン名物風車群が見えてきました。

これは苫前手前、グリーンファームの風車

さすが北海道、オロロン鳥も強大です。

海岸沿いのフラットも一段落し、アップダウンが始まりました。ずっと平地の高速巡航で凝り固まっていた体をほぐすいいチャンス、上り坂はオールダンシングで乗り切ることにしました。

総長の生地、羽幌にはお昼に到着。よさげな食堂を見つけ、さっそく冷やかします。

見よ!じゃじゃーん
海老タコ街道だけあってすんばらしい海老タコ丼!しかもサービスでヒラメのから揚げ付!日差しにやられ始め、塩分を欲していた体に滋味がすぅーと染みて行きます。

ここは初山別(しょさんべつ)の道の駅。本来でしたらここで一日目は終わるはずでしたが、あまりにも快調に北上してきたので、さらにあと50km走ることにしました。
その前に、海沿いの誰もいないキャンプ場でソフトクリームをなめなめ、ゆっくりごろんごろんします。

いや~平和だ~
はぁ~

背の高いラフに座って、入念にストレッチしてから再スタートです。
まだまだ行けます。まずは次の町、遠別へ。

とうとう発見しました!希少種「トホダー」
徒歩で一日80km走り、宗谷岬から襟裳岬を踏破するという、超M集団です!!
しかもみんなおじちゃんおばちゃんばかり。ハイタッチをしながら励ましあいます。

国鉄時代に廃線となった、羽幌線の残骸。
廃線跡って、じっと佇んでしまいますね。昔の人々の記憶や、時間がそこにまだトラップされているようで。遺跡でもなんでも、遺構のまわりは時間がゆっくり流れる。


開拓農道町道浜更岸線
見つけてしまいました。地球上で一番気持ちよい道。
遠別と手塩をつなぐ、交通量、ガードレール皆無の道。
さえぎるもののない道のもたらすこの開放感。

190km走って天塩の街に到着。まだ3時半。
海岸にある鏡浜キャンプ場に併設の、ライダーハウスに投宿。一泊200円後は勝手にしろスタイル。

人生初のライダーハウスがこの豪華さ!たまらん!箒もってこいオラ!
この後、恵庭からきたパティシエ見習い君と仲良くなる。

昼4時とはチト早いが、かまうものか。
岸壁に移動、ビールをガブガブ飲んで友人に自慢メールを打つ。
返信なし。
このあと併設の温泉施設、「夕映え」に移り、終始ニコニコ。

真っ赤に燃える日本海と利尻富士

夕日で町をおこすだけある

念願の、日本海に落ちる夕日をキャッチしました!

一日はあっというまに終わり、睡魔もあっというまにやって来た。
