◆ 最低時給「1000円以上」に
~神奈川の68人 国を訴え 生活保護"逆転現象"解消求める
神奈川県の最低賃金が生活保護の水準を下回るのは違法として、県内で働くタクシー運転手やコンビニ店員らが国を相手に、最低賃金を時給千円以上に引き上げるよう求め、横浜地裁に提訴した。法廷では、生活保護費から最低賃金を算出する現行の計算方法にも疑問を投げかける構えだ。 (稲田雅文、田辺利奈)

裁判は、時給千円以下で働く二十~七十代の非正規労働者ら五十人が六月に起こした。低賃金の正社員も加わる。今月三日には十八人が追加提訴。直前に、原告らは横浜地裁前で「人間らしく生き働くことは憲法上の権利です」と書かれた横断幕を掲げ、裁判の意義を訴えた。百人を目標に、現在も原告を募る。
「スタート地点にすら着けない。一生このままなのかと不安です」。原告の男性(30)は、訴訟に加わった背景をこう話す。
横浜市と川崎市の学童保育でアルバイトとして働きながら、通信教育で教員免許を取るため勉強する。時給は九百円程度で毎月十万円稼げればよい方だ。
生活費に充てると学費の捻出もままならない。今の生活を抜け出すため、勉強を優先させれば働く時間がなくなる。先が見えない日々だ。「ぎりぎりの生活の人がいるということを裁判で訴えたい」
木工細工関連の中小企業に勤めていた原告の男性(37)は、月給十二万五千円で働いていた。換算すると時給七百円程度。別の場所でも働き、生計を立てた。
しかし、経営者から「経営が苦しいから辞めてくれ」と解雇された。現在は、自営で木工細工関連の仕事を取って生活する。苦しいのは税金や社会保険料の支払い。「結婚もできない」と不安になる。「せめて時給千五百円は欲しい。中小企業には自分のような境遇の人がたくさんいるはず」と訴える。
◇
二〇〇八年改正の最低賃金法では、生活保護の給付水準を下回らないよう配慮が定められた。神奈川県の一〇年度の最低賃金は、八百十八円と全国二番目に高い水準だが、時給換算した生活保護の給付水準を二十三円下回る。
“逆転現象”は、同県以外に東京都や宮城県など八都道府県でも起きている。原告団は、憲法や最賃法の理念・規定に違反した状態と主張する。
神奈川地方最低賃金審議会は今月上旬、十八円引き上げるよう神奈川労働局に答申した。しかし、改正後も生活保護の給付水準を五円下回る。原告団事務局を務める神奈川労連の福田裕行副議長は「改定後も貧困やワーキングプアを解消できないのは明らか」と強調する。
原告団は、月額の生活保護費から時間給の最低賃金額を計算する厚生労働省の方法に問題点が多いと指摘。同省が一七三・八時間としている月間労働時間は統計上、百五十時間程度が妥当で、結果として、他の経費も合わせた正当な金額は、時給千四百七十一円になると主張している。
原告弁護団の田渕大輔弁護士は「低賃金化が進み、一家の大黒柱ともいえる人が原告に加わっている。千円は待ったなしの緊急の目標だ」と訴える。
※本年度6円引き上げ 厚生労働省
二〇一一年度の最低賃金改定は、厚生労働省の中央最低賃金審議会小委員会が七月、全国平均(現行時給七百三十円)で、六円引き上げる目安を決めた。
これを基に、都道府県ごとにある地方最低賃金審議会が議論し、十月ごろに改定される。
一〇年度の十五円など、昨年までの四年間は十円を超える引き上げが続いた=グラフ。
しかし、小委員会の議論で経営側が、東日本大震災や円高などで企業の支払い能力が乏しいと主張。
最低賃金が生活保護水準を下回る九都道府県では上積みを求めたが、大半の地域は一~四円と小幅にとどまった。
『東京新聞』(2011年8月19日【暮らし】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2011081902000075.html
~神奈川の68人 国を訴え 生活保護"逆転現象"解消求める
神奈川県の最低賃金が生活保護の水準を下回るのは違法として、県内で働くタクシー運転手やコンビニ店員らが国を相手に、最低賃金を時給千円以上に引き上げるよう求め、横浜地裁に提訴した。法廷では、生活保護費から最低賃金を算出する現行の計算方法にも疑問を投げかける構えだ。 (稲田雅文、田辺利奈)

裁判は、時給千円以下で働く二十~七十代の非正規労働者ら五十人が六月に起こした。低賃金の正社員も加わる。今月三日には十八人が追加提訴。直前に、原告らは横浜地裁前で「人間らしく生き働くことは憲法上の権利です」と書かれた横断幕を掲げ、裁判の意義を訴えた。百人を目標に、現在も原告を募る。
「スタート地点にすら着けない。一生このままなのかと不安です」。原告の男性(30)は、訴訟に加わった背景をこう話す。
横浜市と川崎市の学童保育でアルバイトとして働きながら、通信教育で教員免許を取るため勉強する。時給は九百円程度で毎月十万円稼げればよい方だ。
生活費に充てると学費の捻出もままならない。今の生活を抜け出すため、勉強を優先させれば働く時間がなくなる。先が見えない日々だ。「ぎりぎりの生活の人がいるということを裁判で訴えたい」
木工細工関連の中小企業に勤めていた原告の男性(37)は、月給十二万五千円で働いていた。換算すると時給七百円程度。別の場所でも働き、生計を立てた。
しかし、経営者から「経営が苦しいから辞めてくれ」と解雇された。現在は、自営で木工細工関連の仕事を取って生活する。苦しいのは税金や社会保険料の支払い。「結婚もできない」と不安になる。「せめて時給千五百円は欲しい。中小企業には自分のような境遇の人がたくさんいるはず」と訴える。
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二〇〇八年改正の最低賃金法では、生活保護の給付水準を下回らないよう配慮が定められた。神奈川県の一〇年度の最低賃金は、八百十八円と全国二番目に高い水準だが、時給換算した生活保護の給付水準を二十三円下回る。
“逆転現象”は、同県以外に東京都や宮城県など八都道府県でも起きている。原告団は、憲法や最賃法の理念・規定に違反した状態と主張する。
神奈川地方最低賃金審議会は今月上旬、十八円引き上げるよう神奈川労働局に答申した。しかし、改正後も生活保護の給付水準を五円下回る。原告団事務局を務める神奈川労連の福田裕行副議長は「改定後も貧困やワーキングプアを解消できないのは明らか」と強調する。
原告団は、月額の生活保護費から時間給の最低賃金額を計算する厚生労働省の方法に問題点が多いと指摘。同省が一七三・八時間としている月間労働時間は統計上、百五十時間程度が妥当で、結果として、他の経費も合わせた正当な金額は、時給千四百七十一円になると主張している。
原告弁護団の田渕大輔弁護士は「低賃金化が進み、一家の大黒柱ともいえる人が原告に加わっている。千円は待ったなしの緊急の目標だ」と訴える。
※本年度6円引き上げ 厚生労働省
二〇一一年度の最低賃金改定は、厚生労働省の中央最低賃金審議会小委員会が七月、全国平均(現行時給七百三十円)で、六円引き上げる目安を決めた。
これを基に、都道府県ごとにある地方最低賃金審議会が議論し、十月ごろに改定される。
一〇年度の十五円など、昨年までの四年間は十円を超える引き上げが続いた=グラフ。
しかし、小委員会の議論で経営側が、東日本大震災や円高などで企業の支払い能力が乏しいと主張。
最低賃金が生活保護水準を下回る九都道府県では上積みを求めたが、大半の地域は一~四円と小幅にとどまった。
『東京新聞』(2011年8月19日【暮らし】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2011081902000075.html
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