「4回転論争」という記事で、私はプルシェンコについて、
やっぱり4回転以外の要素で精彩を欠いていたのは事実ですから。
と書いてしまいましたが、女子について言ったことと
ものすごく矛盾していたことに気付きました
高難易度のジャンプに挑んだ選手が、
技の出来栄えで勝負するのがそもそも間違えでした。
跳ぶだけでものすごいスタミナを消費するジャンプを跳んでるんですから、
ライサチェックのような難易度を下げた選手の演技と比較して
「精彩を欠いた」なんて失礼きわまる発言でしたね。
大変失礼いたしました
プルシェンコはトリノであれだけ異次元な滑りだったので、
今回4回転に挑んだ回数が1回きりだったし、
その割には他の要素で圧倒的な上手さが見られなかったので
精彩を欠いたと書いてしまいましたが、
1回だけ跳んだ4回転は、他の選手が跳んでいない
3回転とのコンビネーションジャンプで、
その他のジャンプ構成も、ライサチェックとほぼ変わらないものでした。
(まあ後半跳ぶジャンプの種類はライサチェックの方が難易度高かったけど
疲れない構成になってるんだから当然です。
ついでに言えば、トリノのときよりも色んな要素をこなしてました。)
元々ソルトレークのときからヤグディンファンで、
プルシェンコのカクカクした動きがあまり好きではなかったので
つい個人的感情が入ってしまいましたが、
やはり今回一番すごいことをしていたのはプルシェンコでした。
目立ったミスもなくあれだけのことをしたのに、
銀メダルという結果はやっぱり彼にふさわしくないのではないかと思います。
昨日のエキシビションで、プルシェンコが珍しく4回転を跳ばなかったので
思わずライサチェックへのあてつけだったのか?と思いましたが、
練習の時からプルシェンコは4回転を入れていたそうで、
そしてあの冒頭のジャンプの助走を見る限り、4回転の挑戦だったのは確か。
それが、失敗してしまったということだったんですね。
あのプルシェンコをもってしても、4回転は常に簡単に跳べるものではない。
それを、試合では100%の確率で跳んで見せたプルシェンコは、
やっぱり他の誰もかなわないスケーターだと思います。
(英語ですが、こちらのサイトを見ると面白いです。
各選手の名前をクリックすると、今まで4回転に挑戦した回数と、
成功率が記載されています。これを見るとやっぱりプルシェンコは天才です)
「オリンピックで勝つ」ということを目標とするのは
アスリートとして当然のことなので、
今回の問題は、選手ではなくやはり現在のジャッジシステムにあると思います。
フィギュアは芸術性が問われる種目ですが、
スポーツとしてオリンピックの場で勝敗を争う以上、
やはり難しいジャンプが跳んだ者が文句なく上という評価で間違いないと思います。
それ以外の芸術性の面は、アイスショーなどで
各ファンが自分の好みのスケーターに対して論じればいい話。
他の芸術性を問うスポーツ(体操やシンクロ)だって、
難しい技を決めたものが勝ち(と思いますが、違っていたらすみません)。
スポーツとはやはりそういうものだと思うのです。
・・・と、こちらのエルヴィス・ストイコ氏の記事を読んで思いました。
一部抜粋してご紹介すると、
「There are junior skaters who can skate that same program.」
(同じプログラムができる選手はジュニアにだっているよ。)
「In what other sports do you have to hold back in order to win?」
(勝つために手を抜く(訳注:難しい技を回避するという意味で)必要がある
スポーツが他にあるか?)
「And the figure skating community wants to control who wins and who loses.」
(フィギュアスケート・コミュニティ(訳注:国際スケート連盟のことでしょうね)は
誰が勝つか、誰が負けるかをコントロールしたがっている。)
「More feathers, head-flinging and so-called step sequences done at walking speed – that’s what the system wants.」
(羽のようなふわふわした動き、頭を激しく動かすこと、
歩くようなスピードでこなす「ステップ・シークエンス」と呼ばれるもの、
それが今のシステムにより求められているものだ。)
確かにフィギュアはジャンプだけではありません。
そして、ライサチェックの演技を見て、プルシェンコより美しいと感じ、
キムヨナの演技を見て、浅田真央の演技より美しいと感じたのは事実です。
でも完成度=美しさだけが求められるような競技を
スポーツと呼んでいいのでしょうか?
他のスポーツのように、自身が持つ最高難度の技に挑んだ者ではなく、
簡単な技を美しく決めることが出来た者に対して、
他のスポーツの選手と同じ色のメダルを与えてよいのでしょうか?
私はフィギュアスケートが好きですが、
オリンピックというスポーツの祭典においては、
簡単な技を美しく決めた人よりも、
難しい技に挑戦していく人の姿の方が「アスリート」らしいと思いました。
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