乙女高原ファンクラブ活動ブログ

「乙女高原の自然を次の世代に!」を合言葉に2001年から活動を始めた乙女高原ファンクラブの,2011年秋からの活動記録。

谷地坊主の観察会

2019年07月06日 | 観察会

※鈴木さんがレポートを書いてくださいました。

  7月6日に行われた谷地坊主観察会は、10人(内、子供4人)の参加者にCATV記者2名が加わり行われました。昼から雨の予報だったため、当初の予定を早め午前中で切り上げることにしました。

  まずはツツジのコースを観察しながら駐車場下の湿地へ向かいます。今の季節高原はアヤメが主役です。キンポウゲやニガナの黄色い花も目立ちますが、まだ花の盛りには少し早いようです。ヤマオダマキやヨツバヒヨドリが少しずつ咲き始めています。

 アヤメの花には数匹のトラマルハナバチが訪れていました。よく見ると足には青っぽい色の花粉団子がついています。アヤメの花を転々としていたのでしょう。また、なんとコマルハナバチのオスに出逢うことができました。レアものです! 花粉を集める働きバチはすべてメスですが、その年の仕事が終わるころにオスバチが現れ始めます。翌年の女王バチの結婚相手です。次の世代向けた準備が始まるのですね。

 その他にも子供たちは葉っぱの上に、カメムシ・ハムシ・ゾウムシ・チョッキリの仲間や、ベニボタル・ジョウカイボン・テントウムシなど小さな虫たちを次々に発見していました。

  湿地に着くと,まずは,谷地坊主の全体像を眺めました。谷地坊主はどんなところにできるのだろう? どのように大きくなっていくのだろう? こんな疑問に紙芝居を使ったわかりやすい説明で応えます。乙女高原の谷地坊主を作っているのは、カヤツリグサ科のスゲの仲間で、タニガワスゲと言います。このスゲが春から秋にしっかりと成長して、冬の寒さで霜柱のように地面と共に株ごと持ち上げられます。そして春に雪解けで周りの土が侵食され株全体が少し高くなります。これを毎年繰り返すことで、立派な坊主頭ができあがるそうです。

 次に、橋のかかった湿地で谷地坊主を間近に観察してみます。地上部だけでなく、以前に採取した根(もちろん許可を得ています)の部分も見させてもらいました。密度が高く石のように固くなっていました。このスゲの根はとても強く、寒さで持ち上げられても切れません。乙女高原ではタニガワスゲ以外のスゲも生息しています。この辺りでも、カワラスゲ・オオカワズスゲ・オタルスゲ・ゴウソなどがありました。でも、いずれも谷地坊主は形成しません。谷地坊主はスゲの種類・水の流れ・気温や気候条件など様々な要素が絶妙のバランスを保って形成されていることがわかります。

 その後、さらに奥の湿地に移動していよいよ谷地坊主の身体検査です。大人と子供がペアになり、決められた5つの株の高さや幅をそれぞれ測ります。子供たちとの共同作業は賑やかで楽しいひと時でした。去年とあまり変わらない株もありましたが、全体的には少しずつ大きくなっているようです。地道なデータ収集は自然を保護する上で大切な材料です。

  昨年乙女高原の谷地坊主は山梨市の天然記念物に指定されました。私たちはすなおに喜ぶと同時に、その価値を次の世代に伝えていく責任も負ったのではないでしょうか。子供たちと楽しく調査を続けながら、いつまでもこのままの姿を残していきたいものです。

コメント
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