
☆ 疲弊する保育士 良い保育できない (週刊新社会)
「異次元の少子化対策」を打ち上げた岸田首相に対して、1948年の制度創設以来変わらない4歳・5歳児の配置基準など、保育士一人当たりの児童数の基準の改善が大きな焦点となっている。
世界と比べて劣悪な基準となっており、それでも少しでも良い保育をと頑張っている保育士の努力任せにするのは限界だ。
子どもたちから一日中目が離せず、子どもの昼寝時間ですら、事務処理や保護者との連絡帳書きに追われる。しかも、他産業平均に比べて賃金ははるかに低く、現場は疲弊と離職を繰り返す。
保育される子どもたちにも良いはずはない。子どもたちの意志や発想を大切にする保育ができるのだろうか。
内閣府の21年1年間の集計では、全国の保育園や幼稚園、認定こども園でへ子どもが全治30日以上のけがや病気を伴う事故は、6年前の4倍近い2347件に上った。
一方、自治体直営の保育所は、福祉の現場を直撃した「行政改革大綱」による人減らし、「指定管理者制度」による民間委託が進められた。
さらに老朽化した保育所を建て替える際、公立では国から建設費補助が出ないが民間なら出るため、私立への切り替えが進む。
少子化対策が叫ばれて久しいが、統一自治体選挙が終れば、これまで繰り返されてきたように議論がしりすぼみになる可能性が強い。
軍事費増大には財源をひねり出す政府だが、人が生きるために必要な福祉や教育には財源不足の主張を繰り返してきた。
☆ 見直し案は不十分であいまい
現在の消費税率アップを正当化する2012年の「社会保障と税の一体改革」にも、保育士配置基準の見直しが盛り込まれた。しかし、基準はそのままだ。
昨年1年間で配置基準見直しの意見書を可決した市議会は31議会に上り、当事者団体の改善要望は強い。
政府は3月末に保育士配置基準見直しのたたき台を発表。1歳児は現在の6人から5人へ、4歳児以上は30人を25人とするものだ。
しかし、3歳児以上は13人のイギリス、15人のフランスに比べ、いかにも劣悪。
それすら小倉将信こども政策担当相は、4月4日の参議院内閣委員会で、基準を変えるのではなく、保育士を手厚く配置した保育所に運営費加算を行うと答弁。
こうなると施設によって格差が生じる。
15年度に3歳児の基準20人を15人に保育士配置を変えた私立保育園に同様の加算を行ったが、昨年3月時点で9割の配置増にとどまっている。
法令上の基準をきちんと変え、政府が財政保障しない限り、財政力のある自治体とそうではない自治体で生じている子育て支援格差が、各保育所間でも生じることになる。
『週刊新社会』(2023年4月26日)
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