媚びない迷宮

2008-11-02 | 映画のこと


パンズ・ラビリンス (2006/メキシコ=スペイン)


恐ろしい映画であります。

いわゆる「ファンタジー映画」というイメージで鑑賞されますと
必ず痛い目にあいます。保証します。
僕等が観てきた80年代のあの素晴らしきファンタジー映画たちとは
かなり違いますから。

妖精が飛んできてチュ♪なんてことも、
犬みたいなドラゴンに乗って、ガキ大将を蹴散らしたり
モッコリタイツのデビッド・ボウイ王様の迷宮で
舞踏会に参加したりとかも
指輪に惑わされながら、ちびっ子たちが巨大な悪を撃退したり
成長が心配される眼鏡少年が、楽しい魔法学校で学んだり

そんな素敵な事は、断じて起こり得ないのです。
どれも名作ですけどね。(眼鏡魔法は??だけども)

だから、覚悟を決めて観た方が良いです。

このギレルモ・デル・トロの
正当な悪意に満ちたファンタジー映画は
絶望の淵から産まれる「ファンタジー」に
正面からぶつかり、媚びる事無く最後まで突き進み、
観る者に思い知らしめてくれるのです。

これ、面倒なプロデューサーが居たら、
絶対にOKは出なかったでしょう。

スペイン内戦を背景に、描かれる不幸な少女の物語は、
太刀打ち出来ない大人たちの現実と
戦う唯一の手段として産まれる少女の非現実世界が
見事に描かれています。

ファンタジーとは、「逃避」の為ではなく、
「戦う」為でなくてはいけません。
この映画も、それをしっかりと描いており、
一部で言われてる様な「悪趣味」なものだとは
僕は全く思いませんでした。

ファンタジーを描く時、
その裏側にある「現実」から目を反らす事は出来ません。
勿論、完全な子供向け娯楽作品等では、
そこまで描く必要はない例外はありますけど。


ギレルモ・デル・トロ監督の映像・美術も
美しく残酷で魅力的です。




トンデモ未満

2008-10-19 | 映画のこと


インベージョン

ボディ・スナッチャーの原作4度目の映画化だそうで。

墜落して散らばったスペースシャトルの破片に付いてきた
謎のウィルスにより、大変なことになります。

短い時間で一気に観る事が出来ます。
ニコール・キッドマンの美しさに大分助けられてはいますが
レム睡眠で遺伝子を書き換えるというトンデモウィルスにより
感情を失っていく不気味な世界が、緊張感を持って持続します。
絶対に寝ちゃいかんってのも、ドキドキ要素で。

人間が人間性を失うことで、
世界から争いが無くなっていくってのも
皮肉で面白いテーマではありますが、
基本的には、子供を守ろうとする母親の頑張りを主軸にしてる為、
ちょっとテーマのぼやけたフワフワ感があります。

世紀のトンデモ映画『フォーガットン』から
トンデモ度を減らし、もうちょっとちゃんと作ったぜ映画。

こういう映画は、想像力を働かせながら観るべし。
「自分だったら」「自分の家族が」「この場合子供の存在がなかったら」
ってね。その都度、自分だったら選択をしながら。
その方が楽しめますね。

秋の夜長になんとなく出会えたら、
「ほぉ~」な映画であります。

一番の見所は、
やっぱりニコールの美しさなのであります。

また映画の話ですいませんね。。





サバ?

2008-10-16 | 映画のこと


あるいは裏切りという名の犬

この懐かしきフィルム・ノワール感丸出しな邦題と、
ダニエル・オートゥイユとジェラール・ドパルデューの
裏切り映画という、花の無さ満点の渋さに感動し、
絶対に観てやるぞ!と思いつつも、すっかり忘れていた仏映画。

原題『36』ですよ。36!
それにこの邦題。
日本の配給会社の人、そうとうですな☆

仏映画らしい閉塞感は多少ありますが、
カラー作品ですしね、登場人物の感情もしっかり表現されてますし、
時代も時代ですし、ドイツ表現主義的なものではありません。

なんとなくノワール、なのであります。

とてもしっかり撮られた映画でした。
主演のお二人の存在感は、そりゃ素晴らしいですし、
美しく骨太な男映画です。

ハリウッドで、デニーロ&クルーニーでリメイクというはなし。
こら!ずるいぞハリウッド!そりゃ売れるぞハリウッド!

ただ、僕はダントツで仏版のお二人を推しますよ。
あの空気は、なかなか出せるもんじゃないさ。

仏映画観てていつも思うんだけども、
あちらの警察って、どんだけ汚職まみれなんですか?
映画のせいで、僕、パリ警視庁に良いイメージ
ひとつも持てないんですけど。。。


重いのや暗いのは観ない!
って人は、観ない方が良いかもね。
もったいない☆

因みに、犬は一匹も出てきませんので。



←負けないぞ。今日の夕飯。


NY大変

2008-09-21 | 映画のこと


クローバーフィールド

予告編で気になっていたので、観てみました。
NY最後の日を、ホームビデオの手持ち映像のみで
描くというのが「売り」な映画です。

あまり評判が良くなく、心配しながら観ましたが
僕は十分に楽しめました。

確かにね、素人手持ち映像風を長時間見せられる訳ですから
人によっては恐ろしい『酔い』との戦いになると思います。
そこをクリアした人のみが楽しめるディザスタームービー。
遊園地のアトラクションと一緒です。

僕は、最近の一人称視点ゲーム慣れのおかげで、
酔いにもまったくやられずに観れました。

内容は観てない人の為省きますが、
予告編観て、「こういうのだろうなぁ」と思ったのものが全て。
予想外の事は何一つ起こりませんし、
「手持ち風」以外は、ディザスターとして新しい事もなし。

ただ、それが「ツマラナイ」という事ではなく、
その手の映画を楽しみたい人間が期待するものを
しっかり維持した良演出となってます。
話は勿論、ざっくり大味ですよ。

ホームビデオの中に迫力の特撮映像ってのが面白い。
映像が特殊なので、80分ちょいで終わらせたのも正解。

空っぽで観れます。







やるな

2008-07-07 | 映画のこと


観てみた。
私、この原作は一度も読んだ事がございません。
ので、なんの思い入れも先入観も無く観ましたが、
なかなかでした。

実はもっとバカバカしい面白漫画かと思ってたんだけどね。

なんて重いんだ。。。
あまりも絶望的な登場人物達に苦しみながら、
何とか最後まで観終えましたよ。

最近の大人アニメに多い、哲学的(ふわふわな)なセリフの羅列もなく、
子供の口から出るドキッとさせられる簡素な言葉の中で、
深い闇と光を語ろうとする演出がとても良かった。
観念的と言ってしまえばそうなんですが、
それを「観せる」事にしっかりと成功しています。

アニメとしても、意味無く新しい手法を取り入れたりせず、
独特な街の色彩、スピード感、内世界の表現等、
場面ごとにぴったりな絵・手法で見せてくれるので、
安心して「お話」に集中出来ました。

蒼井優の声優っぷりが凄い。
監督、日本人じゃないのね。。


映画鑑賞

2008-05-25 | 映画のこと
最近すっかり映画を観なくなり、たまにツタヤなんか覗くと、
「観たい」と思っていた映画が山ほど並んでいます。

そんな中、最近観た映画といえば、「さくらん」「大日本人」という
しょうもないと口に出すのもしょうもない2本。
映像美が売りの「さくらん」は本当にソレだけで、お話は大味少女漫画。
売りであるソレですら、2時間近く目にするには少々弱め。
椎名林檎のビデオクリップとして3分で終わる、
のであれば話は別な映画でした。

「大日本人」
松本人志の映像作品は過去にも面白い物が多く、
期待もしてましたが、これはいかんでしょ。。。
残念な人をドキュメンタリータッチで描くという手法なのですが、
何百倍のお金をかけながら、劇団ひとりが自身のDVDの中でやっている
人間ドキュメントの足元にも及ばない。

メイン「笑い」、サブ「哀愁」を逆転させ
人間を描くドラマ方面に行ってくれたら
良いものを観せてくれそうなんだけどなぁ。


 

2作共に、「映画」と呼ぶにはちょっと残念と感じ、
先日テレビで観た「ナルニアなんちゃら」の方が
100倍楽しめた私なのでありました。

あれはあれで…だけどさ、
面倒だからおしまい!




デッカードは何者か

2007-12-17 | 映画のこと
 ←予告編も

【初回限定生産】
『ブレードランナー』製作25周年記念
アルティメット・コレクターズ・エディション(5枚組み)

14,800円。。。

あぁ、どうしても欲しい。。。
ビデオ(2バージョン)、レーザーディスク(2バージョン)、DVDと、
この映画の映像ソフト、どれだけ買わされたか分からないけど
それでも、どうしても欲しい。。。

リサーチ試写版
初期劇場公開版
インターナショナル・バージョン
ディレクターズ・カット
ファイナル・カット

監督の意図しない形での劇場公開となった為、
後に監督自身が手を加えた物など、最新の「ファイナル・カット」まで
バージョンが5つ存在する。
映像を数個追加するだけで、全く違う解釈が可能になってしまったり
いろいろ想像する要素が豊富で、ファンの間でも議論が続いているのです。

今回、全て入ってるから、もう大丈夫ではなかろうか。


小学生の頃、初めて「ブレードランナー」を観た時の感動ったら、
32歳になった今でも追い続けてしまう程のものでした。
内容は子供には難しかったけど、あまりにも独特で完成された近未来の世界。
酸性雨が降り続け日本語の溢れるネオンの街。
フィルム・ノワールを感じさせる絶望的な未来の姿に、なんだか胸が躍った。

フィリップ・K・ディックの小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を
原作とし、後のサイバー・パンク映画にあまりにも大きな影響を与え、
結果、未だに僕自身、同ジャンルでこの作品を超えるものに出会えずにいます。

リドリー・スコット監督にも強い思いが根付き、
公開される物は全て観てしまうのです。
素晴らしい音楽をつけたヴァンゲリスも同じく。


あぁ、どうしよう。。。
買っちゃおうかな。。。
家賃ひと月滞納中だけど。。。
【初回限定生産】って書いてあるし。。。






83-89

2007-09-22 | 映画のこと

↑クリック☆

1983年頃。
僕が映画を最も楽しく観ていた時期。
丁度ファミコンが登場した時期でもありました。

空き地で野球やサッカーをして、秘密基地を作って、
ちょっと裕福な家庭の子の御家へファミコンをやりに行く。

町には、まだかろうじて駄菓子屋さんも生き残っていて、
とにかく「遊び」のバリエーションが多かった。

そんな時期、1982年の「ET」公開から始まった僕の映画好き。
母に連れられて行列に並び、なんとか立見を免れたものの、
一番前の座席という子供には最悪の場所で、
スクリーンの全体など見渡す事も出来ず、
今みたいに何でも「日本語吹き替え同時公開」なんて親切さも
ありませんでしたので、目の前の大きな字幕にも困りました。

それでも、映画館の雰囲気とスクリーンの大きさに圧倒され、
今は失いつつあるピュアな感動で胸を躍らせ、目を輝かせていました。

暗いさなぎの様な中高校時代、おかげで一人で沢山の映画を観れました。
お小遣いを貯めて、映画を観に行く。本当に大きな事だったなぁ。

幸運にも、親戚に映画マニアが居てくれた為、
そのお家に行けば、沢山のコレクションから選び放題で、
自分で映画館に行く感じではない、ちょっと大人な映画も
観る事が出来たりで良い環境でした。


この時期に観た映画。
今回は83年から89年公開のものを集めてみました。
思い出せるだけでもこれだけあるのだから、
きっともの凄い勢いだったのでしょう。
何だか「楽しい」映画が多かったですしね。

大きな戦争もテロも無かった時期ですから。
ベトナム戦争後のアメリカもフワフワしてました。
冷戦の緊張感ちょっぴりで。


近い世代の人なら、チラシを見ただけでもワクワクするはず。


映画と本

2007-09-17 | 映画のこと
どうも右足のお姉さん指に
ヒビが入ってそうな気がする林です。
こんばんは。

先週から「何かおかしいぞ」と感じていたお姉さん指。
見た目はっきり腫れてますしね、触るとちょっと嫌な痛みが走ります。
指の中でも地味な存在であるお姉さん指。
こんな時にしか気に留めず申し訳ない。。。

皆様、連休でしょ?いかがお過ごしでしょうか。
私は2日間で映画を6本も観ましたよ。
勿論、そんなに映画館に行くお金も気力もありませんので、
観てない映画だらけの僕のDVDファイルから。
新らしめのから、懐かしめのまで。



「サイレントヒル」怖かった。
観るんじゃなかったかも。
苦手なのよね、こういうの。。ゲームは平気でやってるくせに。
でも、とても綺麗でゲームの世界も完璧に再現してて凄かった。
「バイオハザード」みたいな裏切りは無いです。
movieのページにも書いてます)


テレビでやってた
「あらすじで楽しむ世界名作劇場」っての。
タレントさんが解り易くあらすじを紹介してくれる番組。

『モンテクリスト伯』アレクサンドル・デュマ
『ジーキル博士とハイド氏』スティーブンソン
『人間失格』太宰治
『アンナ・カレーニナ』トルストイ
『蹴りたい背中』綿谷りさ
『地獄変』芥川龍之介

『蹴りたい背中』以外は読みましたが、
見事に僕には???だった作品ばかり。。。
『モンテクリスト伯』なんて読むこと事態が地獄でしたし。
全7冊って。。。『戦争と平和』といい、拷問に近いです。
ロシア文学は登場人物の名前がまずいけません。
アナトーリ・ワシーリエヴィチ・クラーギン公爵と、
エレン・ワシーリエヴナ・クラーギナが、
ピョートル・キリーロヴィチ・ベズウーホフ伯爵に。。。

発狂しますよ!

「名作」をさっぱり理解できない自分に不安になった。
『地獄変』だけは、ちょっと面白かった気もしないでもない。
『人間失格』は太宰さんの姿勢が不快でしかなかったな。

本も、読んだ時期で感じるところは変ってくるもので、
当時解らなかったものも、もう一度読んでみたら違うかも。
ヘッセの作品など、絶対に10代から20代前半に読んでおくべきだし
出会えて本当に良かったと今でも感謝しています。
逆に、今30代になって共感出来るものもあるだろうからね。

それでも太宰先生はイヤ。。。
それとやっぱり、「ニーチェが解る」なんて言うヤツは8割方嘘つきだ。
ファッションなんだろ!?と。


PONT-NEUF 1991

2007-09-12 | 映画のこと



90年代前半に映画青年であったならば、
必ず「良いよねぇ」と言わなければならなかった映画
「ポンヌフの恋人」をご存知か。
おフランス監督レオス・カラックスの
「ボーイ・ミーツ・ガール(1983)」
「汚れた血(1986)」に続く
アレックス三部作といわれる映画の
最後を飾る力作でございます。

正直私、当時さっぱり解りませんでした。
おそらく、今観てもさっぱりだと思いますけども。

この「さっぱり顔」をいかに「解ったような顔」に変えるかで
当時の映画青年たちの周囲からの扱われ方が変るのです。
これはカラックス作品に限らず、多くのヨーロッパ映画に共通する
難題でありまして、ジャン=ジャック・ベネックス(ベティ・ブルー)
等も代表的な監督であります。

勿論、とても良い作品は沢山ありますけどね。
パトリス・ルコント(「仕立て屋の恋」とか)なんか大好きですし。

まぁ映画学校ともなれば「解ったような顔」だらけでありまして、
何も解らなかった私は何とか話を合わせるので精一杯した。
「ダイハード最高!」なんて、口が裂けても言えない雰囲気。
そこが気味の悪いところ。
「どっちも面白いのあるだろうし観ろよ!」ってひねくれてました。

が、

その後、私も流れに流され、
頭カチカチの時期に突入するのですがね。。。




この「ポンヌフ」ですがね、話自体は「う~ん、よく解らん」ってな
ものでしたが、不思議な力がありまして、
なんだろう。。。スクリーンから発せられるエネルギー量が
半端じゃないのです。
「重たい」と言ってしまえばそれまでなんですが、
普段「重たい!」で片付けてしまう作品とは明らかに違う「何か」がある。
生々しさと嘘臭さに目眩がしつつも。

ジュリエット・ビノシュの、
美人ではないんだけど。。。な「何か」も。

話もよく解らん
登場人物にも共感できん

だのに、惹きつけられる「何か」がある。
僕にとってはとても不思議で、思い出深い映画なのでありました。

観る時は、あまり疲れていない夜にしっかり睡眠を取ってからに
した方が良いかと思います。


あぁ、文章ふわふわ。。。