消費税UPで問題は解決しない…
◆ 我々は損するだけだ
1,消費税UP本当の狙い~赤字国債の償還財源

08年度の国民健康保険の保険料を毎日新聞が全国調査をした。
「世帯二所得200万円で、40歳代夫婦と未成年の子2人の4人家族。固定資産税額は5万円」というモデルで、08年度の最高額は、大阪府寝屋川市の50万4030円で、北海道喜茂別町の50万2500円、福岡県矢部村の49万800円が続いた。
最低額は東京都青ケ島村の13万9900円。続いて神奈川県開成町の16万2560円で、20万円未満が9町村あった。
世帯所得200万円で50万円も国保に払っては生活できない。未納家庭が増える理由が明らかになっている。国民皆保険は全国一律の基準で誰でも支払える制度が望ましい。財源の確保は緊急不可欠の問題である。
累進課税の強化、企業課税の強化、たばこ税や酒税の引き上げ等が挙げられることが多い。しかしそれによる税取増加はそれほど大きくはない。軍事費は対GDP比は1%で、それを大幅に削減しても医療費増加の主財源にはなりえない。そこで消費税が叫ばれる。
消費税の逆進性が言われるが、国保税や介護保険料の方が逆進性が高い。食品など生活必需品を非課税にし、上記の様々な税で消費税率を最低にした上でならば、消費税も止む得ないのではないかと考えたくなる。
実際に新聞報道では、この「社会保障改革案」(2011.6.2)が、「消費税収を財源とする社会保障安定財源の確保」、「2015年度までに段階的に消費税率(国・地方)を10%まで引き上げ」ると明記している。
しかしよく読むと、この改革案は「個別分野における具体的改革」の項で、「負担と給付の関係が明確な社会保険(=共助・連帯)の枠組みの強化による機能強化を基本とする」としている。だから消費税は社会保障費全体の「主たる財源」ではなく、社会保障費用のうち公費負担分の「主たる財源」であり、社会保険、特に医療保険では、今後も変わらずに社会保険料が主財源となる。
それで国保の保険者を都道府県単位にするとか、低所得者への年金加算・保険料の免除等が話題になるレベルになるのである。
そして、2月29日の党首討論で野田首相は「(赤字国債の)償還財源は消費税か」と質問し、自民党谷垣氏が「その通り」と答えている。ようやく、消費税UP本当の狙いが赤字国債の償還財源とするためということが明らかになった。
2.国債の増える原因は?(米マイケル・ハドソン「日本はなぜ負債大国になったか」2002による)
上図のように1965年から30年の間に、日本は国家債務ゼロから世界最大の負債国へと転落した。
政府が借金をする伝統的な理由は戦争である。日本の場合戦争を行っていない。平和時の国家債務は海外との戦争ではなく、国内の階級闘争の結果生まれる。
ほぼ決まって勝者となる富裕階級にとって、階級闘争の目的は自分達の所得や富に対する税金を削減することにある。その結果、税剃は富裕者への累進制を弱めるよう改正され、賃金労働者や消費者の税負担が高くなる。平和時に政府が借金を増やす理由は、主に国内の政治的失敗、つまり富に対する課税を怠ったことに起因する。
今日の財政赤字と国家債務は、最も裕福な階級に対する課税を怠ったことが原因となっている。生産的な産業投資よりも、非生産的で寄生的な富(*1)の方が簡単に税金逃れができる点にある。
例えば、公共の交通機関や道路、電気、その他税金で実施される基盤整備によって、土地の不動産価値は一般に上昇する。
税金を使ったおかげで値上がりした分の賃貸料を取り戻すには、通常固定資産税を徴収することによって、その増加分が国民に還元される。しかし税金が徴収されなけれぼ、税金を使ったことによって生まれた利益は不労所得投資家の手元に残る。
そして不労所得者階級が強力になれぼなる程、政治家をうまく操って自分達の税金を削減させようとする。その結果、財政赤字と国家債務が増加するのである。
バブル経済の真っただ中に国債残高が増加した原因を見つけるのはそれ程困難ではない。
バブル経済は、不動産価格年度政府予算国債発行額国債依存を一般家庭の手の届かないところまで押し上げたのに加え、不動産億万長者を生み出し、不労所得者の地位を不動のものにした。
力が強力になると、その分野が1つの階級を形成し、自分達の利益が課税対象とならないようにするために、公共利益に反する活動をする。政府の政策に影響を与える。
その結果、不動産分野が従来支払っていた税金は他の分野に振り替えられる。こうなると、借金をしてでもさらに不動産を購入した方が儲かるようになり、不動産分野は借金だらけになっていくのである。
そして不動産の所有者はこの借金状態を強調して、金融機関と共に、業界は多額の借金を抱えているので、もっと減税すべきだと主張するのである。さらに、不動産投機家はローンの利子分を課税所得から控除することが認められていたために、このプロセスにはさらに拍車がかかった。
最も裕福な不労所得者層が税金を逃れようとした結果、日本にほぼ慢性的な財政危機が生まれた。
さらに、他の諸国の場合と同様に、既存の負債に対する金利も公的債務を増加させている。
過去の負債に対する利払いが負担となって、結局毎年、財政赤字を生むことになる。国家が税収入、厳密には不労所得の富に課税をして歳出を賄わない限り、現在の累積債務から逃れることは難しい。
問題は、税金を逃れようとする既得権益の経済力に対抗するだけの政治権力を結集させる能力が一般国民にない点にある。
その結果、政府は借金で金利を賄い、毎年国家債務を増加させていく。
厳密に見ればこの借金は、日本の一般的な納税者が、自分の収入に見合っただけの納税をしていない一部の階級に対して持つ借金なのである。
予算が削減されても債権者への利払いは絶対的に変わらない。予算削減によってしわ寄せをくうのは、常に9割の国民のためにある公衆衛生や福祉などの社会福祉プログラムなのである。
有権者は、大蔵省や与党がなぜ消費税増税を迫っているのか、その理由を理解すべきである。
これは極めて重要なことなのだ。日本の歳出を補うために必要な税金を投資家が支払っていないために、消費者が代わって税金を払わなければならないのである。
(*1):主にFinance(金融)Insurance(保険)、Real Estate(不動産)産業とその不労所得者。
※「富裕税」は財閥復活阻止のためにシャウプ勧告によって1950年末に創設された。しかし1953年夏,現金や無記名の債権、預金等をはっきり把握できないなどと廃止した。
『都高退教ニュース』(2012/4/10 80号)
◆ 我々は損するだけだ
安藤哲雄(都高退教事務局長)
1,消費税UP本当の狙い~赤字国債の償還財源

08年度の国民健康保険の保険料を毎日新聞が全国調査をした。
「世帯二所得200万円で、40歳代夫婦と未成年の子2人の4人家族。固定資産税額は5万円」というモデルで、08年度の最高額は、大阪府寝屋川市の50万4030円で、北海道喜茂別町の50万2500円、福岡県矢部村の49万800円が続いた。
最低額は東京都青ケ島村の13万9900円。続いて神奈川県開成町の16万2560円で、20万円未満が9町村あった。
世帯所得200万円で50万円も国保に払っては生活できない。未納家庭が増える理由が明らかになっている。国民皆保険は全国一律の基準で誰でも支払える制度が望ましい。財源の確保は緊急不可欠の問題である。
累進課税の強化、企業課税の強化、たばこ税や酒税の引き上げ等が挙げられることが多い。しかしそれによる税取増加はそれほど大きくはない。軍事費は対GDP比は1%で、それを大幅に削減しても医療費増加の主財源にはなりえない。そこで消費税が叫ばれる。
消費税の逆進性が言われるが、国保税や介護保険料の方が逆進性が高い。食品など生活必需品を非課税にし、上記の様々な税で消費税率を最低にした上でならば、消費税も止む得ないのではないかと考えたくなる。
実際に新聞報道では、この「社会保障改革案」(2011.6.2)が、「消費税収を財源とする社会保障安定財源の確保」、「2015年度までに段階的に消費税率(国・地方)を10%まで引き上げ」ると明記している。
しかしよく読むと、この改革案は「個別分野における具体的改革」の項で、「負担と給付の関係が明確な社会保険(=共助・連帯)の枠組みの強化による機能強化を基本とする」としている。だから消費税は社会保障費全体の「主たる財源」ではなく、社会保障費用のうち公費負担分の「主たる財源」であり、社会保険、特に医療保険では、今後も変わらずに社会保険料が主財源となる。
それで国保の保険者を都道府県単位にするとか、低所得者への年金加算・保険料の免除等が話題になるレベルになるのである。
そして、2月29日の党首討論で野田首相は「(赤字国債の)償還財源は消費税か」と質問し、自民党谷垣氏が「その通り」と答えている。ようやく、消費税UP本当の狙いが赤字国債の償還財源とするためということが明らかになった。
2.国債の増える原因は?(米マイケル・ハドソン「日本はなぜ負債大国になったか」2002による)
上図のように1965年から30年の間に、日本は国家債務ゼロから世界最大の負債国へと転落した。
政府が借金をする伝統的な理由は戦争である。日本の場合戦争を行っていない。平和時の国家債務は海外との戦争ではなく、国内の階級闘争の結果生まれる。
ほぼ決まって勝者となる富裕階級にとって、階級闘争の目的は自分達の所得や富に対する税金を削減することにある。その結果、税剃は富裕者への累進制を弱めるよう改正され、賃金労働者や消費者の税負担が高くなる。平和時に政府が借金を増やす理由は、主に国内の政治的失敗、つまり富に対する課税を怠ったことに起因する。
今日の財政赤字と国家債務は、最も裕福な階級に対する課税を怠ったことが原因となっている。生産的な産業投資よりも、非生産的で寄生的な富(*1)の方が簡単に税金逃れができる点にある。
例えば、公共の交通機関や道路、電気、その他税金で実施される基盤整備によって、土地の不動産価値は一般に上昇する。
税金を使ったおかげで値上がりした分の賃貸料を取り戻すには、通常固定資産税を徴収することによって、その増加分が国民に還元される。しかし税金が徴収されなけれぼ、税金を使ったことによって生まれた利益は不労所得投資家の手元に残る。
そして不労所得者階級が強力になれぼなる程、政治家をうまく操って自分達の税金を削減させようとする。その結果、財政赤字と国家債務が増加するのである。
バブル経済の真っただ中に国債残高が増加した原因を見つけるのはそれ程困難ではない。
バブル経済は、不動産価格年度政府予算国債発行額国債依存を一般家庭の手の届かないところまで押し上げたのに加え、不動産億万長者を生み出し、不労所得者の地位を不動のものにした。
力が強力になると、その分野が1つの階級を形成し、自分達の利益が課税対象とならないようにするために、公共利益に反する活動をする。政府の政策に影響を与える。
その結果、不動産分野が従来支払っていた税金は他の分野に振り替えられる。こうなると、借金をしてでもさらに不動産を購入した方が儲かるようになり、不動産分野は借金だらけになっていくのである。
そして不動産の所有者はこの借金状態を強調して、金融機関と共に、業界は多額の借金を抱えているので、もっと減税すべきだと主張するのである。さらに、不動産投機家はローンの利子分を課税所得から控除することが認められていたために、このプロセスにはさらに拍車がかかった。
最も裕福な不労所得者層が税金を逃れようとした結果、日本にほぼ慢性的な財政危機が生まれた。
さらに、他の諸国の場合と同様に、既存の負債に対する金利も公的債務を増加させている。
過去の負債に対する利払いが負担となって、結局毎年、財政赤字を生むことになる。国家が税収入、厳密には不労所得の富に課税をして歳出を賄わない限り、現在の累積債務から逃れることは難しい。
問題は、税金を逃れようとする既得権益の経済力に対抗するだけの政治権力を結集させる能力が一般国民にない点にある。
その結果、政府は借金で金利を賄い、毎年国家債務を増加させていく。
厳密に見ればこの借金は、日本の一般的な納税者が、自分の収入に見合っただけの納税をしていない一部の階級に対して持つ借金なのである。
予算が削減されても債権者への利払いは絶対的に変わらない。予算削減によってしわ寄せをくうのは、常に9割の国民のためにある公衆衛生や福祉などの社会福祉プログラムなのである。
有権者は、大蔵省や与党がなぜ消費税増税を迫っているのか、その理由を理解すべきである。
これは極めて重要なことなのだ。日本の歳出を補うために必要な税金を投資家が支払っていないために、消費者が代わって税金を払わなければならないのである。
(*1):主にFinance(金融)Insurance(保険)、Real Estate(不動産)産業とその不労所得者。
※「富裕税」は財閥復活阻止のためにシャウプ勧告によって1950年末に創設された。しかし1953年夏,現金や無記名の債権、預金等をはっきり把握できないなどと廃止した。
『都高退教ニュース』(2012/4/10 80号)
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