=『月刊・紙の爆弾』から=
★ 国立奈良教育大附属小 教員の強制異動事件
~自民党と癒着の文科省が元凶
国立大学法人の奈良教育大学附属小学校(奈良市。以下、附小)で、“不当政治介入”問題が勃発している。その元凶は、やはり自民党と癒着した文部科学省だった。
児童一人一人を大切にする教育実践で、全国の教育関係者から高く評価される附小と、人事交流協定を結ぶ奈良県教育委員会が昨年5月26日、同教育大の宮下俊也学長に「外部から附小の教育課程に問題があるとの話を受けた」旨を通報した。
宮下学長は附小に執拗な調査や指示を連発し、今年1月9日、盛山正仁文科大臣に『教育課程の実施等の事案に係る報告書』を提出。
宮下学長は同月末、附小教員に対し「(人事交流の教員以外の)大学独自採用の正規教員19人を3年間で全員、県内の公立小に本人同意なしで出向させる。処分は別に検討中だ」と通告した。
これに対し保護者有志が2月27日、「教員の意思無視の人事異動反対」の署名2257人分を大学に提出。
宮下学長は2日後、附小HPで「3年間で現・専任教員が全て不在になる異動は行わない」と修正した。だが3月末「3年以内で復帰する」と明言しつつ、奈良市立小等に4人を出向させた。
『報告書』は、「学習指導要領実施上の不適切事項」に、国語科の3年で扱うローマ字を4年で教えている等列挙。だが抽象的概念(子音と母音)が理解できる4年で扱うのが効果的との考えは、長年の教育実践で得たものだ。
『報告書』の真の標的は次の2つだろう。
1つ目は、「管理運営における不適切事項」として、「職員会議で事実上、校長権限を制約」「校長-副校長-主幹-主任という指示伝達の流れが十分に機能せず」等記述し、「職員会議は校長の補助機関だ。学長は附小を定期的に視察する」等、上意下達の徹底を宣言した。都教委による“君が代”強制強化の手法と同じ。
2つ目は音楽科の“君が代”。『報告書』は「6年のみでの指導では不足」だとし、「回復措置計画」なる一覧表で「4~6年は歌唱、器楽、鑑賞等の学習から国歌『君が代』の指導に置き換え実施。子どもたちの発言や歌声で不足分も合わせて評価をする」と明記した。
宮下学長は、武蔵野音楽大ピアノ科卒業(後、修士号取得)で元中教審の芸術教育の部会委員。このため、教員が児童の“君が代”の「歌声」をどのように評価しているか、”視察”に来る危険性があり、今後も要警戒だ。
ところで冒頭の強制異動問題では、3月13日の衆院文部科学委員会で、共産党の宮本岳志議員が「宮下学長同席の場で1月31日、三木達行副学長から次の証言を得た」と暴露した。
その証言は「自民党の文部科学部会で『まさかこのメンバーで4月を迎えるのではないでしょうね』とかなり批判を受けた。文科省上層部から『全員替えろ』と言われている」等、生々しい。
この追及に、文科省の望月禎(ただし)総合教育政策局長は「一般的に『人事交流を行なったらどうか』とは申し上げたが、『全ての教員を入れ替えろ』とは言っていない」と弁明。
虚偽答弁に罰則のある証人喚問は、自民党裏金議員だけでなく望月局長にも実施するべきだ。
(教育ジャーナリスト・永野厚男)
『紙の爆弾』(2024年5月号)
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