《月刊救援から》
☆ 進む琉球弧の軍事要塞化と無茶ぶり工事の強化
基地建設反対の正念場を迎える夏
琉球弧(南西諸島)の軍事要塞化が着実に進んでいる。
今度は沖縄列島の南、北大東島に航空自衛隊の移動式警戒レーダが配備されることが明らかになった。
北大東村では二〇二一年村議会が「自衛隊誘致を求める意見書」を全会一致で可決しているが、今後村議会の想定を超えて機能や規模が拡大することは明白だ。
実際、防衛省は「北大東島は警戒監視の空白地域だ」とし、レーダ配備だけでなく隊庁舎、火薬庫車両整備場、体育館など一五棟の本格的な自衛隊基地建設を計画している。
かつて与那国島では住民投票で自衛隊誘致が推進され、当初は沿岸監視隊というレーダ施設だけだったが、昨年一月、敵基地を攻撃できる長射程のミサイル基地建設計画が浮上している。
住民をだまし、既成事実を積み重ねる日本政府・防衛省の手口がまたもや行われているのだ。
一方、陸上自衛隊が二〇一四年から南西諸島の「有事」に備えた陣地構築などを想定して、第一五旅団(那覇)の第一五施設隊が琉球石灰岩を掘削する訓練を実施していることも明らかになった。
同旅団と同じく陸自西部方面隊の指揮下にある第五施設団(福岡)も本年三月、大分県の日出生台演習場に琉球石灰岩を持ち込み、砲弾を使って爆破する検証を実施していた。
これらの訓練は、南西諸島が戦場になった際、他国からのミサイル攻撃などを想定して、陣地構築や障害の除去、河川を渡る作業だと考えられる。
二〇一三年に閣議決定され、南西シフト(南西諸島の軍事要塞化)を決めた防衛大綱(二五大綱)に基づき早くも実戦を想定した訓練が行われていたのだ。各自衛隊駐屯地の司令部機能を地下化する動きもあり、まさに戦争を想定した基地強化が着々と行われているのだ。
また、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の「衛星」発射に備えるという名目で石垣島や宮古島、与那国島に設置された地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が「当分の間」として二か月以上も居座り続けている。
特に石垣島では自衛隊駐屯地が工事中であることを理由に、南ぬ浜新港地区の旅客船ターミナルに展開され、港湾労働者からの批判を受けて隣の人工ビーチに移動しただけであり、海開き後もなおとどまっている。
「北朝鮮の衛星発射」は今後も続く状況であり、PAC3の設置は常態化するのではないか。
辺野古新基地建設では、一八年一二月から土砂投入が開始された辺野古浜側工区でほぼ埋め立てが完成されたとされる。
となれば、安和や塩川港からの土砂搬出が終了するはずだが、現地で監視行動を行っている島ぐるみ会議の調査では、ダンプの積載量が徐々に少なくなっているという。少しでも工期を長引かせるつもりだろうか?
ただ一方で防衛省は、大浦湾側の埋め立て用として、岩ズリを含む土砂一〇〇万立方メートルを使う工事の入札開封を七月二〇日に行った。土砂を埋め立ての完了した辺野古側に「仮置き」する計画だ。
軟弱地盤の改良工事を含む大幅な設計変更申請が知事によって承認されていない中での工事は全く違法、不当だ。八・九月にも想定される「大幅設計変更承認を巡る最高裁決定」まで工事を引き延ばし、一気に大浦湾側の埋め立てを開始しようとしているのではないか。
生物多様性に満ちた大浦湾に生息するサンゴ類の「移植」のための採捕を巡る動きも強引だ。
防衛局が昨年七月県に小型サンゴ約八万四〇〇〇群体とショウガサンゴ八群体、大型サンゴ二一群体の移植をするための特別採捕許可を県に申請した。
しかし県は、「軟弱地盤のため設計変更申請が許可されておらず」「事業を完遂しうる状況にない」と不許可。これに対し農林水産相が「是正指示」を出し、その取り消しを巡って争われていた「国地方係争処理委員会」が七月一四日、県の訴えを退ける決定を行った。
サンゴの移植は既に破綻していることが明らかになっており、「地方自治の本旨」を全く無視する国の下請け機関に成り下がっている同委員会の実態が曝け出されたのだ。
安和、塩川では猛暑の中、島ぐるみ会議の懸命な「牛歩戦術」による土砂搬入阻止の行動が続いている。
当初の計画では五か月程度で完了とされていたが、埋め立て開始から既に五年近くが経過。こうした粘り強く地道な闘いの積み重ねによる成果だ。
辺野古浜では六月に開始から七〇〇〇日を迎えたが、キャンプシュワブ前の座り込みも七月で三三〇〇日を迎えた。
長期にわたる闘いの中では韓国・済州島で海軍基地建設や第二空港建設に反対している人々との交流もある。
六月二九日には済州からの訪問団一二人がキャンプシュワブ前を訪れ、地元の住民と交流を深めた。
七月二二日には韓国・済州島と台湾をヨットで往復しながら平和を訴えている韓国の若者グループが辺野古の海でヘリ基地反対協議会のカヌー隊のメンバーと共に「新基地建設反対」を訴えた。
基地建設反対の闘いはこの夏大きな正念場を迎えようとしている。八・九月にも予定される「設計変更承認を巡る裁判の最高裁決定」は恐らく国策に従属した内容になるだろう。沖縄の人々はそれでも「諦めない」闘いを続けていくだろうが、基地建設は「本土」の私たち自身の問題なのだ。どのような闘いが求められているのか、真剣な検討が求められている。
「止めよう!辺野古埋め立て」国会包囲実行委員会では、不当決定が出た一週間後、最高裁判所前での抗議行動を呼びかけている。抗議の声を政府にもぶつけ、埋め立て強行を許さないうねりを「本土」から作つていこう。
(中村利也/辺野古への基地建設を許さない実行委員会)
『月刊救援 第652号』(2023年8月10日)
《追伸》
☆ 辺野古、沖縄県敗訴が確定 軟弱地盤工事、最高裁判決 (2023年9月4日 共同通信)
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡り、軟弱地盤改良工事の設計変更を承認しなかった沖縄県に対する国土交通相の是正指示は違法だとして、県が取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(岡正晶裁判長)は4日、県側の上告を棄却した。是正指示を「適法」とした県側敗訴の福岡高裁那覇支部判決が確定した。裁判官5人の全員一致の意見。
工事には知事の承認が必要で、判決確定に伴って移設反対を掲げる沖縄県の玉城デニー知事は設計変更を承認する義務を負う形となり、今後の対応が焦点。国が埋め立て工事再開へ向かう可能性があり、双方の法的な対立は大きな節目を迎えた。
是正指示は、県に対して承認を強制する「執行力」がなく、知事には従わない選択肢もある。その場合、工事再開には国側が承認のための「代執行」の手続きを取る必要がある。
『東京新聞』(2023年9月4日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/274733
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