教育ジャーナリスト・永野厚男から、ブログ『パワー・トゥ・ザ・ピープル!! アーカイブ』の読者の皆様に
★ 中教審の『審議まとめ』分析・批判の追補
(小・中学校の校長会の"幹部役員"らが、大切な児童・生徒たちのいる学校をほっぱらかして、集団で天皇ら皇室関係者と会っている事案に関する"付録"も)
添付したPDFの、月刊『紙の爆弾』7月号の記事は、中教審"質の高い教師の確保特別部会"の『審議まとめ』(文科省のHPに出ています)の40頁~41頁と51頁~53頁の記述を中心に、分析・批判しました。
しかし、字数制限の関係で、『紙の爆弾』には載せられなかった、3点の分析批判の追補を、以下に掲げます。
『審議まとめ』がそのうちに『答申素案』の段階になってくると、文科省は必ずや、HPにてパブコメを開始しますので、その際は、月刊『紙の爆弾』7月号の記事と、以下の〔1〕~〔3〕を参考に、皆様のご意見を、文科省初中局・財務課に(できれば、いい加減な『2018年度の教育課程の編成・実施状況調査』を実施した文科省教育課程課にも)お寄せ頂ければ幸いです。
↓
〔1〕 中教審『審議まとめ』54頁は「(4)管理職の処遇改善」と称する項で、
―― 学校現場の課題が多様化・複雑化する中、学校教育の質の向上を図るとともに、多様なバックグラウンドを有する教師や事務職員、支援スタッフ等の間の協働を実現するためには、高いマネジメント能力等を有する管理職による適切な学校運営が重要であり、このような職務と職責の重要性を踏まえ、管理職手当を改善する必要がある。 あわせて、管理職ではない教師に支給される教職調整額の増額によって非管理職と管理職の本給相当額の逆転が生じることのないよう、管理職も職責を踏まえた管理職の本給の改善も必要である。――
と主張している。中教審の貞広斎子氏らは"改善"という一見、きれいに見える語を使っているが、要は校長・副校長(教頭)については、本給・管理職手当ともに大幅増額しろ、と言っているのだ。
しかし校長の在校等時間は、文科省や都教委の調査ですら、さほど長くなく、定時退勤の者は多い。全国連合小学校長会(全連小)や全日本中学校長会(全日中)の"幹部役員"らの中には、東京で開催する総会・理事会の日等に、大切な児童・生徒たちのいる学校をほっぱらかして、集団で皇居に大型バスで乗り付け、天皇ら皇室関係者に会いに行く者たちすらいる(【注1】【注2】参照)。こういう児童・生徒よりも国家権力の方を向いているような校長職については、本給・管理職手当とも増額なんて、いらない。
また副校長(教頭)は、文科省や都教委の調査を見る限りにおいては、確かに在校等時間は長いけれど、その"多忙化"の元凶は、『審議まとめ』18頁も認めている文科省や教育委員会による膨大な"調査・報告"、なのだ。
ここで"調査・報告"を、都知事選候補者の蓮舫参院議員に倣って、"事業仕分け"しよう。
文科省や都教委が①卒業式等の"君が代"実施状況、②副読本に過ぎない『私たちの道徳』の配布・活用状況、③職員会議の民主的な挙手・採決を妨害する意図に基づく調査等、児童生徒のためではない、国家主義色・保守政治色の濃い、"調査・報告"の強制を、"上から目線"で下ろしてくる、国家主義色・保守政治色・中央集権志向の色の濃い"調査・報告"は、副校長(教頭)だけでなく、一般教諭等も巻き込む多忙化の元凶であり、かつ「やりがい」もない有害なものだ。
これら国家主義色・保守政治色・中央集権志向の色の濃い、有害な"調査・報告"を直ちに全廃し、他方、いじめ・基礎学力・学習障害・食物アレルギー・不登校・体罰・性暴力等、真に児童生徒のためになる調査に限定に実施すれば、"副校長補佐"や"教員業務支援員"(スクールサポートとも言う。教員免許は必要とせず、実質は副校長・教頭らの"お手伝いさん"になってしまう)は全く必要なく、貴重な税金は一般教諭の定数増に回すべきだ。
もちろん副校長(教頭)職の本給・管理職手当の増額も、主幹教諭の増員も、必要ない。
〔2〕 中教審『審議まとめ』54頁は続けて、
――処遇改善に加えて、管理職のマネジメント能力の向上に向けた研修や人事評価の指標の見直し、高いマネジメント能力等を有する人材を早期から管理職に登用することも必要である。――
とも、主張している。
文科省・都教委の国家主義色・保守政治色の濃い、誤った政策に忠実な教員を、早期、つまり若手のうちから"出世"競争に駆り立てる謀みであり、この『審議まとめ』54頁は削除するべきだ。
〔3〕 中教審『審議まとめ』34頁~35頁の「教師の持ち授業時数の在り方」の項は、
――週時程の中で(略)教師の時間外在校等時間が長くなる要因となる(略)持ち授業時数が多い場合にはその軽減が必要である。/小学校においては、近年、専門性の高い教科指導を行い子供たちへの教育の質の向上を図るとともに、教師の持ち授業時数の軽減にも資する、小学校高学年における教科担任制のための加配定数を段階的に改善し、持ち授業時数の軽減を図ってきているところである。/今後は、小学校中学年についても、子供たちへの学びの質の向上の観点と教師の持ち授業時数の軽減の観点から、教科担任制を推進し、専科指導のための教職員定数の改善を図る必要がある。――
などと、主張している。
また34頁の脚注では、『平成30(2018)年度の教育課程の編成・実施状況調査』なるものを引用しつつ、
――公立小での教科担任制の実施状況が6年生は、全教科で増加している。――
旨、誇らしげに記載している。
しかし、文科省教育課程課・教育課程企画室が実施した、『2018年度の教育課程の編成・実施状況調査』なるものは、「公立小での教科担任制」の具体的実態が、
――例えば、6年1組の担任が1・2組両方の算数を教え、2組の担任が1・2組の理科を教えるといった、単なる授業交換に過ぎない(これでは、実際の授業の実施や、指導要録・通知表に書き込む当該教科の観点別評価や評定は、1組の担任も2組の担任も2クラス分行わなければいけないので、持ち授業時数=持ちコマ数の軽減や空き時間の創出には、全くつながらない)――
のか、それとも、
――1組・2組両方の担任教員の持ち授業時数=持ちコマ数減に資するよう、専科教員の定数増(加配)により、1組の担任も2組の担任もいくつかの教科の授業を持たず(指導要録・通知表に書き込む当該教科の観点別評価や評定も専科教員に丸投げでき)、持ち授業時数=持ちコマ数の軽減や空き時間の創出につなげられる――
なのかを、峻別せず漫然と(ごっちゃ混ぜに)"調査"した、に過ぎない。
『審議まとめ』は、こうした文科省教育課程課のエビデンスなき、いい加減な"調査"に依拠し、前者のような"ニセ教科担任制"をも、「文部官僚や教委官僚らが頑張って"担任教員の負担軽減=多忙化解消"につなげている」かのように、装っているのだ。
【注1】 全日本中学校長会(全日中)のHPは、1997年10月30・31日の「中学校教育50年記念式典・第48回東京大会(於東京国際フォーラム)式典」に"天皇皇后両陛下御臨席"、07年10月25・26日の「中学校教育60年記念式典・第58回東京大会(於東京国際フォーラム)式典」に"皇太子殿下御臨席"と明記。
17年は、5月24・25の第68回総会の「2日目の午後」に赤坂東宮御所で"皇太子殿下御接見(拝謁から御接見へ)"、続いて10月19・20日の「中学校教育70年記念式典・第68回東京大会(於東京国際フォーラム)式典」に"皇太子同妃両殿下御臨席"(以上、過剰な敬語表現はママ)――というふうに、1年に2回も学校をほっぱらかして、集団で皇室関係者と会っている事実を記載している。
更に23年5月25・26日の「第74回総会(コロナ禍後、4年振りの集合形式での総会)」の初日と、24年5月23・24日の「第75回総会」の2日目には"皇居特別参観"なるものを実施している(参加者は23年が189名、24年が171名と膨大)。
なお、全日中のHPの「全日本中学校長会のあゆみ」という欄は、89年1月7日の所に 「昭和天皇崩御(ママ)」、99年8月13日の所に 「国旗及び国歌に関する法律公布・施行」、06年12月15日の所に「教育基本法60年ぶりに改正」(ママ。ロシアのように"国を愛する態度"強制を盛ったので、本当は改悪だ)等、保守政治色の濃い"出来事"を明記してしまっている。
しかし全日中のHPは、思想・良心・宗教・表現の自由や意見表明権等、児童・生徒の重要な人権を規定している子どもの権利条約に係る、①第44回国連総会で89年11月20日に採択、②日本政府が90年9月21日に署名し、94年4月22日に批准――といった出来事は一切載せておらず、教育の中立性に反し、児童・生徒よりも国家権力・保守政治勢力の方に、偏向している。
【注2】 宮内庁のHPは全連小について、「全国連合小学校長会理事会に出席する小学校長ご接見(赤坂東邸/東京都港区、令和5年2月17日)」と題し、直立不動で整列し秋篠宮文仁氏(58歳)と会う、校長48名の写真を載せ、「全国連合小学校長会は、(略)1949年(昭和24年)には昭和天皇ならびに香淳皇后への拝謁が、1974年(昭和49年)には皇太子同妃両殿下(現 上皇上皇后両陛下)の関連式典へのご臨席が、また平成に入ってからも天皇皇后両陛下(現 上皇上皇后両陛下)への拝謁や皇太子殿下(現 天皇陛下)がご接見され、今回は秋篠宮皇嗣殿下による初のご接見となりました。/ 今回のご接見には、46都道府県より48名の校長が参列し、冒頭、同会会長より今後の教育の邁進に向けた抱負が述べられました。その後、殿下が、全国の校長方に向けご慰労のおことばを述べられました」(以上、過剰な敬語表現はママ)と、記述している。
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