◆ 金融と通信の危機が現実に
企業の収益性に重大疑義 (週刊新社会)
日本郵政の西室泰三社長は2014年12月26日、記者会見を開き、「日本郵政グループ3社の株式上場について」発表し、今年3月31日に東京証券取引所に3社同時の予備申請を行い、6月24日のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険、26日の日本郵政株式会社の株主総会を経て、30日に正式に株式上場を本甲請しました。東証は9月10日、株式上場正式承認、11月4日に上場されます。
◆ 株式上場に反対
郵政産業労働者ユニオン(略称=郵政ユニオン)は日本郵政グループ3社の株式上場に対して、国民のための郵政事業を守る立場から問題点を指摘し、株式上場に反対する行動を取り組んできました。
◆ 重大な問題点
日本郵政は株式上場の目的と意義について、①経営の自由度の拡大、②自立的な経営体制の確立、③東日本大震災復興への貢献の3点を挙げています。そして、株式の上場は法律の定めによるものだとし、上場によっても「グループ企業として、引き続き連携していく」ことや「過疎地におけるサービスの提供を取りやめることはない」と言い、株式上場の正当性とこれまでと変わらないサービスの提供を表明しています。
しかし、本当にそうなのでしょうか。
株式売却収入の一部を東日本大震災の復興財源に充てるという目的と意義も今日の復興予算のあまりにもずさんな使われ方を見ると、大いに疑問があり、本来、震災復興と郵政株式上場とは何の関係もありません。
東京証券取引所は、日本郵政グループ3社の株式上場にあたって実質審査基準として、
①企業の継続性および収益性、
②企業経営の健全性、
③企業のコーポレート・ガバナンスおよび内部管理体制の有効性、
④企業内容等の開示の適正性、
⑤その他、公益または投資者保護の観点から取引所が必要と認める事項
の5点を挙げています。
この基準から見た場合、日本郵政3社の株式上場にっいてはいくつかの重大な問題点が指摘できます。
第一に、「企業の継続性および収益性」があります。
今、日本郵政株式会社の事業収入が明らかに減少基調になっており、収益の減少が継続する場合、株式上場後に赤字決算となる可能性があります。この問題は上場の適格性の問題であると同時に、郵政で働く労働者の労働条件と密接に関連しています。
利益を出すためにさらなるリストラ「合理化」が強要されることになり、労働者の雇用と労働条件が悪化するだけでなく、郵便局を利用する国民全体にとっても、郵便事業のサービス低下が心配されます。
第二に、「企業経営の健全性」です。
持ち株会社の日本郵政は、営業収益の大半を金融2社の配当金に依存しています。また、日本郵便は金融窓口事業の8割以上を金融2社からの委託業務手数料で得ています。ゆうちょ銀行、かんぽ生命の金融2社が株式を100%上場したら、持ち株会社である日本郵政も郵便事業を行っている日本郵便も経営が成り立たちません。
そして、日本郵政が金融2社の株を売却して支配権を失うと、金融2社は全国の郵便局を通じてサービスを提供する義務はなくなります。郵便局に委託する義務がなくなれば、利益の最大化をめざす金融2社の経営者が、採算を度外視して金融サービスを提供することはありません。まさに、金融と通信のユニバーサルサービスの危機が現実のものとなります。
◆ 非正規雇用が5割の労働現場
第三に、株式上場にあたってはその審査基準として、経営の継続性。収益性だけではなく、事業の健全性や内部管理体制(ガバナンス)も厳しく審査されることになります。
今、日本郵政グループ各社では多くの労働争議が闘われています。さらに社員構成における非正規雇用率も約5割で、正社員と非正規社員との待遇の格差も広がっています。勤務時間管理も”有名無実化”し、サービス労働・タダ働きが蔓延し、さらにパワハラ・セクハラ事件も後を絶ちません。
「些細なことでもひどくはないが、殴る蹴るということすらある。部長には今度ミスをしたら辞めるという文書を求められている」。これは、最近ユニオンの労働相談に寄せられた労働者の悲痛な声です。このような会社に株式上場の資格はありません。
郵政事業の郵便局は、国民共有財産です。改正郵政民営化法の参議院附帯決議は、「これらの株式が国民全体の財産であることに鑑み、その処分に当たっては、ユニバーサルサービスの確保に配慮する」と言っています。
株式上場は金融と通信のユニパーサルサービスの後退をもたらすことは明らかです。郵政の株式上場は認めるわけにはいきません。(郵政ユニオン中央本部書記長・中村知明)
『週刊新社会』(2015/9/22)
企業の収益性に重大疑義 (週刊新社会)
日本郵政の西室泰三社長は2014年12月26日、記者会見を開き、「日本郵政グループ3社の株式上場について」発表し、今年3月31日に東京証券取引所に3社同時の予備申請を行い、6月24日のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険、26日の日本郵政株式会社の株主総会を経て、30日に正式に株式上場を本甲請しました。東証は9月10日、株式上場正式承認、11月4日に上場されます。
◆ 株式上場に反対
郵政産業労働者ユニオン(略称=郵政ユニオン)は日本郵政グループ3社の株式上場に対して、国民のための郵政事業を守る立場から問題点を指摘し、株式上場に反対する行動を取り組んできました。
◆ 重大な問題点
日本郵政は株式上場の目的と意義について、①経営の自由度の拡大、②自立的な経営体制の確立、③東日本大震災復興への貢献の3点を挙げています。そして、株式の上場は法律の定めによるものだとし、上場によっても「グループ企業として、引き続き連携していく」ことや「過疎地におけるサービスの提供を取りやめることはない」と言い、株式上場の正当性とこれまでと変わらないサービスの提供を表明しています。
しかし、本当にそうなのでしょうか。
株式売却収入の一部を東日本大震災の復興財源に充てるという目的と意義も今日の復興予算のあまりにもずさんな使われ方を見ると、大いに疑問があり、本来、震災復興と郵政株式上場とは何の関係もありません。
東京証券取引所は、日本郵政グループ3社の株式上場にあたって実質審査基準として、
①企業の継続性および収益性、
②企業経営の健全性、
③企業のコーポレート・ガバナンスおよび内部管理体制の有効性、
④企業内容等の開示の適正性、
⑤その他、公益または投資者保護の観点から取引所が必要と認める事項
の5点を挙げています。
この基準から見た場合、日本郵政3社の株式上場にっいてはいくつかの重大な問題点が指摘できます。
第一に、「企業の継続性および収益性」があります。
今、日本郵政株式会社の事業収入が明らかに減少基調になっており、収益の減少が継続する場合、株式上場後に赤字決算となる可能性があります。この問題は上場の適格性の問題であると同時に、郵政で働く労働者の労働条件と密接に関連しています。
利益を出すためにさらなるリストラ「合理化」が強要されることになり、労働者の雇用と労働条件が悪化するだけでなく、郵便局を利用する国民全体にとっても、郵便事業のサービス低下が心配されます。
第二に、「企業経営の健全性」です。
持ち株会社の日本郵政は、営業収益の大半を金融2社の配当金に依存しています。また、日本郵便は金融窓口事業の8割以上を金融2社からの委託業務手数料で得ています。ゆうちょ銀行、かんぽ生命の金融2社が株式を100%上場したら、持ち株会社である日本郵政も郵便事業を行っている日本郵便も経営が成り立たちません。
そして、日本郵政が金融2社の株を売却して支配権を失うと、金融2社は全国の郵便局を通じてサービスを提供する義務はなくなります。郵便局に委託する義務がなくなれば、利益の最大化をめざす金融2社の経営者が、採算を度外視して金融サービスを提供することはありません。まさに、金融と通信のユニバーサルサービスの危機が現実のものとなります。
◆ 非正規雇用が5割の労働現場
第三に、株式上場にあたってはその審査基準として、経営の継続性。収益性だけではなく、事業の健全性や内部管理体制(ガバナンス)も厳しく審査されることになります。
今、日本郵政グループ各社では多くの労働争議が闘われています。さらに社員構成における非正規雇用率も約5割で、正社員と非正規社員との待遇の格差も広がっています。勤務時間管理も”有名無実化”し、サービス労働・タダ働きが蔓延し、さらにパワハラ・セクハラ事件も後を絶ちません。
「些細なことでもひどくはないが、殴る蹴るということすらある。部長には今度ミスをしたら辞めるという文書を求められている」。これは、最近ユニオンの労働相談に寄せられた労働者の悲痛な声です。このような会社に株式上場の資格はありません。
郵政事業の郵便局は、国民共有財産です。改正郵政民営化法の参議院附帯決議は、「これらの株式が国民全体の財産であることに鑑み、その処分に当たっては、ユニバーサルサービスの確保に配慮する」と言っています。
株式上場は金融と通信のユニパーサルサービスの後退をもたらすことは明らかです。郵政の株式上場は認めるわけにはいきません。(郵政ユニオン中央本部書記長・中村知明)
『週刊新社会』(2015/9/22)
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