長い間封印されていた映画
『シラノ・ド・ベルジュラック』
何の封印かというと、
僕の個人的な思い入れによる封印でして。
青春真っ盛りの若かりし頃、
コンプレックスに振り回され、頭の中は毎日カオスな時期、
僕にも「彼女」なんて素敵な人が出来ましてね。
その彼女が好きだった映画なのです。
フランスに実在した男をモデルにした超有名なお話で、
詩人かつ剣客でありながら、大きな鼻のコンプレックスに悩み、
生涯ひとつの恋を貫いた男の生涯を描くエドモン・ロスタンの有名な戯曲。
映画化も何度も行なわれていますが、
僕等は1990年版ジャン=ポール・ラプノー監督、
ジェラール・ドパルデュー主演の名作の世代ね。
この映画がどんなに素敵かという事を夢中で話す彼女に、
当時の僕は、(こんなロマン小説みたいな話、面白いか?)
と強がりつつも、微笑ましく聞いていたのを思い出します。
夢のようなほんの数ヶ月。
その後、彼女が亡くなって、
ヨレヨレの僕は、初めて一人でこの映画を観てみました。
いろんな想いが重なってはいたろうけど
ただ「すごい映画」だと思いました。
ドパルデューのシラノが本当に素晴らしく、
僕の中では完全にシラノ=ドパルデューとなってしまい、
今でも他のキャストでは絶対に観たくないもの。
ジャン・クロード・プティの音楽も、
これぞ映画音楽!という素晴らしいもので、
音楽がしっかりと物語を語っていました。
その後僕は、気の抜けたフワフワした状態で
20代前半を過ごすのですが、
その時期に買ったこの映画のビデオが3本(ふわふわだからね)
今でもロフトの宝物入れの中に眠っています。
もう随分月日は流れたけども、
まだ僕は、独り(正気な状態で)この映画を観る事はできませぬ。
月日が忘れさせてくれない事もあるのね。
僕の個人的封印に気を使ってくれているのか、
これ程の名画にも係わらず、未だにDVD化がされていないから
観たくても観れないんだけどね。
ビデオデッキは捨てちゃったし。
宝物入れ開けちゃうと、こっちの世界に戻ってこれるか自信もないし。。
数日前、いろんな映画音楽が入った懐かしいCDが出てきて
夜中にポケーっと聴いていたら、この曲が流れまして
一気に十数年前に飛んでいってしまい、
またちょっとフワフワしているところです。
ごきげんよう。
音楽だけね♪