※井上さんがレポートを書いてくださいました。
今年は新型コロナウィルス感染防止のため、例年行われているスミレ観察会も中止になってしまいました。林道のゲートも例年なら、ゴールデンウィーク前には開くのに、今年は閉じたまま……。ですが、定期的に高原の観察を続けている観察交流会の常連メンバー4名で、感染に気をつけながら、乙女高原の様子を見に行くことにしました。いつもなら道の駅に集まって、誰かの車に相乗りで行くのですが、今回はそれぞれの車で、乙女湖集合ということになりました。
林道はヤマブキやヤマザクラが目につきます。私は山の神やカエル池に立ち寄ってタチツボスミレやマルバスミレ、マルバコンロンソウなど確認しました。カエル池ではヤマアカガエルのオタマジャクシがたくさん泳ぎ回っていました。
サワラ林の所で、植原さん、山本さん、鈴木さんが先着してウラゲヨウラクを観察していました。これまで道端の1本しか見ていなかったのが、実は林の中にたくさんあることがわかりました。
ちょうど満開で、暗い林の中で上品なクリーム色が美しかったです。ここではウリハダカエデの芽を包んでいた皮がカールしたものも可愛くて、皆でカメラを向けました。
林道をさらに登っていくと、ピンク色の濃い桜が所々に咲いています。オオヤマザクラでしょうか。また鮮やかな黄緑色のイタヤカエデ、赤いカジカエデの花も林道沿いで見られました。
焼山峠では、ミヤマスミレがたくさん咲いています。そして今年もフギレミヤマスミレがいくつか咲いてくれました。
エイザンスミレ、咲き残りのヒナスミレも可愛かったです。昨年見つけたオクタマスミレは残念ながら、今年は見あたりませんでした。
乙女高原に到着。草原はまだ枯草色で、ところどころにキジムシロやミツバツチグリが咲いているくらいです。
森のコースを登って行くと、エイザンスミレが咲いています。きれいなピンク色の花がいくつかありました。
そしてエゾアオイスミレも終盤ではありましたが、咲いていてくれました。なぜか白っぽかったです。薄茶色の粘土細工のようなおもしろい形はムシカリの出始めたばかりの葉です。
展望台周辺ではきれいなピンク色のアケボノスミレ、明るい紫色の小さなアカネスミレがありました。
ヒゴスミレは咲き終わっていました。この日は曇り空で富士山は見えませんでした。
草原のコースを下って、入り口ゲート近くでフデリンドウを数株見つけました。上品な水色の花がいくつか咲いています。
寒さのためか葉も蕾も紫がかっていてこれも可愛かったです。
草原を出て、林道を少し歩いてみました。ヒゴスミレが2株、4輪咲いていました。細かく切れ込んだ葉と中心部が緑がかった白いスミレです。いい匂いもしました。
斜面にはアケボノスミレも咲き始めていました。さらに少し先に進むと、植原さんがちょっと変わったタチツボスミレを見つけました。同じ株なのに普通の薄紫の花と白い花があります。そしてさらに先の斜面にはマルバスミレもありました。
ロッジ前にもどり、昼食にしました。別々のベンチで距離をとって食べました。
午後はまず、例年早めにスミレが咲く湿地への道を少し歩いてみました。サクラスミレが2株、咲いていました。咲き始めで美しかったです。きれいなアカネスミレもありました。またタチツボスミレがたくさん咲いていました。
次に四季の森に移動、森の入口近くにもサクラスミレ、ツボスミレが咲いていました。遊歩道では、ミヤマスミレがたくさん見られました。タチツボスミレ、ヒメイチゲも咲いています。淡いピンク色のヒナスミレもまだ咲き残っていました。途中でひときわピンク色が目立つスミレがありました。近づいてみるとヒナスミレのようですが、少し花が大きめで葉が丸い感じです。ヒナとミヤマの交雑かも……と盛り上がりました。後日、植原さんが乙女高原フォーラムで講演をしていただいた、いがりまさしさんに確認したところ、不稔ならば交雑だということなので、花後も観察をしていく必要がありそうです。
塩平方面へ下り、途中の自然観察路入口に寄ってみました。この付近ではフモトスミレ、エイザンスミレ、アケボノスミレ、マルバスミレ、タチツボスミレ、ヒゲネワチガイソウ、シロバナエンレイソウが見られました。道路わきにはモミジイチゴモも咲いていて、マルハナバチが来ていました。
雨が降り始めたので、観察は終了し、塩平のゲートの所で解散となりました。
13種類ものスミレに出会うことができたスミレ三昧の一日、そしてスミレの多様性を感じた一日でした。コロナ禍で訪れる人も少ない乙女高原ですが、季節は確実に進んで、高原は花や昆虫の季節になっていきます。早くコロナが収束して、自由に観察できることを願うばかりです。