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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

☆ 日・米から加・独・仏・豪・蘭・比へ拡大する自衛隊の共同訓練

2024年09月12日 | 平和憲法

 ☆ 拡大される自衛隊の共同訓練 (『週刊新社会』)

防衛ジャーナリスト 半田 滋

 ☆ 日米共同訓練「バリアント・シールド」

 今年6月から来年3月にかけて、日本列島を舞台に日米共同訓練が繰り返される。
 注目されるのは、カナダ、フランスが加わり、太平洋・南シナ海における最大規模の多国間演習に格上げされた米軍の隔年演習「バリアント・シールド」に日本が初めて参加したことだ。
 6月7日から18日までの日程で、米軍の陸海空、海兵隊など1万人以上が参加。米側の要請を受けて自衛隊約4千人が訓練に臨んだ。
 南シナ海には米空母や加仏駆逐艦のほか、海上自衛隊の護衛艦、潜水艦も展開し、中国軍との戦闘を想定した訓練を行った。

 「南シナ海」に違和感はないだろうか。日本防衛とはおよそ無縁の海域まで自衛隊が出て行き、米軍の対中演習に当たり前のように参加する。「バリアント・シールド」とは別に「インド太平洋方面派遣」と称して海上自衛隊は毎年、護衛艦を南シナ海などへ派遣し、今年は護衛艦5隻が実に227日間も日本を離れる。
 自衛隊の役割、任務を踏み越えてはいないか。

 「バリアント・シールド」の中で、青森県の海上自衛隊八戸基地、宮城県の航空自衛隊松島基地米空軍のF16戦闘機が飛来、自衛隊から燃料の提供を受けて模擬空中戦を行い、日米の連携を確認した。
 自衛隊基地への飛来は米空軍の「ACE(エース、迅速な戦闘展開)」と呼ばれる作戦にあたり、中国からのミサイル攻撃を念頭に米空軍基地から部隊を分散させる狙いがある。

 

 ☆ 民間への攻撃も合法化

 同様の訓練は自衛隊も行っている。昨年11月、航空自衛隊のF2戦闘機が岡山空港と大分空港に降り立ち、民間業者から燃料補給を受けた。
 日米双方は台湾有事に備え、それぞれの基地が攻撃されるとの前提で他の基地や民間空港の利用へと手を広げている
 問題は、自衛隊や米軍が使う民間施設は「軍民共用」とみなされ、国際法上は本来、許されない民間への攻撃が合法化されることだ。
 政府は今年4月、民間空港・港湾を国費で改修する見返りに自衛隊による使用を求め、7道県16カ所を「特定利用空港・港湾」に指定したが、戦争の被害を民間に拡大したことになる。

 

 ☆ 陸上自衛隊と米海兵隊との共同訓練「レゾリュート・ドラゴン」

 7月の訓練は陸上自衛隊米海兵隊による日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン」で、7月28日から8月7日まで実施された。
 2022年度から始まったこの訓練は北海道だけで行っていた同「ノーザン・ヴァイパー」を発展的に解消し、日米の作戦能力と相互運用性の向上を目的に展開先を全国に広げた。
 今回は、台湾有事を想定して沖縄本島や宮古島、石垣島などの各駐屯地でのミサイル発、射機の展開のほか、物資や患者の輸送訓練を実施。台湾に最も近い与那国島へは米海兵隊の最新対空レーダーが航空自衛隊の輸送機で運ばれ、設置された。
 訓練に先立つ5月、駐日米大使として初めて与那国を訪れたエマニュエル氏「私たちが演習をしているのは、すべて日本全体の防衛のためだ」と語り、軍事力強化を訴える糸数健一町長と意気投合した。

 この時点で沖縄の米兵による女性への暴行事件が連続して発生していたが、沖縄の米領事館も日本の外務省も沖縄側にこの事実を伝えなかった
 本来、謝罪の言葉から始まるべき大使のあいさつは「米国が守ってやっている」といった傲慢な言葉にすり替えられた。
 今年12月から来年3月までの長期間、行われるのが陸上自衛隊と米海兵隊による日米合同訓練「アイアン・フィスト」だ。
 05年度に始まり、毎年、小規模部隊が渡航して米国内で行われてきたが、22年度からは舞台を日本に移し、九州や沖縄を含む南西諸島周辺で大々的に実施されるようになった

 

 ☆ 離島奪還訓練「アイアン・フィスト」

 敵に奪われた離島を奪還する想定で行われ、23年度の「アイアン・フィスト」には、常連だった英国、ドイツ、フランス、豪州に加え、フィリピン、オランダがオブザーバー参加した。
 米軍の訓練や日米共同訓練に多くの国が参加したり、見学したりするのは、数の力で中国に圧力をかけ、台湾に侵攻しないよう抑止を強める狙いがある。
 しかし、万一、抑止が破れた場合は戦争になる。

 

 ☆ 戦争準備より平和のための議論を

 米国の「戦略国際問題研究所(CSIS)」は昨年1月、中国軍が26年に台湾へ上陸作戦を実行すると想定した図上演習を公表した。日米対中国の戦いになり、いずれの国も多くの兵士(日本は隊員)が犠牲になった。
 この図上演習では、日本政府が米軍による国内基地の使用を容認するとの前提だが、中国側からみれば、米軍が日本から自由に出撃する状況を許したまま台湾を屈服させることは不可能に近い。
 中国軍は基地ばかりでなく、飛行場や港湾といったインフラを攻撃し、日本は莫大なコストを払う。

 日本列島や南シナ海で切れ間なく行われる共同訓練は、安倍晋三政権から始まった「軍事力強化の一本足打法」の延長線上にある。台湾が戦場になり、米国が参戦すれば、日本は壊滅的被害を受ける。
 避けるには、米中双方に自制を求める外交を強めなければならない。東アジアの国々も巻き込み、平和のための議論を急ぐ必要がある。

 

※はんだ・しげる1955年生まれ。防衛ジャーナリスト。
 元東京新聞論説兼編集委員。獨協大学非常勤講師。法政大学兼任講師。防衛省・自衛隊、在日米軍について多くの論考を発表している。著書に、『日本は戦争をするのかー集団的自衛権と自衛隊』(岩波新書)、『僕たちの国の自衛隊に21の質問』(講談社)などがある。

『週刊新社会』(2024年8月28日)

 


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