金にいとめはつけないといわれても受けたくない仕事はある。
A氏からの依頼物件がそうである。
ここひと月あまり、心のうちで、やりたくない、やりたくない、と拒み続けていた。
「鬱」になるのではないかと思うほどに気が滅入っていた。
昨日、そのA氏から電話があった。
「初釣りにいったらいっぱい釣れた。ヒラマサやるけん取りにこんね」
一瞬、ヤッタ、と思った。
不用意に、
「後から取りにきます」
と、いってしまう。
いった端から後悔する。
ヒラマサもらって、仕事はやりたくないとはいえんだろう。
そこまで厚かましくはない。
結局、A氏にその後なにも連絡をいれないまま、魚は取りにいかなかった。
そして、今日、A氏から二度電話があった。
正確には、携帯への着信が二度あった。
これ以上無視はできない。
仕方なく電話をかけることにした。
有無を言わさず、
「今からそっちにくるから」
という返事。
1時間後、A氏が50センチのヒラマサを持って我が家に来た。
チト小ぶりだが、高くつくぞこのヒラマサは。