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パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

大学院まで行ったけど(2)

2012年04月23日 | 格差社会
 ◆ <はたらく>職にあぶれる若手研究者 大学院重点化策の「余波」
 3月2日本欄で、低待遇を強いられている五十代の大学非常勤講師の声を紹介したが、若い世代の研究者はさらに厳しい状況に置かれている。
 国が進めた「大学院重点化政策」で研究者の“卵”が多く養成されたものの、増加に見合うだけの大学のポストや就職先がないためだ。定職に就けず、不安定な生活を送る若手研究者を取材した。 (福沢英里)
 関東地方の私立大で任期付きの研究員として語学系の研究に励んでいた男性(36)は、三月で大学との契約が切れた。
 四月からは、複数の大学で非常勤講師として働く。収入は月給換算で約十二万五千円と、以前に比べ四割以上減った。一つの職場での勤務時間数が短いため共済年金に加入できず、研究費も出なくなった
 海外の名門大への留学も経験し、専門の研究は人一倍努力してきた。大学院へ進学すると、教授に「頑張れば私みたいになれる」と言われ、教員になって研究に打ち込む姿を思い描いていた。
 しかし、男性の所属する語学系の研究科は過去十年、専任教員の募集がない。他大学や研究機関の常勤職を求め、少ない公募に応募するも駄目だった。周囲の先輩たちは、四十歳前後で見切りをつける人が増えた。
 上の世代は、非常勤講師で何とか食いつないでいたが、今はそれすら厳しい。四十歳も目前。「別の仕事でも何でもして生活費を工面するしかない」と不安を募らせる。
     ◇

 大学院在学者数は、一九九一年は約九万九千人だったが、大学院の重点化により、二〇一一年には二・八倍の約二十七万三千人に増えた。
 博士課程を修了すると、研究を目指す人はポスドクとなって経験を積み、大学教員や研究機関などの常勤のポストを目指す。しかし、非常勤の教員が増えて常勤の数が減る中で、就職先として常勤教員を想定していた博士の多くが職にあぶれた。
 一〇年版「科学技術白書」などによると、理工農系の博士課程修了者のうち、大学教員になったのは一割。四十歳未満の大学教員数も、重点化が始まったころは、約34%だったのが、〇七年には27%と年々減少している。
 国立大で研究員をする男性は「“万年助手”と皮肉を込めて言われた時代もあったが、今は万年の職すらない。任期付きの『助教』と呼ばれるポストに群がる四十代がごろごろいる。ポストのためにプロジェクトがつくられ、渡り歩く人も」と打ち明ける。
 「ホームレス博士」などの著書がある大学職員の水月昭道さんは「専任教員になりたいと日夜、研究に打ち込み、論文を書きまくる粒ぞろいの若手研究者が養成されても、その能力は生かされない」と指摘。常勤職員を雇う余裕がなく、非正規雇用で賄う大学が増えている現状に、「正規職員を終身雇用で完璧に守る構造こそ見直す必要がある」と説く。
 ◆博士人材 社会で生かせ

 博士の就職先を広げようと、国も二〇〇六年から、博士やポスドクのキャリア開発に取り組んでいる。新成長戦略にも「二〇年までに理工系博士課程修了者の完全雇用の達成を目指す」との目標が盛り込まれた。
 しかし、文系の博士やポスドクへの支援は各大学に委ねられ、十分とはいえない状況だ。
 いち早くキャリア支援を始めた名古屋大は、当初五割程度だった博士の就職率が、四年たって七割を超えるまでになった。門戸を広げ、全国の博士やポスドクから登録を受け付ける。
 同大社会貢献人材育成本部の森典華特任准教授は「企業は博士より修士を欲しがる。日本の成長に高度な知識を持つ博士こそ社会で生かしていく必要がある。企業に理解を求めていきたい」と意気込む。
 ※博士・ポストドクター
 2011年度学校基本調査によると、大学院を置く大学は国内に617校。大学院の入学者数は増加しているが、博士課程の学生数は近年減少し、定員割れの研究科も。博士課程修了者は毎年約1万6000人。「ポストドクター(ポスドク)」と呼ばれる任期付き研究員は全国に約1万5000人。
『東京新聞』(2012年4月13日【暮らし】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2012041302000120.html
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