時、うつろいやすく

日常のたわいもない話…
だったのが、最近は写真一色になりつつある。

時間を止める

2015-11-22 01:19:52 | 創作

時間を止めれる人がいる。

彼は度々時間を止めては自分だけの時間を過ごす。

その間、時間は彼だけに流れる。

彼と彼に関するもの以外には時間の作用はない。

彼が時間を止めると、一点で、すべての事象が静止してしまう。

その隔絶した時間の中で、彼は人より少し多めに仕事をこなす。

人より少し多めに趣味をたしなむ。

人より少し多めに休養をとる。

人より少し多めに思案にふける。

そして、なにものにも左右されない、自分だけの時間に酔いしれる。

だが、代償はある。

時間の作用は常に一律である。

余分に浪費した分の時間のツケは回ってくる。

彼は30歳にして、老いさらばえた古老の姿をしている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3Dプリンター

2014-02-05 22:14:03 | 創作

深夜の設計事務所。

明日提出の図面を打ち出す。

「あと3枚というときに紙切れかよ。コンビニまで紙買に行きとうないし・・・」

!!!

「よっしゃ、3Dプリンターで紙ごと印刷したる!」

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『引き潮の時』

2012-03-10 14:33:25 | 創作

ごくまれにこの星では時間の流れに潮の満ち引きのような現象が起きる。
大半は潮が満ちるように時間の流れはよどみなく未来へ向けて進んでいく。
それが何万年かに一度、突然、潮が止まるように時間が止まってしまう。
ありとあらゆるすべての事象が静止してしまう。
とはいっても、これは誰にも感知することはできない。
思考も止まってしまうからだ。
測定も不可能であるため、これは「理論上の静止」と呼ばれている。
時間が静止している以上、静止の期間を問う意味はない。
その間、なにも起こりえないのだからなにも変化はない。
物理的になんら不都合を生みだす要素はない。
だが、問題はその後だ。
静止の後に、時間の流れが逆転する。
潮が引いて行くように、一斉に時間が過去へ向けて流れを変えていく。
しばらくは誰もこの変化に気づくものはいない。
人も動物も老衰する者がいなくなり、ようやく人々はそのことに気づく。
「おーーーい、時間が戻り始めたぞ」
やがて町中に歓喜の声が連鎖する。
八十になるおじいさんは、涙ながらに喜んだ。
「なんということじゃ、かけがえのない人生をまた享受できる」
五十になるおじさんも満面の笑みを浮かべた。
「おぉー、若かりし青春時代をまた謳歌できる」
小学一年生になる少年は愕然とした。
「ゲッ、7年で精子かよ」

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『健忘波』

2011-12-20 00:11:58 | 創作

某大国の秘密機関が、健忘波(けんぼうは)なる兵器を開発した。

その正体は超高周波の電磁波兵器であった。

これを照射されると人間は健忘症に陥ってしまう。

医学的にいうところの「全生活史健忘」のことで、自己に関する記憶のみが消えてしまう。

単純にいうと「記憶喪失」に陥ってしまう、というわけだ。

この健忘波兵器が、かねてから禍根のあったアジアのKC国に向けて照射された。

C国の全国民は2日で健忘症に陥った。

劇的な破壊力であった。

独裁権力を誇示していた将軍様が、警護も付けずに人民と手を取り合い裸踊りを始めた。

ここまではよかった。

これで世界の危険分子がひとつ消えたと、誰しも手を叩いて喜んだ。

しかし、健忘波の破壊力は科学者の予測を遥かに上回っていた。

3日目で隣国のK国が健忘症に陥った。

5日目で隣々国のN国が健忘症に陥った。

10日目でアジアの超大国C国の全土が健忘症に陥った。

18日目、つまり今日、地球全土が健忘波に覆い尽くされようとしていた。

まもなく、ここにも第一波の健忘波が・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 えっ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

7.『紀元5000年』 食事

2009-12-27 00:41:29 | 創作

今夜はステーキを食べた。
この味はおそらく冷凍肉であろう。
食べ物は別に冷凍物に頼る必要はない。
これは母のこだわりから始まった。
この宇宙船ではスキャナー再生で保存データーのあらゆる食物を再生できる。
材料の肉も魚も野菜も再生できるし、完全に出来上がった料理の再生もできる。
料理のレパートリーは数千種類に及ぶ。
世界的なのシェフのメニューからごく一般的な家庭料理まであらゆる料理を再生できる。
最近は、食事の7割がこの再生メニューに頼っている。
あとの2割が再生食材を材料にしての手作り料理、残り1割が冷凍食材を元にしての手作り料理である。
母は少なからず再生食材に抵抗を抱いている。
鉱物を口にするような無機的な味気なさを感じるのだという。
「生」の宿らないものから作る食物は所詮無機物に過ぎないのだという。
こういうものを食べ続けると人の「生」もだんだんと磨り減っていくのだという。
しかし、この憂慮は8年前の父の再生を境に沈静化してまった。
以来、母は表立って再生食材を批判することはなくなった。
母は父の再生を誰よりも喜ばしく思っているからだ。
今では母のお気に入りの家庭菜園も閑散なものになってしまった。
日課だった菜園いじりも気が向いたときにしかやっていない。
菜園いじりの時間が減った分、父に寄り添う時間が増えたようだ。
食事のすべてが再生食材になる日もそう遠くはないだろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

6.『紀元5000年』 映画

2009-12-10 23:39:59 | 創作

外部との通信手段がないと困るのが映画だ。
新作映画が観られない。
75年前を最後に新作映画は観ていない。
映画マニアにとって最大の苦痛だ。
楽しみにしていたシリーズ映画の続編を観てみたい。
人気が衰えていなければ、その後50本以上は作られているはずだ。
超大作映画『異次元ワールド三部作』の最終章も観られないままになっている。
好きだった監督や役者のその後の作品も観てみたい。
きっとたくさんの名作、傑作、大作、珍品映画が出来ているに違いない。
186年後を思うとたまらく待ちどおしくなる。
ところでこの宇宙船には約600万本の映画データーが保管されている。
お望みとあらば〇〇惑星3000年の映画史を堪能することができる。
そこにはあらゆる国の名作、傑作、大作、珍品映画がそろっている。
新作映画が恋しくなったときはかならず古典映画を観ることにしている。
古きものから新しさを見出すのも映画の美点である。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

5.『紀元5000年』 通信

2009-12-04 00:10:14 | 創作

宇宙の辺境を航行する準光速船には通信手段がない。
少なくともあと186年間は外界との交信ができない。
現代の科学技術をもってしても、光速を超える航行やワープ航行は実現しきれていない。
一部で理論的に確立されつつあるという噂は聞いたことがあるが、その後どうなったのか。
なにしろ我が惑星との通信が途絶えて75年が経過する。
惑星上でいうと400年の時が経過したことになる。
もしかすると光速を超える通信手段くらいは開発されているのかもしれない。
ある日、音の途絶えた受信機に知人からのメッセージが舞い込んでくる。
「ゲンキニシテイルカ。ワープコウコウカンセイマジカニナッタ。オマエノフネマデアソビニクルゾ」
なんてことを想像したりする。
ときどき無性に惑星が恋しくなる。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

4.『紀元5000年』 釣り

2009-12-02 01:25:46 | 創作

昨日、息子と船釣りに出かけた。
釣果はいまいちだったが波が穏やかでいい釣りだった。

条件設定は以下の通り。
釣場:〇〇惑星〇〇地区〇〇湾沖、水深50mの岩礁帯。
環境:〇〇〇〇年〇〇月、晩秋の大潮、天候晴れ、波1.0mの凪。
時間:AM6:00からPM2:00まで。
仕掛:電動リール+五目釣り仕掛一式。
餌:オキアミ。

仮想現実をあなどるなかれ。
もしやディスプレーゲームなどを連想されてはいまいか。
それはまったくもって別次元の世界である。
紙飛行機と超音速機くらいの開きがある。
単にリアリティーだけの違いではない。
たとえばこの釣り、釣り上げた魚はすべて本物である。
釣り針に掛かった魚は海中で即座にデーター処理され、海面から上がってくるときには
本物の活きのいい魚となっている。
釣り針を外した魚は船の上で水しぶきを上げて勢いよく跳ねまわる。
ヘタなつかみ方をすると怪我をすることもある。
魚が本物なら怪我も本物。
血が出ておもいっきり痛い思いをすることになる。
現実同様ハードであるからこそ、釣り上げたときの嬉しさは一塩である。
しかも、釣り上げた魚は本物だから食べて美味しい。
持ち帰っての楽しみにもなる。
ちなみに、釣りの対象魚のデーターは2万種類ある。
それに大きさとかの個体別の種類が魚種ごとに100から1000タイプ存在している。
一般大衆魚はもちろんのこと、大物高級魚から餌盗りの外道、毒のある危険魚までいる。
リールを巻き上げるときのワクワク感がたまらない。
状況に応じてどんな魚が掛かってくるか分らない。
実にスリリングである。
ただし、釣果も悲しいくらいに現実的である。
ボウズのときもたびたびある。
遊びとはいえ、そうそう甘くはないのである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3.『紀元5000年』 環境

2009-11-28 20:55:00 | 創作

この宇宙船は貨物船を改造して造られている。
そのため広さにはちょいとばかし余裕がある。
住空間だけでも巾7m×長さ38mもある。
六人家族の平均的住宅スペースの約2倍といったところだ。
それ以外にも小型のスポーツジムとシアターがある。
スポーツジムは巾7m×長さ12m、シアターは巾5m×長さ9mある。
操縦室、研究室、資料室、機械室、倉庫まで入れると約1500㎡の広さになる。
船内を一周するだけでもいい運動になる。
本来の恒星間飛行は長期間睡眠に頼っているため船内のスペースはいたって狭苦
しいものとなっている。
そのため乗組員は降船後長期にわたる心身のリハビリが必要とされる。
また、リハビリが終っても約7%の乗組員になんらかのトラウマが残るといわれている。
トラウマの症状は様々だが、トラウマ患者の実に8割が降船後三年以内に自殺してい
るという驚くべき報告がある。
その原因が長期間の飛行そのものによるのか、あるいは長期間の睡眠によるのか、
今のところ確実なことは分っていない。
そんなこともあって、この宇宙船は贅沢な広さとなっている。
極力、長期間睡眠に頼らず、惑星での生活に近いライフスタイルを送れるような
住環境を造っている。
なのにペットがいないのはおかしい、というのが息子の言い分である。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2.『紀元5000年』 窓

2009-11-28 01:10:41 | 創作

昨日、息子が犬を飼いたいといった。
昨日というと誤解を招きやすいがこの船にはちゃんとした日付が存在している。
一日の時間は私たち家族が生まれ育った惑星の運行を基準にしている。
演出とはいえ、律儀にも昼と夜の区別もある。
ランダムな気候変化もあるし、惑星で得られるような四季の変化もある。
部屋を仕切っている壁には擬似窓があり、そこからお望みの風景を眺めることができる。
窓からは時刻と気候と四季に応じた太陽光さながらの温かい陽射しが差し込んでくる。
目覚めにはさわやかな朝日を浴びたいものだ。
金属の箱の中で重苦しく目覚めるのはごめんだ。
話がだいぶそれてしまった。
息子の話はまた今度にしよう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする