奈良旅記 5 (鍋蔵山 東明寺へ)

2012-05-27 | 奈良旅記
松尾寺から一旦山を下り、矢田丘陵を北上します。
途中にある矢田寺は、今回は時間の都合上諦め、
拝観の予約をしている「鍋蔵山 東明寺」を目指します。

矢田丘陵の中腹に建てられた山岳寺院。
ルートとしては、矢田寺方面から繋がる山中のハイキングコースを歩くか、
車で山を上るしかありません。
最寄のバス停からでも、徒歩で30分以上かかるそうです。

僕は車で山に入りましたが、これが大変な道程でした。
小さなデミオでもギリギリな道を、脱輪しないように慎重に上ります。
おまけに、普段お目にかからない急勾配で、「これ、車で上がれるの…?」という
ヒヤヒヤした状態で進みます。
途中、あまりにも不安になる急勾配カーブを前に、草むしりをするお爺さんを発見。

「この上の方にお寺さんがあると思うのですが、車で上がって行けますか??」

「えっ?お寺?」
(小さなお寺付近で道を尋ねると、この反応が必ずと言っていい程返ってきます。
地元の人たちにしたら、改めて「お寺!」って言われると一瞬分からなくなるんでしょう。
地元の愛称で呼ばれてるお寺も多いですから。)

「あぁ、あるよ。上ってって大丈夫だよ~」という事で、
ホッとしつつも続く上り坂を行きます。

暫く行くと、道が行き止まり、東明寺の駐車場に出ました。
本当にホッとしました。




車を出ると、美味しい空気と山に反響する鶯の声。
そして、緑、緑、みどり~!

駐車場から5分ほど趣のある土塀の石段を上る木々の隙間に本堂が見えます。
少し手前を曲がり、あまり人が通ってなさそうな山門へ。
一応、ここから本堂に上りたかったので。




日本書紀の編纂に携わった舎人親王の開基と伝わる。
母親である持統天皇が 眼病に苦しんでいたおり、白鬚明神からのお告げがあり
霊山に登って与えられた金鍋で霊泉をすくい眼を洗わせたところ
眼病が平癒した。感謝を表すため 同地に精舎を建てたのが後の東明寺。

東明寺は、小さな山門と本堂のみの小さなお寺です。
とにかく「自然のまま」な感じで素敵です。




ぐるっと周りを歩き、本堂の隅に座らせていただき休憩。
約束の時間になったので、住職に電話をします。
(携帯電話って凄いね、あんな所からでも電話できちゃうんだから…。)

電話に出た若い住職さん、「え? あ、そうでした! はい、すぐ行きます!」
のんびり待っていると、本当に若い住職さんが、やって来ました。
途中にあったお家に住んでるんでしょうね。

とても感じの良い住職さんで、いろいろとお話をしながら、
本堂脇から本堂内に入れてもらいます。




絨毯や布団が微笑ましい堂内。
正面に座らせて頂き、いろいろと準備をしてくださる住職さんと世間話。
一人で東京から楽しみに来たと話すと、とても喜んでくれました。

一通り照明が点き、正面に現れた本尊の薬師如来さま。
「待ってました!!」なテンションを抑え、暫し手を合わせます。

平安時代の作で、像高94cm、桜の一木造。
体がやや左側に傾いていて、ウエストが引き締まって逆三角形の体つき。
くびれた体と腕の隙間に、裏側の衣が見えるのも珍しいですね。
あと、襟が立っているのも珍しく、とにかく独特の雰囲気を持つ仏さまでした。
光背は、肉眼では何も無い一枚板に見えますが、墨で唐草文様が描かれていたそうで、
赤外線による調査では、くっきりと浮かび上がったそうです。



本尊さまの両脇には、吉祥天さんと毘沙門天さん。
ご夫婦ですね。

●毘沙門天立像(重文) 木造・平安時代作・像高160.5cm
●吉祥天立像(重文) 木造・平安時代作・像高91.4cm

お二人とも美しかった。

若い住職さんは、とても丁寧に分かりやすく説明してくださり、
とてもありがたく楽しい時間でした。
(先生が持ってる、ビューっと伸びる棒まで使って説明してくれました)




東明寺にはもうひとつ、「雷さまのへそ伝説」があります。
昔々、ある夏の午後、境内の松の木の根元で昼寝をしていたカミナリさん。
それを見つけた住職は雷が大嫌い。
いつも雷が鳴ると、へそを取られまいと布団を被りぶるぶると震えていました。
ぐっすりと寝込むカミナリさんを見て、「今日はひとつ、カミナリのへそを取ってやろう」と
出べそを引っ張りました。驚いたカミナリさんは、慌てて飛んで行き、
住職の手にはカミナリさんの出べそがしっかりと握られていましたとさ。

楽しそうに話した若い住職が、ニコニコと木箱を持ってきました。
「こんな寺宝は珍しいですよ。」と見せてくれた箱の中には、なんだか乾燥した黒い塊が。
「干し椎茸だなんて思っちゃいけませんよ」と住職。
「はい、干し椎茸だとは思わない様にします」と僕。

この伝説のおかげで、東明寺は雷による被害が一度も無いんだそうです。



長くなってしまったので、この辺にします。
本当に楽しい時間で、なかなか訪れる事の出来る場所じゃないので、
予約して、ひやひやと上って来て本当に良かった。







地図(これまでのルート)
※PC以外では正しく表示されないみたいです。



奈良旅記 4 (松尾寺へ)

2012-05-24 | 奈良旅記


このペースで書いてて、いつ終わるのか分からない奈良旅記ですが、
まだまだ続けさせて頂きますよ。

法起寺を出て北へ。
矢田丘陵の南、松尾山の中腹にあります松尾寺を目指します。

ここへの道は、車でも安心の道幅ですが、かなりの急勾配になりますので、
運転に慣れていない人は少し怖いかもしれません。
僕が借りた旧型デミオさんもゼェゼェ言ってました。





松尾寺には北と南に門がありまして、法隆寺から続くハイキングコースを
徒歩で訪れる場合は南惣門から。
車の場合は、駐車場のある北惣門から入る事になります。

北惣門を入ると、いきなりの百八段の石段です。
この位でヒィヒィ言ってたら奈良の旅は出来ない事は思い知っておりますので、
呼吸を整えて無心で上ります。
途中、1300年前からご本尊厄除観音様にお供えするお水の湧く
「閼伽井屋(あかいや)」で身を清めます。



松尾寺は、養老2年(718)、天武天皇の皇子舎人親王が、勅命による日本書紀編纂の折、
42歳の厄年であったため、日本書紀の無事完成と厄除けの願をかけて建立された
日本最古の厄除霊場なのだそうです。

たしか、他にも「日本最古の厄除霊場」って言ってた所があった気もしますが、
その辺は、ふわっとさせておくのがよろしいかと思います。

三万坪あるらしい広い境内は、山の傾斜を生かし沢山の建物や並びます。




本堂にお参りし、大岩周辺の沢山の石仏を見ながら歩いていると、
完全に「山登り」な道になり、鼻をピーピー鳴らしながら上へ上へ。

辿り着いたのは松尾山神社(奈良時代)。
あまり天気は良くなかったのですが、日の光を遮る深い木々の中を歩き
鳥居の向こうに開ける景色は感動的でした。



朱色の美しい三重塔(承和2年(835)創建(寺伝))を
上から見ながら、境内に戻り、七福神堂へ。

松尾寺にはご本尊の千手千眼観世音菩薩や、日本最大の役行者像と前鬼・後鬼、
千手観音像トルソー(秘仏/奈良時代8世紀)等、
多彩な仏像がいらっしゃいますが、開帳時期がそれぞれ別であったりで、
なかなか拝むのは難しそうです。。





またまた突然雨が降ってきたので、本堂の縁側(なんて言うのあそこ?)に座り、
美しい境内をしばらく眺めていました。
今回の旅、本当に「ザ・山の天気」を堪能しました。

中心の広いお庭には、無数の植木鉢が並び、
若いお坊さん達が一生懸命世話をしていました。

雨宿り中、人懐っこい若いお坊さんが話しかけてきてくれて、
いろいろ難しくない世間話。
先輩の呼ぶ声に慌てて走って行きました。




暫くして、
雨も上がったので、次のお寺を目指します。




地図(これまでのルート)
※PC以外では正しく表示されないみたいです。




奈良旅記 3 (法輪寺&法起寺へ)

2012-05-21 | 奈良旅記


法隆寺&中宮寺を北に車で数分。
法隆寺の五重塔と共に斑鳩三名塔と言われる塔の美しい法輪寺へ。
のどかな田園風景の中に、美しい三重塔が見えてきます。



推古30年(622)に、山背大兄王が父の聖徳太子の病気平癒祈願ために
建立したと言われています。
江戸時代初期に荒廃して三重塔だけを残すのみとなりましたが、
元文年間に寄進が進み、なんとか今の寺観まで取り戻せたそうですが、
昭和十九年、落雷で三重塔が焼上、創建当時の建物は全て失われてしまいました。

小さな山門を入ると、緑で覆われた中、左手に三重塔、右手に金堂、
正面に講堂がギュっとある感じの小さな境内です。



講堂内には、飛鳥時代からの仏像がずらりと並んでいて壮観です。

薬師如来坐像 - 飛鳥時代の作。
虚空蔵菩薩立像 - 飛鳥時代末期の作。
十一面観音菩薩立像 - 像高3.5メートルを超える巨像。平安時代の作。
弥勒菩薩立像(重要文化財指定名称は「聖観音立像」)
地蔵菩薩立像
吉祥天立像
米俵乗毘沙門天立像
楊柳観音立像
聖徳太子二歳像
龍鬢褥(りゅうびんのじょく) - 推古天皇使用の敷物と伝わる。
塔心礎納置銅壺
多宝塔文磬
鴟尾(しび)残欠-飛鳥時代中期の代表的な鴟尾。

等、多くの寺宝と共に並んでいます。
やはり大きな十一面観音さんの迫力にやられます。
顎をギュッと引いた様なお姿が面白いです。
二体の飛鳥仏も美しい。
米俵に乗った毘沙門天さんも珍しいですね。




その他、妙見堂に妙見菩薩立像(秘仏のため非公開)
三重塔内に釈迦如来坐像、四天王像(非公開)がいらっしゃるそうです。

小さなお寺ですが、講堂の見応えがあり、結構長居しました。
拝観者は、終始僕一人でありました。


さて、車に戻り東へ数分。
こちらも畑に囲まれた中に聳える三重塔が美しい法起寺へ。
駐車場も無く、本当に小さな門の前にお願いして停めさせて頂きました。
狭い道なので、畑に落ちないように気をつけながら端っこに。



推古十四年(606)に聖徳太子が法華経を講説されたという岡本宮を寺に改めたものと伝えられ、
法隆寺、四天王寺、中宮寺などと共に、太子御建立七ヵ寺の一つにかぞえられている。

法起寺の三重塔は日本最古のもので、国宝であります。世界文化遺産であります。
法隆寺の五重塔の初層、三層、五層を模して三重塔にしたのだそうです。
ドシっと安定感のある立派な塔です。

こちらも法輪寺同様、江戸時代には三重塔を残すのみにまで衰退したそうです。
こんな田園風景の中に、ポツンポツンと三重塔だけが二つ立っているなんて、
それは美しかったろうなぁ。。なんて想いながら見上げます。

こちらの仏様は、法輪寺の十一面さんと同じ像高3.5メートルの
十一面観音菩薩立像(重文)で十世紀後半ごろの作と言われています。
現在は収蔵庫でガラス越しに拝観出来ます。
十一面観音のお手本の様な、立派なお姿。



世界文化遺産!国宝の三重塔!重要文化財の十一面さん!
なのにこの法起寺さん、なんだか寂れてます。。嫌いじゃないけど。
境内に廃墟っぽい一角があったり、南大門のポツンと感とか、独特の空気。




車に戻り、美しい田園風景を眺めながら一服。
法隆寺からの参詣道もあり、厄除け信仰で盛り上がっていたという松尾寺を目指します。




地図(今回のルート)
※PC以外では正しく表示されないみたいです。



奈良旅記 2 (中宮寺へ)

2012-05-18 | 奈良旅記


さて、法隆寺の修学旅行の一団から逃れる為、中宮寺に向かいます。
向かうと言っても、法隆寺の夢殿からちょっと出れば、ひっそりとした受付があります。






ここで拝観するのは本堂だけという地味さではありますが、
その地味さが、かえって菩薩半跏像の存在を際立たせていますね。
本堂の階段を上ると、正面に見えてくるお姿にワクワクします。




法隆寺は今頃賑やかな事になっていましょうが、ここには誰も居ません。
本堂内の隅に座る係りのおばちゃんにご挨拶。
例のスピーカーから流される解説を丁重にお断りし、ご本尊の前に。

随分、座ってましたが、境内に入ってきたおばさまグループの声で
現世に戻り、ご本尊様にお別れのご挨拶。

法隆寺の長い敷地を戻り、駐車場に向かいます。

法隆寺に車で行く時は、正面の参道に並ぶ土産物屋さんに停めさせてもらうと便利。
僕は門から近い松本屋さんに停めました。
呼び込みのお姉さんが「無料ですけど、帰りに何かひとつでもいいから買ってって~」と言ってました。
僕は帰りに、飲み物とマントくんのピンバッジを買いました。

お姉さんと
「お独りで来たの~寂しいなぁ」
「寂しくないわい!」
「気楽で良いか、ハハハ」
なんて話をしていたら、突然雷が鳴り雨が降ってきたので車に避難。

この地域に来たら、行かないわけにはいかない法輪寺&法起寺に向かって出発!
法隆寺の五重塔とトリオで斑鳩三名塔ですからね。




中宮寺

地図




奈良旅記 1 (法隆寺へ)

2012-05-16 | 奈良旅記



5月7日、皆さんのゴールデンウィークが終わった翌日、
月曜日の早朝、何も考えず6:00発の新幹線を選んだばっかりに、
近所の西武新宿線では始発でも間に合わない事が発覚、
自転車を職場に置いて三鷹駅へ。
朝4時の話です。

8時過ぎには京都駅に到着し、9時過ぎには新大宮に到着。
9時半にはレンタカーに乗っていました。

無茶しましたが、これで初日からフルに動けます。

初日は斑鳩・大和郡山周辺コース。



まずはメジャー寺、法隆寺へ。
こういう規模のお寺はあまり好きではないのですが、
見たことの無かった夢殿の救世観音さんが開いているという事で。

金箔が結構残っていて左右対称の美しいお姿なのですが、
少しゾクッとする怖さがありました。

1000年もの間、白布でグルグル巻きの秘仏で、
フェノロサさんによって封印を解かれた救世観音さん。
聖徳太子の祟りを鎮める為に大急ぎで作られたという話を聞きますが、
光背が頭に打ち付けられていたり、いろいろ謎多き仏像であります。


救世観音と百済観音。ゾクッとコンビ。


法隆寺は、たくさんの貴重な仏像がありますが、
ガラスケースに並べられた仏様たちが、僕はどうしても好きになれません。
仏様たちは素晴らしいのですよ。「見せ方」が好きになれないのです。
美術品としての価値もありますし、
国宝ともなれば、保存や管理の事を考えれば仕方ないのも分かっていますが。。。

なんて事を考えながら、一通り拝観し、
御朱印を頂いたところで修学旅行の一団がやってきましたので、
夢殿の脇を通って、誰も居ない静かな中宮寺へ避難。

アルカイックスマイルさんに会いに。


つづく



旅疲れ

2012-05-13 | 奈良旅記



旅から戻った途端、バタバタと忙しく、
全身筋肉痛もなかなか治まりません。。。

夢から覚めた後に見る、現実の厳しさったら
一体全体何倍増しよ!の毎日です。


とりあえず、今回の奈良旅のメモ。


1日目
額安寺⇒法隆寺⇒法輪寺⇒法起寺⇒松尾寺⇒東明寺

2日目
浄瑠璃寺⇒岩船寺⇒海住山寺⇒般若寺⇒円成寺⇒新薬師寺⇒白豪寺⇒不退寺

3日目
金峯山寺⇒吉水神社⇒東南院⇒大日寺⇒壷阪寺⇒橘寺⇒岡寺⇒飛鳥寺



ゆっくりしつこく記していこうと思います。




今日もジミジフ

2012-05-01 | どうでもいいこと






「なんでお前が作ると何でも寂しいんだ?」
と友人に言われ
「そういえばそうだな」
と自分発見のジミジフ・シリーズ。
なんで寂しいんだろうか。
そんなに寂しく生きてるつもりはないのだけども。
たしかに、陽気なものにはあまり惹かれないけど。
携帯等で、ただのジミ写真になってしまってる方、
ごめんなさい。