『笛物語』

音楽、フルート、奏法の気付き
    そして
  日々の出来事など

フルート奏者・白川真理

茸(くさびら)、小人、油虫

2020-09-10 22:42:30 | 気付き
三題噺のようですが、奏法に関しての話題です。

武術研究者・甲野善紀先生とのご縁が出来たのが2003年春で、それ以来私の奏法は激変につぐ激変で、もう17年も経ったというのに、全く落ち着くことなく現在に至っています。

なので、生徒さんや講座参加者の方に説明する時には、ついつい、2003年以降の話ばかりとなってしまうことに、先週気付きました。

実は先生に出会う以前に、その下地があり実践していたことがあり、それがとても重要な要素であり、現在の奏法に至るための前提条件であったことに、ようやく・・

2000年頃だったか、いずれにしても2003年以前の頃のことです。

野村萬斎が大好きになった。(・・実は今でも・・)

これほど誰かのファンになる、ということはこれ以外には一度もなく、実物見たさに、能楽堂に通う様に。

母は仙骨の癌が日々酷くなって既に寝たきりになっていましたが、痛みの少ない時もあり、そんな時には私に着物の着方や手入れの仕方などを教えてくれていたので、着物初心者にも関わらず、着物で能楽堂、という暴挙。

狂言のことはよく知らなかったけれど、その動きや声の響きに魅了され、ますます大ファンに。

そんな折、夏休みに子供向けの狂言ワークショップの御知らせ。

幸い、息子は小学校低学年で、まだまだ私の言いなりになる年頃。

すぐに申し込みました。
運よく、くじ引きに当たって、息子は直接ご指導を受けることができました。

「中々良いねえ」と背中をポンポンと叩かれたりして、「キャ~~!」と羨ましかったのを覚えている。

完全に息子はダシだった。

その時の演目が「茸(くさびら)」

雨が降り続いて、庭に茸が沢山生えて困った男が山伏に茸退治の祈祷を頼む。

山伏は「ボロロン、ボロロン~」と如何にも怪しげな祈祷をするも、茸はむしろ、どんどんと数を増やし、遂には庭中を駆け回る・・

というお話。

この茸の所作を子供たちに教えていたのでした。
もちろん、他の所作も色々とやったのだけれど、一番よく覚えているのが、この茸。

子供たちは喜々としてやっていましたが、とても大変そう。

でも、すぐにピンときて、帰宅後、すぐに私もやってみました。

そして、その恰好でフルートを吹くと・・・

着物、狂言の「茸」が私のフルート奏法が最も変化した原点だった。

だからこそ、初めて甲野先生を着物の雑誌で見た時に、ドキっとしたのではないか、と思う。

そして2003年2月、初めて甲野先生の講習会に。
その日はメモ帳が真っ黒になった。
帰りの電車の中でも、ずっと反芻して、興奮状態だったのをよく覚えている。
摩訶不思議なミラクルワールドの始まりである。

ということで、その後の甲野先生の印象があまりに強烈で、すっかりそれ以前が吹っ飛んでいたのですが、実は、それが重要だったか、と最近のレッスンの中で自覚。

それは、いわば足腰がちゃんと活かされているか否かということ。
武術でも抜刀術のフキョというのがあるけれど、それはさらにハードルが高い。
もちろん、効果もさらに増すのですが。

銀座山野楽器での講習会の時にはパフォーマンスで、フキョでシランクスを吹くというのをやったりもしたけれど、万人向けではない。

でも、この茸なら、比較的、誰でも取り組めるしわかりやすい。

数年前の音楽家講座で甲野先生が仰ったのは「小人」

脚に小人が棲んでいる人も居れば、小人も棲めない酷い環境の脚もある、とのこと。

打ち上げの時にうかがってみた。

「先生、私の脚に、小人は棲んでいますか?」

先生はしばし私の脚を眺めて沈黙された後、おもむろに仰った。

「・・・白川さんは・・とても小さい小人が沢山いますね。油虫みたいにびっちりと・・」


・・・ちょっと気持ち悪いが、誉め言葉だと思っている。

要は、茸をやってみると、小人が脚に住み着くよ、ということです。

茸やフキョの効用は、これだけでなく、肩が落ちる、ということにもようやく最近気付きました。
つまり横隔膜も下がる。

鍛える、というのではなく、無理のない面白がれる範囲で茸をやって、その後夫々の楽器を演奏してみるだけでも、別世界が広がるだろうと思う。

先日、ピアニストに試していただいたのですが、びっくりする程の変化があり驚きました。

膝裏がのびた、いわば小人も棲めない環境の脚で腰かけるのか、小人が蠢く脚で腰かけるのかで大違い。

フルートを腰かけて演奏する場合も同様。






頭皮、瞼、鼻の下

2020-09-08 21:07:20 | 気付き
いつも、音楽家講座が終わってしばらくたってから変化が起こる。

それは甲野先生の御話しや技が参考になってのこともあるし、時には先生から直にお教えいただいてのこともある。

でもそれらは極稀で、最も多いのは、何かしら漠然としているままなのだけれど、何かが変わる、という言わば意識されない部分で勝手に変化しているような感じ。

以前の日記にも書いたけれど、事前にアンブシュアを作らないようにして笛に触れる、ということでかなり大きな変化があり、3時間半ぶっちぎりで吹いても、何処も痛くならない、という状況となった。

音、響きの変化はもちろんだ。

そのことをご報告した折、

「そうですね。口周辺は、とても首回りに影響しますからね。」と仰ったのだった。

そうでしょ、そうでしょう?

とその時は、思っただけだった。

そして数日後。

一種のスイッチに気付いた。

それは「鼻の下」

あくびをする折にじっくり観察してみるとすぐにわかると思うが、とってもよく動いているのが鼻の下。

そしてその結果、顎が緩む。

フルート演奏において、顎の柔軟性の必要を説いていたのは、かのマルセル・モイーズで、そのレッスンを受けたことのある師匠が、よく仰っていた。

私もアゴは比較的柔らかくよく動く方だったので、その点で苦労したことはない・・と思っていたけれど、それがそもそも勘違い。

間違っていることに気付いたのでした。

顎だけ落とすというのは、もうその時点で既に余計な力みと緊張を伴ってしまっていた。

その上、その状態で、あれこれ操作するのだから、より高まる疲労。

そうではなく、鼻の下をほんの少し下げることにより、全く力みを感じることなく、結果としてアゴ周辺がゆるみ落ちる。

こんな簡単なことにどうして今まで気づかなかったのか・・・?

とハタと気付いたのは、この鼻の下スイッチの効き目は、背骨が緩んでいればこそ、だからということ。

所謂世間一般に奨励されている「正しい姿勢・良い姿勢」という背骨やまっすぐにのばされた膝裏では、なんのご利益もない。

「羊座り」だからこそのスイッチ。

さて。

最初に気付いたのは鼻の下だけれど、最近は、それがさらに瞼に。

眼を見開いて欠伸はできない。

鼻の下を伸ばす前に半眼に。

そしてその数日後は・・

頭のてっぺんの皮を緩めて瞼を半眼に、そして鼻の下、とドミノ倒しの様に変化させる。

結果、最初からこういう生き物だったの、というくらいに顎が落ちるのでした。

頭のてっぺんは、この夏ずっとヘアバンドみたいにしたスカーフに保冷剤をくるんで乗せて歩いていたせいか、かつてないくらいに意識された箇所。

エジプトの貴婦人達を描いた壁画では盛り塩みたいな形状のものを全員が頭頂部に載せているものがありましたが、あれは、香油を固めたものだそう。

体温で徐々に溶け出し、良い香りが漂い出す、という仕掛け。

これもまた、良いイメージです。

本日の手芸  スワトー&シルクのマスク

2020-09-07 18:20:06 | 手作り
わざわざ作らなくっても、もう良いのがいっぱい売ってるし・・・

と思っていたので、「手作りマスク」には、あまり興味関心が向きませんでした。

そもそも、このとてつもない暑さだった夏、マスクのことをついつい敵視している自分も居て、作ってやろう、という気にもなれなかった。

とはいえ、マスクは最早、必需品だし、大切なパートナー。

暑さが徐々に和らいできたこともあり、ずっと考えていた「お洒落で付け心地も良いマスク」に本日とりかかりました。

時間はBSで空海さんの番組をやっていた間くらいだから90分~120分?

母の持ち物だった箱の中からは、スワトーのハンカチも数枚ありました。

多分、勿体ながって使わないものも。

私もスワトーは冠婚葬祭時のハンカチとして数枚持っているけれど、普段はもう殆どタオルハンカチ派になっているので、ずっと寝かせてある。

独身の時はいわゆる「見せハンカチ」として活躍した・・と思う・・けれど、最早その必要もなく30年余が過ぎているので、本当に持つことがなくなった。

使い込んで縁取りが痛んできたものは、半分に切って、他の布を真ん中に継ぎ足して、着物の半襟にしたりして、使い込んでいたけれど、最近は着物ブームも遠ざかってしまい、もうずっと着ていない。

スワトーもピンキリで、ちょっと悲しいくらいのあっさりしたものから、いつ使うの?というくらい隙間なくびっちりと刺繍された豪華なものもあり、その中から、マスクにするのに適当なくらいの質素かつチープじゃないハンカチを選ぶのが結構時間がかかった。

程よい、というのが一番難しい・・

裏には、襦袢用の絹を。

反物で持っているのは、襦袢のためではなく褌用のため。

話は逸れるが、もう何年も下着は自作の絹の褌で、すこぶる快適だ。

紐はオーガニックコットンの丸紐を使っている。

・・ショーツをはかなくなってもう何年になるんだろう・・(遠い目)

ともあれ、その絹を裏に。

この夏、気に入って使っていたスタジオクリップの麻のマスクをダイレクトメールの固めの紙に置いて、縫い代込みの型紙を作る。

このマスクの裏側に切れ目を入れて、小さな保冷剤を仕込んで使うのが一番涼しかった。
(写真の一番上のものです。)


ハンカチも、絹地も耳を利用して、両端にくるように配置してカット。

あとは、チクチクと手縫いで。

紐は、他のマスクからとったものを付けて出来上がり。

ハンカチ1枚から二つ作ることができました。

同じ型紙からですが、片方は縫い代を少な目にして、やや大きめに。

寒い日は、こちらが良いかも。

思っていた以上に、絹の裏地の付け心地は良いし、スワトー刺繍は程よく(ここ大事)豪華だし、と大満足の仕上がりです!






発掘品

2020-09-04 22:37:16 | 日常
発掘というのも大げさですが、ステイホーム期間中に、家の片付けをやっていたので、様々なしまい込まれたままだった品々が発掘されました。

もちろん、そのままゴミ箱に、というのも沢山あったけれど、中には「お!?」という嬉しい品々も。

しまい込みすぎて、忘れていたものが再発見。

一番嬉しかったのは、画家の従姉・和子ちゃんの作品が出てきたこと。

母方の最年長の従姉で、結婚してからは田島和子と名乗っている。

この版画は、確か魔女の物語の本の挿絵。

どんなお話だったかはすっかり忘れてしまいましたが、ちょっと考えさせられる本だったことは覚えている。・・今度の休みには本箱、捜してみよう・・

この版画は個展の折に、母が求めたものだった。

母の持ち物の箱は、亡くなってから相当(20年!)経っているのに、もうずっと手をつけられずにしまい込んでいたのですが、今回、その荷物も片づけて、発掘。

嬉しくて、これまたしまい込まれていたどこかのアジアのお土産の絵が入っていた額に入れて、飾りました。

少し上下に隙間があるけれど、木枠とガラスの額に入れると作品がより引き立ちました。

この場所は今までは「ねこのきもち」の付録の岩合さんの猫カレンダーがあったところ。

それはそれで、和めて、可愛かったのですが、カレンダーをキッチンに移して、この額にしたところ、一気に部屋の雰囲気が上等なものになり驚きました。

本物の効果、とでもいうのでしょうか。

そういえば、好きな海外ドラマ「ポアロ」や「ホームズ&ワトソン」とかでは、ファッションやインテリアを見るのも楽しみなのですが、どんな極悪人の犯人の部屋も大概は奇麗に片付いていてセンスの良いインテリアだ。

もちろん、主人公たちのお部屋も素敵!

そして、壁にはいくつもの絵画や写真の額、パネルなどが飾られている。

ず~~っと息子が小学校の時に制作したコラージュを飾っていて、これはこれで本物なのですが、それがいつの間にか普段の「景色」になっていました。

来客の中には、この作品を「本物」と間違える方も居て、お世辞半分にしても楽しんでいたのですが、まあ、やはり子供の作品である。

ちょっと他のものを飾ってみようかな、と思案し息子の作品は彼の部屋に移動。

小鳥が木にとまっている図柄のエジプトのアンティークのパピルスとヌビア人を描いた立体的な版画をネットでみつけて、それをバランスよく配置しました。

パピルスは現地のパピルス屋では、値段の割に、今一の手技で、全く購買意欲が湧かなかったのですが、ネットで、より繊細な好みの作品があったので、帰国後購入していたものでした。

古い楽器が好きなせいか、工芸品も昔のものの方が好き。

23年目にしての壁の模様替えです。


もう一つの発掘は、オレンジがかったピンクの大きな麻布。

大昔にキャトルセゾンのバーゲンで買ったもので、特に使うあてもなく、お買い得!と思い手にしたもの。

とはいえ、ストールとして使うにはやや大きすぎるし、ベッドカバーには色が強すぎるしで、結局そのまましまい込んで、忘れていたものでした。

これを思い切ってテーブルクロスしました。
寝室には強すぎるけれど、食卓なら元気になって良い感じです。

汚れることもあるテーブルクロスは、中々、上等なものを使うことがためらわれてしまって、使わないままのレースのクロスなどもまだいくつかある。

でも、この先、元気でいられる時間は限られているし、何よりお出かけが激減して家で過す時間がとても増えたので、もうもったいながらずに、ジャンジャン使おう!とテーブルに。

フィレレースを真ん中に乗せるとさらに可愛くなりました。

爪楊枝入れはヘレンドの薔薇模様のシュガーボールに。
ついでにウサギも配置。

お花は7月末にいただいた豪華花束の葉っぱがまだ元気で活躍。

そこにカーネーションを足して、もう2週間目になります。
水換えは一日一度になりましたが、随分ともってくれています。

普段はあまり気付くこともなく、ほぼ何も言わない夫が、

「元々、こういう感じの色が好きなんだよね。」

と帰宅後、珍しく喜んだ。

・・そっか、濃いめのピンクが好きだったんだ・・

と結婚32年目にして初めて知った。


でも、素敵なクロスをかけると、食事中もお茶の時も

「ホラ!気を付けてね!こぼさないでね!」

とついつい夫の所作を見張っては鬼の形相で言ってしまう・・という状況に・・

まだまだ修行が足りないようです。






muse(ミューズ)細胞

2020-09-01 15:36:28 | 日常
毎月、最後の週末、高松高校同期のリーダー、健さんの呼びかけで、リモート飲み会が開催されています。

中々都合がつかなかったのですが、先日、初めて参加。

この日は、いつものものとはちょっと異なって、ちょっとしたレクチャー。

muse細胞の研究をしているとある大学教授の同期のお話をうかがうことができました。

数名で、片手にグラスこそあるものの、こうした専門家の話を聞いていると、高校時代の授業中に逆戻りしたみたい。

こんなに面白い授業だったら、もっとちゃんと勉強したかも・・?

Wikipediaでみても、なんのことやら、という感じだったのが、このレクチャーでとてもよくわかった。

可能性の大きな研究だなあ、と感じいりました。

あと、研究者がどれほど大変な暮らしをしているかも。

既に様々な応用も開始されているのですが、

コロナ感染症の重症化を防ぐための研究が始まっているとのこと。

日本と世界のためにがんばっているって凄い。

元々、こうした研究への助成が少ないことは有名な日本ですが、なんとか成果を挙げて、実用にまでこぎつけて欲しいものです。

英語での、なんたらかんたらの長い名称を略してのmuseという名称なのだそうですが、音楽関係者としては、すぐに「音楽・芸術の女神!?」と思ってしまった。

muse・・その起源は古代エジプト語のmusaとも言われていて、意味は「水」。

名前もいいね!