『労働経済白書』を読む
◆ 若年労働者の30.4%非正規
『労働経済白書』を読むにつけ、労働者の雇用、労働条件が年ごとに厳しさを増していることをひしひしと感じざるをえない。

◆ 高止まりの失業率
失業率でみると、『白書』の直近のデータである2011年1~3月期が4・7%(東日本大震災と福島原発事故の影響下にある岩手、宮城、福島を除く)で、ようするに5%近辺に高止まりしていて、バブル崩壊直後の最悪期に比較するとやや低下したものの、失業期間が1年を超える長期失業者が121万人で前年より36万人増え、失業者に占める割合は36・2%(つまり失業者のうち3分の1)で、これは前年よりも10・9%も増加していて、実態は一層の悪化である。
若者の失業率は世界的にも高く、平均値のほぼ2倍を超えるが、日本でもこの傾向は同じである。
20~24歳層9・1%、25~29歳層7・1%、となっていて、この2年間は上昇傾向を示している。
2011年3月の就職率は、大卒60・8%、短大卒65・4%、高卒15・8%と大きく悪化しているから、本年はさらに若者の失業率は高まらざるを得なくなっている。
そして、長期失業率は、15~24歳層で11・5%、25~34歳層で26・2%を占め、長期失業におかれた若者が多くなっている。
◆ 離職率は変らない
「7・5・3」などと言われてきた若者の離職率は、中卒65%、高卒40・4%、大卒31・1%であり傾向は変わっていない。
せっかく就職しても、劣悪な労働条件、これには低賃金、長時間労働、仕事にともなうトラブルなどがあるが、本来なんでも相談できる労働組合さえあればほとんど解決できる閲題である。
このような厳しい雇用情勢を、別の側からみることになる有効求人倍率は、2011年1~3月期は0・62%と、最悪期である09年7~9月期の0・43%に比べて持ち直していたが、ここに震災と原発事故が襲ったのである。
もちろん、震災や原発事故がなくとも、職を求める人に対して、約半分の求人しかないというのは厳しいし、失業している若者に聞くと、職安で見る求人欄では、中小零細企業しかなく、正規でも手取り20万円以下、定昇、賞与なしが大半であるという。
◆ 非正規の有配偶率
雇用形態をみると、雇用者全体の33・7%、3分の1強が非正規雇用者であり、前年比0・3%上昇し、依然として非正規の占める比重は高まっている。
雇用者数でみると、正規雇用者は前年比27万人の減少、非正規雇用者は32万人増えている。
世代別にみると、55~64歳層が最も非正規率が高く44・2%であるが、15~24歳層でも30・4%と高い。
非正規に置かれた若者の結婚問題も深刻である。15~34歳層でみると、「有配偶率」は正規が40%であるのに比べ非正規は10%、パー卜・アルバイトでは5~6%と低い。
◆ 苦境突破に 実践的力を
本年の白書の特徴として、「世代ごとに見た働き方」(働かされ方?)の分析が行われているが、「男性では、20歳代前半の非正規雇用割合が継続的に上昇しており、とくに70年代生まれ以降の世代で上昇している」と述べている。
本紙の購読者も団塊世代が多いと思われるが、団塊ジュニア以降の世代の多く、白書では73年~77年生まれをとくに典型として強調しているが、非正規で就職したまま正規になれず年を経ている若者が増えている。
いうまでもないが、先述したように中小零細では賃金や労働条件は非正規以上に厳しいところもあり、正規労働者なら救われるわけではない。
このような失業率の高止まりと非正規の増大、とりわけ若者に仕事を提供できない、結婚できない、子育てできないということ自体が、*資本主義の行き詰まりを鮮明にしていることはいうまでもない。
◆ 逆境の若者の力が展望の光
しかし、どう資本主義を罵ろうと、この苦境を突破できる実践的な力が生まれてこない以上どうしようもない。
正規化を求める闘いはいうまでもないが、たとえ非正規であっても賃金や労働条件を改善する均等待遇を求める闘いや、自公の横ヤリと菅首相の腰砕けで後退した、手厚い子育て支援の拡大等の政治的な闘いを前進させることが課題となっている。
この闘いを悲惨な状況に置かれている若者自身が率先して、大規模に力強く取り組めるようになったときに展望は切り開かれる。
『週刊新社会』(2011/8/16)
◆ 若年労働者の30.4%非正規
経済研究家 津野公男
『労働経済白書』を読むにつけ、労働者の雇用、労働条件が年ごとに厳しさを増していることをひしひしと感じざるをえない。

◆ 高止まりの失業率
失業率でみると、『白書』の直近のデータである2011年1~3月期が4・7%(東日本大震災と福島原発事故の影響下にある岩手、宮城、福島を除く)で、ようするに5%近辺に高止まりしていて、バブル崩壊直後の最悪期に比較するとやや低下したものの、失業期間が1年を超える長期失業者が121万人で前年より36万人増え、失業者に占める割合は36・2%(つまり失業者のうち3分の1)で、これは前年よりも10・9%も増加していて、実態は一層の悪化である。
若者の失業率は世界的にも高く、平均値のほぼ2倍を超えるが、日本でもこの傾向は同じである。
20~24歳層9・1%、25~29歳層7・1%、となっていて、この2年間は上昇傾向を示している。
2011年3月の就職率は、大卒60・8%、短大卒65・4%、高卒15・8%と大きく悪化しているから、本年はさらに若者の失業率は高まらざるを得なくなっている。
そして、長期失業率は、15~24歳層で11・5%、25~34歳層で26・2%を占め、長期失業におかれた若者が多くなっている。
◆ 離職率は変らない
「7・5・3」などと言われてきた若者の離職率は、中卒65%、高卒40・4%、大卒31・1%であり傾向は変わっていない。
せっかく就職しても、劣悪な労働条件、これには低賃金、長時間労働、仕事にともなうトラブルなどがあるが、本来なんでも相談できる労働組合さえあればほとんど解決できる閲題である。
このような厳しい雇用情勢を、別の側からみることになる有効求人倍率は、2011年1~3月期は0・62%と、最悪期である09年7~9月期の0・43%に比べて持ち直していたが、ここに震災と原発事故が襲ったのである。
もちろん、震災や原発事故がなくとも、職を求める人に対して、約半分の求人しかないというのは厳しいし、失業している若者に聞くと、職安で見る求人欄では、中小零細企業しかなく、正規でも手取り20万円以下、定昇、賞与なしが大半であるという。
◆ 非正規の有配偶率
雇用形態をみると、雇用者全体の33・7%、3分の1強が非正規雇用者であり、前年比0・3%上昇し、依然として非正規の占める比重は高まっている。
雇用者数でみると、正規雇用者は前年比27万人の減少、非正規雇用者は32万人増えている。
世代別にみると、55~64歳層が最も非正規率が高く44・2%であるが、15~24歳層でも30・4%と高い。
非正規に置かれた若者の結婚問題も深刻である。15~34歳層でみると、「有配偶率」は正規が40%であるのに比べ非正規は10%、パー卜・アルバイトでは5~6%と低い。
◆ 苦境突破に 実践的力を
本年の白書の特徴として、「世代ごとに見た働き方」(働かされ方?)の分析が行われているが、「男性では、20歳代前半の非正規雇用割合が継続的に上昇しており、とくに70年代生まれ以降の世代で上昇している」と述べている。
本紙の購読者も団塊世代が多いと思われるが、団塊ジュニア以降の世代の多く、白書では73年~77年生まれをとくに典型として強調しているが、非正規で就職したまま正規になれず年を経ている若者が増えている。
いうまでもないが、先述したように中小零細では賃金や労働条件は非正規以上に厳しいところもあり、正規労働者なら救われるわけではない。
このような失業率の高止まりと非正規の増大、とりわけ若者に仕事を提供できない、結婚できない、子育てできないということ自体が、*資本主義の行き詰まりを鮮明にしていることはいうまでもない。
◆ 逆境の若者の力が展望の光
しかし、どう資本主義を罵ろうと、この苦境を突破できる実践的な力が生まれてこない以上どうしようもない。
正規化を求める闘いはいうまでもないが、たとえ非正規であっても賃金や労働条件を改善する均等待遇を求める闘いや、自公の横ヤリと菅首相の腰砕けで後退した、手厚い子育て支援の拡大等の政治的な闘いを前進させることが課題となっている。
この闘いを悲惨な状況に置かれている若者自身が率先して、大規模に力強く取り組めるようになったときに展望は切り開かれる。
『週刊新社会』(2011/8/16)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます